結果発表
2016/05/10 14:00

第29回 建築環境デザインコンペティション

われわれの暮らすこの世界には、絶えず時が流れています。一日の単位、一月の単位、一年の単位、あるいはもっとずっと長い単位でも、あらゆる生物も、人類も、地球環境も、建築や都市も、その経時的な移ろいの中にあります。こうした時の流れを可視化し、刻印し、痕跡を蓄積してゆくことで、われわれがそれを知覚可能にするための「時計装置」となるような建築を提案してください。単に時刻を示す時計ではなく、流れゆく時を計る装置としての建築です。

応募数:79点
主催:東京ガス株式会社

最優秀賞

時代の建層
小幡知哉、阿部里歩、モク サイモン、涌井 匠
(大成建設株式会社)
時代の建層
審査コメント
開発から既に40年以上が経ち次の半世紀へのリニューアルが必要と思われる新宿副都心エリアに注目したもので、そこに表される時の経過は、現実にも大いに検討されるべき数多くの示唆を含んだものでした。欲を言えば、現在の地下階を新たなネットワークインフラと考えて、そこから上の超高層の足元部を起伏のあるランドスケープで再構成するアイディアとすれば、より意義が深かったと思います。(審査委員長 古谷誠章)人間の営みに応える環境そのもののあり方をもって建築と呼ぶ建築像を代表しているようで、大変興味深かった。従来一般の建築像からはみ出るものを提示しているように思われ、「環境」という項から建築を見直すこのコンペの趣旨にふさわしい提案に思われた。現実的なプロジェクトとして研究を進める余地が十分にあると思う。(審査委員 青木淳)

優秀賞

集落巡行
加茂佑磨、島口拓也、後藤由佳、井田久遠、小松耕太、山本悠介、芹田正樹、菊池孝平
(株式会社 山下設計)
集落巡行
審査コメント
少子化する地域での学校を軸とした集落再生への道のりを提示していて、人びとの生や世代のサイクルと並行して紡がれる時間に着目した点が際立っていました。(審査委員長 古谷誠章)小学校の子どもが1年の月日を感じながら成長していく様を、麻産業を中心として集落を循環することにより実現することを現地でのヒアリングもふまえて提案しており、説得力のある内容であった。(審査委員 児山靖)
「大地」のものさし
永井仙太郎、赤塚 健、吉岡紘介
(株式会社 日本設計)
「大地」のものさし
審査コメント
冬野案と時間という目に見えないものを、目に見えるようにする、という点で共通している。もう少し大きな観点から捉えるならば、建築を、人間と(時間を広い意味で環境のひとつと考えれば)環境との間にあって、環境を人間に伝えるためのメディアあるいはインターフェイスと捉える建築像の立場とも言えるだろう。モノとしての建築のひとつの基盤になり得る。(審査委員 青木淳)人間の営みの結果生ずる廃棄物の堆積を地層に見立て、塔状の小屋を外から分かる有限な「時」を計るものさしとして表現した。人類に対する警鐘が込められているが、その後の世界にはたして希望はないのか。(審査委員 千鳥義典)
境界の詩集
冬野達也
(株式会社 浦野設計)
境界の詩集
審査コメント
建築単体の外皮に機能を持たせ、それを建物内に誘導すると共に、それが集合した場合には隣接する他者の環境をも調整する可能性を持たせ、日単位、年単位を中心とした時間を感じさせる。(審査委員 奥宮正哉)時を感じないオフィス空間に対して一石を投じた本案は、驚くことに建築家を目指すたったひとりの青年の手によるものでした。近代建築はデザイナーに加えて多くのエンジニアの力が必要と信じる私にとって新鮮な驚きで新しい発見でもありました。(審査委員 野原文男)