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2021/11/11 10:00
ジャパンレザーアワード 2021
工芸・ファッション・雑貨
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学生向け
応募作品数:222点
受賞作品数:10点
特選:7点
主催:一般社団法人日本皮革産業連合会(JLIA)
※ここでは、上位10点をご紹介します
グランプリ、フットウェア部門 ベストプロダクト賞
ローカルシューズ2
益子実佳(宮城興業株式会社)
作品コンセプト
山形牛の皮革を特別に鞣してもらい、ヌメ革を使用しました。山形県の花、紅花染料で何度も染めております。地元を離れた方にこの靴を履いて山形を思い出して欲しい。山形産でここまでできることを知って欲しい。そして私の山形愛があふれた結果、この靴が出来上がりました。
審査コメント
モノのデザインの範疇を越え、ソーシャルデザインの領域をも取り込み、履く人のモラル、教養、生き方自然観などを問う逸品である。技術力とデザイン力の融合があって初めてこうした作者の主張は届く。あの美味しい山形牛が美しく儚い紅色で再生され、日本的な美意識が審査員全員を惹きつけました。三越伊勢丹のプロのバイヤーも◎、自信を持って販売をしてください。国外のスニーカーなんて履いてる場合じゃないな、と感じました。
フットウェア部門 フューチャーデザイン賞
shed sneaker
猪俣 真
作品コンセプト
脱皮するスニーカー。表面に使用した再生レザーがボロボロになって、下にあるオイル革のウイングチップデザインが、染み出したり、浮き上がって見えるように加工してあります。エコが叫ばれる現代において再生レザーもいいが、革も立派な副産物。革を使うこともエコに繋がるというメッセージを込めています。
審査コメント
ポジティブな逆攻めのコンセプトが何より見事、またそれを納得させる再生レザーとその下のオイルレザーの組み合わせ、精緻な仕上がりも評価されました。エコというとやや湿ったイメージになるのが、この提案はカラッとしていて気持ちいい。汚れ感のあるスニーカーソールとのマッチングもメイドインジャパンを感じさせるデザイン力で、海外からも一目置かれると思う。
バッグ部門 ベストプロダクト賞
Laura
松村美咲(有限会社清川商店)
作品コンセプト
「手仕事だからこそ扱える素材」にこだわりデザイン・制作しました。本体にはパーツごとに染色したガラスレザーを、ハンドルには土佐の黒竹を使用しました。どの部分をその向きで使用するかは地元・墨田の竹問屋に目利きをしてもらっています。デザインのアクセントにもなっている真鍮金具は、ハンドルに合わせたオリジナル。熟練した職人たちの手仕事によって生まれた素材を、1点のバッグに仕立てました。
審査コメント
このイメージはどこからきたのだろうか。よくある和のデザインを意図したあざとさがない。かといってハイファッションを模す、などという心も見えない。穏やかで優しいデザインは楚々としつつ、前向きな新しい日本人が浮かび上がる。このセンスに皆脱帽でした。茶色の色味、色のぼかし、金具と黒竹の取り合わせ、フォルム、全て◎。ただ一つ、黒竹の小口を着色した方が、と女性審査員、私はその素朴さがモダンでいいと逆に思いました。
バッグ部門 フューチャーデザイン賞
寄革
牛島 淳
作品コンセプト
一枚革にしろ、ハギにしろ、厳密な色合わせをしようとすると革の選択や歩留まりが悪くなります。
木工では幅ハギという、目の違いや反りなどの欠点を利点に変える手法が確立されています。
今回の作品は、半裁のBランク品から良好な部分を切り出していますが、基尺はA3切革2枚で採れるようにしました。
下部角の張替え、ハンドルの交換も考慮して構成しています。
審査コメント
革製品の問題は均一な革集めという、歩留まりの悪さ。この問題をむしろ利用して、魅力あるバッグに仕立てた企画デザイン力は見事。最近の若者市場ではキズがあったり、色が微妙に違ってもむしろその方が価値が高くなるというのに、まだ市場はそれを許さない。このデザインは社会デザインの側面もあり、物語を知れば消費者は応援団になるに違いない。一枚革の鞄にはない自由で活動的な印象があり、新しい革バッグの構造と言える。
ウェア&グッズ部門 ベストプロダクト賞
十二支 ブローチ
蔡 弘灏(CAI芸術スタジオ株式会社)
作品コンセプト
型を利用して、一枚の革とは想像できないような立体感を表現しました。
また、早く安定した品質で、革立体造形芸術品を量産することも実現できました。
いろんな革の組み合わせによって、より豊かな表現力が得られます。
審査コメント
革は可塑性のある粘土ほどではないにせよ、それに近い自由な特性を持っていて、この作品は皮革材料の可能性を広げてくれる。樹脂でもこうした緻密な造形は可能だが、少し冷たくなる。皮革ならではの温かな印象が残る逸品で、技法をぜひ教えていただきたい、そんな願望が芽生えた。
ウェア&グッズ部門 フューチャーデザイン賞
CLARICE
益井隆之(TROJANHORSE)
作品コンセプト
極薄に漉きをかけたホースハイドを使用したこのレザージャケットの特徴は、「セーターより軽い重量」と「ポーチに収納できる携帯性」です。デザインはクラシックなスタイルですが、小さくたたんでポーチに入れて持ち運ぶことができます。
レザージャケットは格好いいと思うけど、重くて固くて着心地が悪いというイメージで敬遠している方に着ていただきたいジャケットです。
審査コメント
この作品を持った瞬間、カシミヤのセーターとどっちにするか、という問答が脳裏に浮かんだ。ポーチに収納する機能から、通常は某アパレルメーカーのウインドブレイカーと比較するが、それは土俵が違った。衣服は自然から人間の体を守る道具である。レザージャケットはやはり最高峰だろう。エスキモーもカシミヤは勘弁と言うだろう。そんな性能をウインドブレイカーの如く、軽くミニマルにデザイン。レザージャケットでこのようなモダニズムは見たことがない。
フリー部門 ベストプロダクト賞
バランスボール
高張創太(SOTA LEATHER PRODUCTS)
作品コンセプト
コロナ禍、家の中で気軽に行える運動が注目されています。中でも、バランスボールは体幹を鍛えたり、ストレッチが気軽にできると人気です。ただ、一般的にバランスボールはゴム素材でピンクやブルーといったものがほとんど。部屋の雰囲気を台無しにしてしまいます。応募作品は、オブジェとしても部屋に置きたくなるような遊び心と高級感を兼ね備えた家具をコンセプトに、レトロなサッカーボールをモチーフにしてデザインしました。
審査コメント
コロナで家にいる時間が多いとバランスボールの色や質感が気になる。とても素直な視点である。その素直さがそのままデザインとして現れていて、とにかく気持ちいい気分になる。生活に大きな皮革の球があるのは、彫刻だったり、ペットのようで空間が温まる、またしゃべらないが他者とも言え、自分を客観視するきっかけになったり、と発見がたくさんある作品です。
フリー部門 フューチャーデザイン賞
播州白鞣牛革 半筒茶碗
中山智介(銀職庵水主)
作品コンセプト
皮革の新たな可能性を示した「革の食器」。
これまで不可能だった播州白鞣の床革のみでの成形を実現し、極地とも言える環境性能を備えました。
優れた保温性。
割れず欠けずの強靭性。
陶磁器やガラスよりも軽い。
使う洗うといった食器としての基本性能は勿論、安全性や耐久性も両立させております。
抹茶碗としてのデザインにも注力し、茶陶に習い実用と審美的観点にも強く拘りました。
美しき日本文化と皮革の邂逅です。
審査コメント
革は、菜種油・塩・清流・太陽そして職人の手技で鞣された播州白鞣。
最高レベルの環境性能を持つ播州白鞣、さらにその副産物である床革のみを使用して成形、これに審査員が魅了されました。理屈抜きで強い作品です。が、この物語、環境、実験場があれば、モダンなバッグや日用品を作り、都会のセレブを巻き込むのも容易い感じがします。どうして工芸的になるのか、毎年疑問ですが、今年も見事です。
学生部門 最優秀賞
THL
若井田健太(多摩美術大学)
作品コンセプト
“THL”は床革と膠を用いた撓め革のスツール。
日本の約千年前、武具の製造時に皮を膠液に浸し槌で打ち固めた撓め革が存在した。撓め革は時代が進み必要性を失ったが、硬質な材として見ることで新たな用途で利用できる。撓める加工法は古典的だが、生物から獲れる材を余すことなく活用することはエシカルである。
武具から家具へと革に内在する意味の更新が用途を拡張すると共に、資源の使用法の再考を暗示させるだろう。
審査コメント
武具のイメージから家具を作ろうとしたコンセプトは無理がなく自然で、感心しました。加えて武具を作る伝統の技法や材料に着目した点も評価されました。二次曲面のみの構成のため、皮革の材料特性が完全に生かされてなく、柔らかな合板になってしまった点がもったいない。しかしながらナイスチャレンジで、今後の発展改良が期待されます。
審査員長特別賞(持続可能なデザイン)
One Leather One Cord
椎名 賢(Ken Shiina Design Laboratory)
作品コンセプト
1枚の革と1本の革紐だけを使って作ったバックパックです。このために、タンナーさんにお願いして作っていただいたステアの丸革を使いました。
通常は半裁で流通している牛革ですが丸ごと大きな1枚の状態で仕上げていただきました。
1枚続きの型紙を考案し、ミシンも金具も接着剤も使用せず1本の革紐だけでまとめることを目指しました。文字通りOne Leather,One cord
審査コメント
これはバッグだが、構造は風呂敷である。一枚の布(革)で作られており、グッドデザイン、持続可能なデザイン(労働面や環境面など)という意味においても評価した。またこの作品は機材なしで製作ができるため、皮革素材の用途や使い道をさらに一般に広げる可能性を持つ。近年の温暖化問題は待ったなしの様相を呈しており、ポスト石油製品として皮革製品が名乗りを上げる、このような企画デザインは重要である。業界全体で取り組んでいくべき課題とも言えるだろう。
公式ホームページ
関連リンク
ジャパンレザーアワード
日本皮革産業連合会
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