結果発表
2017/12/27 10:00

HIKONE STUDENT ART AWARD 2017

応募者数:65名
受賞作品数:4点
主催:国宝・彦根城築城410年祭推進委員会

グランプリ

究極の一石を投じる
安田泰弘
究極の一石を投じる
作品コメント
非消費(永遠性)の代表である仏壇と、消費の代表である水切りを組み合わせた遊びの中で、彦根の誇る伝統産業と消費について考えるワークショップ。すぐに投げ捨ててしまう水切りの石を、敢えて大事に育てること。それは当人に愛着を沸かせ、石を投げ捨てる際に葛藤を生む。石を見つけ、水切りを試みるところまでを記録に残し、アーカイブとして展示する。誇るべき伝統技術が廃れてしまう前に、私は一石を投じたい。
作品説明
安田さんの作品「究極の一石を投じる」は、彦根の伝統産業、仏壇づくりの技術の価値を再発見する体験型のワークショップ。琵琶湖で拾ってきた石に漆、蒔絵、金箔で模様を施し、これを川に捨てる行為を通して価値を改めて感じてもらう。模様の描かれた石と、ワークショップの様子を収めた写真、ポスターが作品として展示された。伝統的な要素を踏まえながらコミュニケーションアートの手法も取り入れたバランスのよい作品と評価された。もともと大学で漆にまつわるプロジェクトに参加してきたという安田さんは、「ブランディングデザインが自分の関心領域。価値のつくり方を研究していきたい」と話した。

準グランプリ

にはたつみ
植村宏木
にはたつみ
作品コメント
作品を通して、移り変わる景色のなかに潜む気配を表したいと考えている。
湖に満ち、大地や木々や空気のなかに存在する水は、確かな気配をもっていつの時にも景色のなかに潜んでいるように思う。
芳醇な水をたくわえる琵琶湖の湖岸でヒトが生活をはじめた頃の景色は、場所のもつ特質の大きさが故に現代でも変わることなく、景色のなかにひとすじの光景として浮かび上がるように感じる。
湖岸に迫るほどに鬱蒼と生い茂る木々のもとで、気を削り、船をつくり満ちわたるうみへと漕ぎ出した頃から、土を拓き、多くの交易を通して見通しのよい街並みへと歩みを進めるまで、水の気配は変わらずにヒトの近くにあるのだろう。
作品説明
準グランプリの植村さんの作品「にはたつみ」は、寺の本堂前の向拝所両脇に置かれた。にはたつみとは、地上にたまり流れる水のこと。「昔から今に至るまで彦根は水を通してつながっている」と感じた植村さんは、参道から琵琶湖に向かって流れる水を意識できるものをと本作品を制作。木を焦がす手法でつくった板に、ガラスの粉を埋め込み水の流れを模した。
最も遠い南国、動かない石
石毛健太
最も遠い南国、動かない石
作品コメント
浄土宗の二河白道における水河は欲に溺れる、欲に流される水の河である。
この庭はアルゼンチンの石、アズールシュロを使用し水河を表現している。
日本の地球の真裏(対蹠地)に存在しているのはアルゼンチン(の沖)である(またはそのように見える)。
これは地球上で最も遠い南国と動かないはずの石と宗教建築を結びつける運動についてのプロットである。
作品説明
もう一作品、準グランプリとなった石毛さんの「最も遠い南国、動かない石」は、「もともと宗安寺にあった面白いものをより面白く表現しようとしたもの」と話す。境内にアルゼンチンの石があることに着目。この石について書かれた看板を再現し、庭には石とハンマーを設置。映像に地球の捻転運動とアルゼンチンの石工の話を入れ、それぞれの要素にストーリーをつけた。一つ一つは独立した物語でも、それぞれが影響し合う部分は見ている人に委ねる。「新しい視点を提供する」アートの役割を意識してこの手法を選んだという。

審査員特別賞

View(horizon)
吾郷佳奈
View(horizon)
作品コメント
私は、今回の滞在で、彦根、ひいては滋賀県の「中心を持たない構造」に関心を持ちました。彦根における彦根城、滋賀県における琵琶湖、シンボルとしての中心にあるものを持ちながらも、どこかでドーナツのような、空洞の中心であるような構造。その空洞を満たすものとして水がありました。そしてそのまわりにコラージュのように色々な背景を持ったものたちが寄り集まって形をなしている。今回滞在した私たちや、展示する宗安寺もきっと同じで。私は、そんな彦根でのバラバラな記憶たちをコラージュして、そこから拾い上げた「輪郭線」の集積を鏡にします。そうすることで、琵琶湖やお堀を満たしている水がそれらを覗き込む人々を映してきたように、私が彦根で見聞きしたものごとの集積によって、宗安寺で日常的に使われている水平な天板の上に、その場にある時間を映し出したいです。
作品説明
吾郷さんは、やはり「彦根と水の関りが気になった」とし、水面をのぞき込んだような体験ができる鏡状の作品を宗安寺の客間の卓上に設置。この板に、琵琶湖やお堀で撮った写真のコラージュから模写した線画を描いた。
関連記事