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2023/05/17 10:00
第17回 ダイワハウスコンペティション
建築・インテリア・エクステリア
応募作品数:192点
受賞作品数:7点(佳作を除く)
主催:大和ハウス工業株式会社
最優秀賞
都市をキャンプする
北野ユミ
作品コメント(一部抜粋)
キャンプをしていると雲の動きや雨の音、木漏れ日など、自分の意思に関わらず変化していくものを肌で感じられ、何時間と過ごしていても飽きがこない。この舞台を都市に置き換えて考えてみる。自然環境に加えて歩行者や車、隣人の暮らしなど、外部の変化はより絶え間なく多様な要素が入り混じっている。これらを暮らしに取り込んだ飽きない住まいの提案である。
敷地は京都市内にある、4車線の白川通りと、白川沿いの小道に挟まれた三角形の変形地。表と裏とで異なる性質をもつ通りに対して、それぞれを受け入れた暮らしを計画した。ここでの1日は、白川通り側に設けた開口から日が差し込み、都市が起きるのと同時に始まる。都市と連続する土間・居間で朝食を取り、冬にはストーブに薪をくべ、都市を感じながら生活できる。
…
(プレゼンテーションより抜粋)
審査コメント
躯体は木造でよかったのか。キャンプをする時の手がかりは地面だが、その代わりが躯体であると設定できれば、表裏の差がより表れたのではないか。(青木 淳)
一次審査では樹木に寄り添う暮らしが想像されたが、プレゼンテーションで見えてこなかった。リアルな計画なので、その整合性が取れると更によい。(堀部安嗣)
家として成立している一方、キャンプという言葉とのギャップがある。夜間の暮らしが示されておらず、電気を使わないことへのコンセプトが薄い。(平田晃久)
都市をキャンプ、というキーワードからくる住むワクワク感が伝わってくる。暮らしている様子が具体的に語られ、電気を使わないことへの説得力がある。(小堀哲夫)
魅力的な暮らし方を提案していて、体験してみたいと感じさせる表現力と、このまま本物の建築にできるというリアリティがある。(八田哲男)
優秀賞、大和ハウス工業賞
電気を切る、命が流れ
羅 一凡、張 喆涵、謝 云飛
作品コメント
電気は世界を繋ぐために役立っている。しかし同時に、自然や生命から私たちを遠ざけるものでもある。今、電気を切ってみよう。川の流れる力によりルーフが回転するこの住宅では、光の流れ、季節の移り変わり、川の流れをはっきりと感じることができる。内部には最小限のルームを設置して、ほぼ半屋外のように計画した。太陽が東から昇り西に沈むように明暗は常に変化し、それに対して人の生活も移り変わる。壁で仕切られることなく、光と影の位置関係によって機能が変化していく。地面は自然のままの状態を保ち、周りの地形と一体化し、内部空間でも動植物の生息環境を確保する。水車から着想を得たこの住宅は、私たちの知覚を拡大させ、空間にさらなる面白さを感じさせる。光の流れ、季節の流れ、川の流れ、あるいは時間と自然の流れ。いずれも人間の生活と密接に関係している「命の流れ」といえるのではないか。
(プレゼンテーションより抜粋)
審査コメント
自然に生まれたような歪みのある屋根形状は、庇につけた葦簀の揺らぎに似たよさがある。一方で、屋根の回転速度が川に依存し、コントロールできないことが暮らしの幅を狭めている。(青木)
既に自然界では多様なことが起きているのに、それをまた建築で再現することは疑問である。(堀部)
自然が動き、建築も動く。その組み合わせが重要で、屋根の回転速度は操作できた方がよい。(平田)
水力で建築が動くことで得られる歓びが表現できているプレゼンテーションだった。(小堀)
アニメーションを使ったプレゼンテーションのクオリティが高く、ここでの暮らしは楽しいものだろうと予感させてくれた。(八田)
優秀賞
仮面が育むプライバシーとつながり
石田康平
作品コメント
今、人びとの集まり方が問い直されている。現代における電気とプライバシーの関係性から、新しいプライバシーのかたちを構想する。これは三鷹の森を敷地とした、仮面を付けて暮らす集合住宅である。8人の住居者に対し、8種類の仮面と八つの門・寝室を設定した。仮面は1日ごとに入れ替わり、共同生活における各自の役割は仮面ごとに割り振られている。仮面やその役割はコミュニケーションのきっかけになる一方で、仕事や趣味といった個人に紐付くような会話は成立しない。次の日には仮面が変わり、前日の繋がりはリセットされ続ける。仮面を付けると視界が狭まるこの場では、柱といった垂直性が空間認知のガイドとなる。屋根と床をずらすことで、仮面を付けない人には一見無秩序だが、付けた人だけに生活動線が浮かび上がる空間構成とした。そこに外部の人たちが入り混じり、多様な交流を誘発する。
(プレゼンテーションより抜粋)
審査コメント
電気が使えないと、匿名性を保ち続けることが難しく共同生活が求められる。その役割を固定しない装置として仮面を活用したことは評価できる。しかし、そこから建築に落とし込むことが必要だ。(青木)
ほかの作品と違い、人間が負の状態に陥っている時に建築に何ができるのか、そういう視点が強く出ていて素晴らしい。後は、説明していることと空間との距離を縮めて欲しい。(堀部)
アイデアの方向性は理解できるが、このフィクションが指し示す先が何なのか伝わってこなかった。建築として応えなければならない。(平田)
現代の社会構造の問題を浮き彫りにさせている気もするが、空間のリアリティまで感じられなかった。(小堀)
入賞
電気を使わない家電
菊池凌平、杉山翔太、小林友哉
作品コメント
電気を使わない家において、家電はガラクタとして扱われるだろか。たとえば冷蔵庫はその性質上、熱を内部に入れないために真空断熱材と呼ばれる高性能な断熱材が入っている。このように、身の回りの家電は電気を通わずとも、熱伝導率の高い熱交換器や、光をコントロールする偏光板といった、熱・光・空気などに特化した多種多様な性質が内在している。また、パラボラアンテナのディッシュのように、特徴的な形態をしたものも多い。家電の意味が解体された世界において、家電の性質や形態を活かしながら再編。細分化した構成要素を組み合わせ、郊外に建つ既存の木造住宅を改修する。
(プレゼンテーションより抜粋)
遊居 不安定の中を移ろう
中川雄斗、堺 皓亮
作品コメント
電気がなくなると、環境や場所を一定の状態に保ち続けることは難しく、内部は外部環境の変化に晒され、内部と外部、占有部と共有部といった境界が曖昧になっていく。その不安定な環境を肯定し、それに応じて自らの暮らしを楽しみながら変えていくシェアハウスを提案する。常設の躯体は柱と梁のみで、入居者は自由に仮設的な居場所や足場をつくり、環境の変化に合わせて移動する。入居者のみならず設計者やマネージャー、近隣住民が交流・協力し、多動的な暮らしを支える仕組みをつくる。賃貸とし入居者の入れ替えを促し、ショートステイにも対応することで変化し続ける場所となる。
(プレゼンテーションより抜粋)
ちょうどいい家
コンヴィヴィアルなスチームエンジン・エコシステムを内包した家の提案
鈴木俊介
作品コメント
現代において、人間は道具を使っているのだろうか。道具が人間を支配しているのだろうか。電気のない世界で生を感じ、かといって不便すぎる生活を強いられない、オフグリッドな動力と共に生きる家の提案である。敷地は山々に囲まれ森林資源は豊富である。近くの川から水をポンプアップして引き入れ、木質ペレットの暖炉で温め、水蒸気をシリンダーに入れ揚水ポンプの動力とする。蒸気機関設備は生活空間に入り込み居住性を向上させ、周辺環境と人間の生活との媒介者として機能する。
(プレゼンテーションより抜粋)
月の家
林 嵩之、中山翔貴
作品コメント
電気を使わないことで、電線といった電力インフラによる場所の拘束から家は自由になる。普遍的な光源である太陽の動きに合わせ浮遊する家の提案。気球は2重の膜で構成されており、上部は透明または半透明膜で光を通過させ、下部は熱線吸収膜や反射鏡で光や熱を受け止めることで、温熱効果により内部気体を加熱し上昇する。建物には炭素繊維、ナノマテリアルのカーボンナノチューブを採用し、住宅の総重量を10分の1に軽減。夜間は月の光を吸収するのではなく反射鏡で反射させ、室内へと送り込むことに特化させることで、灯りのない街路において月のように光を反射し、地上を照らす。
(プレゼンテーションより抜粋)
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