結果発表
2022/04/21 10:00

第16回 ダイワハウスコンペティション

応募作品数:216点
受賞作品数:7点(佳作を除く)
主催:大和ハウス工業株式会社

最優秀賞、大和ハウス工業賞

湿潤にほころぶ
趙 思嘉、青木美羽、伊藤さくら、鈴木あかり
湿潤にほころぶ
作品コメント(一部抜粋)
熱帯雨林では万物が相互に関係し合い、一見悪影響と思えるものごとも含めて生き生きとしている。家にこの熱帯雨林の関係性を取り込んでみる。四谷駅から歩いて10分ほど、神社裏の住宅群の40年後の姿を表現する。床や壁、土や植物、この家を取り巻くさまざまなものが湿度に影響を受けるのと等しく、私も湿度に影響を受ける。風呂場の窓に結露がたまり、窓枠を腐らせる。腐食は次第に広がり、壁に穴を空ける。穴の空いた壁は外に湿度をこぼす。湿度は土地を潤し、植物を育て、庭をつくる。年月が過ぎると、徐々に隣家の壁が雨により腐食される。壁に穴が空き、入り込んだ雨が隣家の寝室の畳を蝕む。隣家の住民は私の家との間に寝室を拡張し、双方の家が輪郭を失い始める。年月によって変化した家に住み、その変化に対して自分も変化する。触れることは自分が世界の一部として取り込まれることだ。湿潤は輪郭を溶かし、所有者を曖昧にする。

(プレゼンテーションより抜粋)
審査コメント
住宅が朽ちていく中で、周囲と溶け合う関係を築く魅力を感じる。大事にしているものは伝わるが、その感覚を言語化する作業が欠けていた。(青木 淳)

不快さを克服するために、技術を発展させてきた現代において、人間は本当の幸せを手にしたのかという疑問に立ち戻らされた。(堀部安嗣)

広い射程を秘めた案だが、人間と自然の拮抗状態をしっかりと定義づけ、そのためにどのような操作を施すのか、具体的に説明してほしかった。(平田晃久)

輪郭がなくなることで、現代の価値の呪縛から抜け出すという仏教的な発想は面白い。湿気を受け入れるという考え方には可能性を感じた。(小堀哲夫)

現代社会の住宅に対してさまざまな問題を提起している。環境の負の側面をすべて受け入れて、それが本当に成り立つのかに疑問が残る。(南川陽信)

優秀賞

人の言葉に触れる家 家の言葉に触れられる人
髙橋雅人、小山田陽太、武田 亮、山崎健太郎
人の言葉に触れる家 家の言葉に触れられる人
作品コメント
触れるとは、相手に歩み寄りながら、心の境界線を探り、静かに触れることだと考える。その手段として、人間は言葉を扱う。言葉のもつ力を家を通して考える。第1種低層住居専用地域の木造2階建てを対象とし、言葉の意味を超えて、日常のものごとを表現する慣用句を空間化する。慣用句によって変貌した空間が家中を駆け巡り、それぞれが会話をするように関係をもつ。平面、断面的に会話が錯綜し、躯体やエレメント、仕上げを横断しながら、家の言葉として人に語りかける。これは人の言葉に触れたことで生まれる新たな家の言葉であり、この言葉を扱い、家は人へ諧謔的に語り返す。人の言葉と家の言葉、互いが気持ちの境界線を探り合い、両者の言葉を介して繋がる。そんな言葉が溶け合うようにして生まれた関係から、言葉を超えて実際に人と家が繋がることができる。これからの時代の、触れて触れられる家だ。
(プレゼンテーションより抜粋)
審査コメント
実験としては面白いが、言葉がどこまで新しい建築をつくり得るのか見えにくかった。(青木)

慣れ切った言葉を読み替えて、形骸化した家の空間を見直す取り組みだ。(堀部)

完成度の高い案。家と人が対等にコミュニケーションを取る関係は興味深いが、部分の操作が及ぼす全体への影響が少ない。(平田)

もう少し大胆な操作を行ってもよかったと思う。提案自体には心を強く動かされなかった。(小堀)

言葉の具現化は楽しいが、全体の中で見えてくるものをもう少し表現できればよかった。(南川)
気配が溜まる中庭
兵頭璃季
気配が溜まる中庭
作品コメント
実空間の価値は、多様な他者との距離感があることにある。そこで、一つの大きな中庭を共有する集合住宅を提案する。敷地は練馬区大泉学園町。通路、部屋、ベランダが明確に分けられた従来の集合住宅の形態を分解し、住戸間に隙間を設け、通路とベランダを一体化する。住戸を円状に配置して中庭をつくり、上部階を外にずらしながら積層することで、各住戸の周囲に余白空間を設ける。中庭では、中央にある菜園での作物のおすそわけなど、さまざま活動を促す。通路の奥まった部分では映画鑑賞などの趣味の活動、開けた部分では卓球やDIYなどが展開され、歩くだけでさまざまな気配が感じられる。大きな中庭、余白空間を設けることで、多様な他者との繋がり方を許容する新しい家のあり方を提案する。
(プレゼンテーションより抜粋)
審査コメント
周辺に背を向けていることも気になったが、全体としても、コモンのあり方に中途半端さを感じた。たとえば、中国の円楼のように、1階を全住戸のための家畜飼育、台所、食堂の空間とするなど、提案がほしかった。(青木)

力強さと迫力のあるかたちをつくりきっている。だが、作者の価値観が強過ぎる。多様な他者を許容できる空間になっているとよかった。(堀部)

力強い空間をつくり込んでいるが、敷地の外に対して閉じたように見えるのがもったいない。(平田)

通路の余白空間は魅力的だが、中庭の用途が決めつけられている感じは気になる。敷地外の人との接点はもう少し工夫できたはず。(小堀)

セキュリティの部分などの問題はあるが、実現性の高いアイデアだ。(南川)

入賞

触れられる家 Reachable Home
周 諾雅
触れられる家 Reachable Home
作品コメント
「家、ついて行ってイイですか?」という日本のテレビ番組を見ていると、社会との接触を拒む人たちが目についた。部屋は散らかり、家は彼らの社会からの避難所というより、社会への障壁となっていた。殻に閉じ込められている人たちのために、触れて触れられる家を設計する。一般的な日本の住宅は、廊下が各居室を繋ぐが、この廊下が社会を拒む人とほかの部屋との距離を遠ざけている。そこで、廊下と各居室を一体的にし、さまざまな機能をもたせたユニット建築を提案する。外部に対して平行に配置し、接点を増やすことで人や自然との触れ合いが生まれる。
(プレゼンテーションより抜粋)
厚情のパース
安達慶祐、石井 冴、田伏莉子
厚情のパース
作品コメント
触れて触れられる家を考えるにあたり、私たちは目の見えない夫婦を主人公にした。彼らの家を考えることは、視覚以外で空間をとらえる試みであり、それは目の見える人に対しても新たな世界を提示してくれると考えた。目の見えない人は、他者に触れることでその状態を把握する。触れられる面積を増やすため、住戸を筒状に変化させ、多様な境界をつくることで、全体が人びとの触れ合いで彩られる。他者の行為が目に見えなくても、常に感じられる。他者の行為が生活の一部となり、また自分の行為が他者の一部となる。触れて触れられる、それは人が優しさをもって他者の感性に触れることで、新たな世界に気づくことだ。
(プレゼンテーションより抜粋)
“Light” House
福岡 優、北條太一、佐藤拓哉
“Light” House
作品コメント
かつて灯台には、灯台守がいた。灯台守は、明かりを灯すことで船舶に情報を伝え、航海を手助けしていた。そこには、灯火を介した船乗りと灯台守の無言の対話が存在していた。灯台が無人化された現在、目が見えない人のための住宅として設計し直し、かつて灯台が有していた人と人との関係を見つめ直す。昼は太陽に照らされ、影も動く。夜は灯台自らが太陽となり、直下に影を落とす。この二つの光を頼りに、昼の家と夜の家に分ける。灯台を中心に楕円平面とし、住人は時間に応じて光を頼りに移動し、1日でこの楕円軌道を1周する。光と陰に導かれるように暮らし、住人が建築に語りかけ、建築が応答する、触れて触れられる家のあり方だ。
(プレゼンテーションより抜粋)
壊われかけた砂時計
石井 冴、矢加部翔太
壊われかけた砂時計
作品コメント
私たちはそれぞれの時間感覚をもっている。自身の時間感覚に従順に暮らし、ルーティンに支配された生活から脱却する住宅の設計を試みる。日常生活の中で他者の時間感覚に影響されることがある。集まって暮らすことは、他者の時間感覚に触れ、自身の時間感覚も触れられているということ。上階の寝室から1日のはじまりを迎え、下階に向かって暮らしが展開される螺旋状の建築を提案する。時間感覚の触れ合いを増やすように、くぼみのような空間を散りばめ、そこに植物の成長や雨水のたまりなどが感じられる操作を施し、生活の中で時間を感じられる空間をつくる。それは、自身の時間感覚を相対化し、微調整するきっかけとなる。
(プレゼンテーションより抜粋)
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