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2020/04/01 10:00
CREATIVE HACK AWARD 2019
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応募作品数:209点
受賞作品数:6点
主催:WIRED(コンデナスト・ジャパン)
グランプリ
バズの囁き/Whispers from Buzz
GengoRaw(石橋友也、新倉健人、吉田竜二、二口航平、吉田智哉)
作品コメント
【作品ステートメント】
ネットとスマホが行き渡った現代では、昨日のニュースやバズは今日にはもう忘れられている。SNSに日々大量に投稿されるコトバ達は上から下へと流れていき、顧みられることはそう多くはない。本作では、Twitter上で日々生み出される「トレンドワード」を素材に、AIが発想し詩を綴り続ける。SNS上で生まれては消えていくデジタルデータとしてのコトバを人間以外の知性が観察し、詩とし紡ぎ出す光景だ。膨大な量のコトバを発信するようになったSNS時代の我々とそれらを統計的に処理する新しい知性。両者の衝突によって、我々を取り巻くメディアとコトバの現在を映し出す。
審査コメント(一部抜粋)
せっかくソーシャルメディアという素敵なメディアがあるのに、いまは“バズ”というのが、嫌な言葉やデマが一日で消えてしまうことなど、悪い意味で使われています。そのなかで、そのバズをAIという無垢な詩人が残る言葉変えるというのはすごく素敵なハックだなと思いました。
いまは「AIを使えば話題になる」というアイデアで終わってしまうものがほとんどのなか、皆さんがすごかったのはそれをちゃんと実装していること。やっぱり「つくってみる力」はすごく大事で、思いつくだけでなく、実装するというのがハックの醍醐味だと思います。
それに「AIの詩人をつくるためには、誰かの詩集を学習データにしては面白くなくて、日本語の典型的な例文を学習させたほうが面白くなった」ということや、AIに詩をつくらせることで“AIっぽい詩”というものがわかってきたという学びもありました。(佐々木康晴)
…
準グランプリ
photobomber_tomotosi
トモトシ
作品コメント(一部抜粋)
何十枚も撮影して一番気に入ったものを選び、それをさらに加工してシェアする。
これは僕だけでなく、現代に生きる誰もがやっていることだ。
自分のインスタグラムのタイムラインを眺めていると、「こう思われたい」という欲望が透けて見えてないか心配になることがある。
このプロジェクトにおいては、その欲望をコントロールできない状態でタイムラインを作ることを試みた。
舞台は日本で一番有名な待ち合わせスポット「ハチ公前」。
ハチは数年間ものあいだ飼い主を待ち続けたと聞くが、僕はこの場所で、他者の写真に映り込むのを待ち続けた。
Instagramにあげられた写真を、ハッシュタグや位置情報(#ハチ公前、#hachiko、#hachikostatueなど)から検索する。
そして僕が写り込んだ写真だけを集めたのがこのアカウントである。
https://www.instagram.com/photobomber_tomotosi/
…
審査コメント
トモトシさんが人々のSNSに無理やり入り込んでアグリゲーションしていこうという試みから生まれたこの作品のなかで、唯一普遍だったのが、動かぬハチ公とトモトシさんでした。
そこで現れてきたのが、社会に最もいいかたちを写し出そうとする最も普通ではない方々の姿と、最初はギラギラと写り込みを狙っていたけど、次第にどうてもよくなっていった普通の姿のトモトシさんで、このコントラストが、すごく今の社会の世相を表しているなという気がしました。
さらにタグ付けされたことで、この作品群を見に来た「写りこまれた主役」である本人のうち、自分の姿がいかに滑稽かと自嘲する人も何人かいたはずで、その一連のサイクルが、すごくええなと思いました。この世知辛い時代に、なんとなくクスっと自嘲するという行為まで至っているというところが、ぼくはとても魅力的だと思いました。(塩田周三)
特別賞
Dying Robots
くろやなぎてっぺい、望山 洋
作品コメント
【背景】
一般社会へ普及したペットロボット、家庭用ロボット、およびパーソナルロボット。新しいロボットが大量に生産されるなかで、役割を終えたロボットは廃棄・返却されていく。仮にロボットに有機的な身体を与え、ある種の寿命を持たせることができたら、ロボットと人間の関係がどう変わっていくのか。ロボットを自然の摂理のなかに組み入れ、生物と同等の存在として向き合うことで、私たち人間とロボットの新たな共生関係が見いだせるのではないだろうか。またロボットの死をどう考えるべきか、ロボットを食べることで、僕らはそこに生命を感じるのか? 糠に棲むロボットとの関係性を考察することで、非生物の生、適応、死の境界線を探る。
審査コメント
この作品に送る賞として、この特別賞を素晴らしい創造性の源である「ラテラルシンキング賞」とでも呼ぶべきだと思います。世界が良い/悪いでロボットについて語っているのに、このチームはロボットがどう生き、死ぬならどうするべきか、どう敬意を表すのかなど、本当に面白い議論や考えをしています。今回お二人が提起した問題にまだ答えが出ていないのであれば、ぜひこれからも問い続けてもらいたいと思います。(クラウディア・クリストヴァオ)
ソニー特別賞
動的楽譜システム
大久保雅基
作品コメント(一部抜粋)
日本の義務教育にも採用されているほど、五線記譜法による楽譜は世界中で使用されている。五線記譜法は、民族音楽に見られる口伝や文字譜に比べて正確に伝達しやすかったと言われる。音高と時間が明確に指定されており、時代が変わってもその再現は大きく変わらない。その再現度と印刷技術が相まって世界中でも使用されるようになった。クラシックはもちろん、ポップスもそれをベースにした楽譜が使用されている。日本では明治以降に西洋音楽が広まり一般的になった。現在日常生活では、日本の伝統音楽より西洋のスタイルで作られた音楽に触れることが多くなっている。つまり私達が想像する「音楽」とは五線記譜法によって作曲されたものを指すのかもしれない。
五線記譜法は1分を何分割するかという「テンポ」を設定し、小節内を音符や休符によって分割する。
…
審査コメント
ソニーでは社外の方にも事業化を検証するサービスとして「Sony Startup Acceleration Program」提供しています。今回のCHAでの我々の役割はアイデアを社会に実装するということなので、事業としてサステナブルにできるか、検証できるかという観点で大久保さんの作品を選ばせていただきました。楽譜における能力の可視化と能力習得のショートカットができる作品なので、新たな教育の姿として定義できれば社会的な意味もあると考えています。事業化にはビジネスモデルや収益といった課題もありますので、もしよろしければ我々と一緒に事業検証を進めていければと思います。(小田島伸至)
ワコム特別賞
アートと都市の融合体の創造 ─ 渋谷の未来 ─
佐藤 玲
作品コメント(一部抜粋)
当時高校生だった私が書いたこの論文はさほど多くの人が見るようなことはなく、忘れられていくものになってしまうと思います。私自身もそう思っています。ですが、これを読んだ同年代の友人が将来、都市がさらなる変化を重ねていった姿を見て「あいつが考えていたのはこういうことだったのか」などと思い出してくれるような、そしてそれを読んでくれた人たちが未来や都市に対して志すようになるとこの論文はただの高校生が書いた論文ではなく“SF作品のように誰かの気持ちをワクワクさせた”ものとなると思っています。
この作品は大きな社会的な影響はないかと思います。ですが、未来2000年生まれのミレニアム世代の人間が18歳の時に書いた都市と未来に関する論文を書いたものとして残っていき、何かデータとして使われるのであれば本望です。
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審査コメント
ニューアカデミズムと呼ばれていた80年代には都市論が色々ありました。しかし、最近は文化の歴史やコンテクストを、都市論も含めてあらゆる分野から語っている人はほどんどいません。なので今回の論文には、かつて80年代にハックされたものを2019年にリハックしたという感覚がありました。ただ、こういう論考を出す人はそれで終わってしまうので、これから映像やCGを美大で学んでいくのであれば、ワコム賞の賞品を使ってどんどん制作・発表していってもらえるといいなと思います。(齋藤精一)
パブリック賞
Street View Random Walker さまよえる私
Image Club(東 信伍)
作品コメント(一部抜粋)
「Street View Random Walker さまよえる私」(https://samayoeru.me)は、Googleストリートビューを自動操縦して、永遠にどこかをさまよい続けるWebサイトです。
一定のスピードで道なりに進み続けて、分かれ道が現れたらランダムに曲がります。サーバーに位置を保存しながら歩き続けており、ブラウザを閉じても引き続きどこかをさまよっています。
2019年6月に東京・秋葉原を出発して以降、関東全域をうろうろしていましたが、10月現在は長野のどこかを歩いているようです。
マップアプリの入ったGPS端末が浸透した現代、「自分がどこにいるのかわからない」という状況は容易には体験できなくなっています。道に迷わないことは幸せなことなのでしょうか。常に自分の現在地と行きたい場所への最短距離が表示され、そのルートを歩く生活に窮屈さを感じないでしょうか。
…
審査コメント
(GoogleのAPI使用料を支払うために)応援してくれた人のおかげでサイトを続けてこれたというお話もあったのですが、この賞をとってしまったことでさらに支払いが大変なことにならないかという心配があります(笑)。でも、グーグルの社員として、このような作品やプロジェクトが起きるときに今後発生することのある課題の一つだ、ということを見せていただけたと思います。(福原志保)
公式ホームページ
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