結果発表
2019/08/27 10:00

第24回 学生CGコンテスト《学生限定》

応募作品数:439点
受賞作品数:40点(アート部門:11点/エンターテインメント部門:10点/パートナー賞・ナレッジ賞:19点)
主催:CG-ARTS(公益財団法人画像情報教育振興協会)
※ここでは、各部門の最優秀賞・優秀賞をご紹介します
アート部門、エンターテインメント部門

最優秀賞

マイリトルゴート
見里朝希(東京藝術大学大学院)
作品コメント
オオカミに食べられてしまった子ヤギ達を胃袋から助け出すお母さんヤギ。しかし、長男のトルクだけが見つからない!
審査コメント
学生CGコンテストの「常連」とも言える見里朝希氏、コマドリアニメーションの手法に拘りつつも、扱う素材やテーマを作品毎に変える挑戦的な作家だ。今回の受賞作は一層の意欲作。見里氏のシグニチュアとも言える可愛いキャラクターデザインや、もはや熟練の域に達したアニメーション力に目を奪われつつ、グリム童話にインスパイアされた本作はドメスティック・バイオレンス、過保護親をはじめ、現代社会が直面する様々な課題が色濃く反映されている。分かったようで分からない何とも云えぬ気持ちを解消すべく、作中に散りばめられた細かいニュアンスにヒントを求め、何度も観てしまう粘着力のある作品だ。圧倒的な得意技を持ちつつ、常に新しい境地を求め続ける見里氏の今後に期待して止まない。(塩田周三)
アート部門

優秀賞

Archi-Tekton
浜田卓之(情報科学芸術大学院大学)
作品コメント(一部抜粋)
本作品はストリートスケートボーディングをモチーフとして建築の概念の再考を目指したインスタレーション型の映像作品である。作品制作において、アンリ・ルフェーヴル「空間の生産」 イアン・ボーデン「スケートボーディング・空間・都市」 ティム・インゴルド「ラインズ ─ 線の文化史 ─」を参照することで、建築の概念について再考し、ストリートスケートボーディングを本作品における建築の概念として提示する。そこではスケーターは建築家であり、動き続けるスケーターの軌跡は新たな動線(line)を描き出すと仮説を立てたうえで、アマチュアスケーターである作者自身のリサーチ(街でのスケートボーディングの実践)をもとに、壁によって区切られた空間内に再構成した。
審査コメント
スケーティングボードの動きと音を別空間へマッピングすることによる立体サウンド・ビジュアライゼーション。本作における光と音による“幽霊”は、他の作家による過去の同様な表現以上に空間的な拡がりが感じられる。そのことに加え、フィニッシュ時の軌跡の拡散から、単純な物理情報のマッピングではなく、また演出とも異なる、作者が内在的に持った眼には見えない「情報」の空間への定着として、本作から4番目の次元が感じられた。(藤木 淳)
watage
(euglena)(多摩美術大学)
作品コメント(一部抜粋)
私も世界も目まぐるしい速さで変わる中、ゆったりと佇み生きる植物の世界に引き込まれた。派手なテクノロジー表現の急速な進化に引けを取らない新しい表現とは、何だろうか。日々、壮大な刺激を浴びる中で、感覚を研ぎ澄まされる細やかな刺激が今必要だと考える。
コンセプト 手のひらに乗せても感知できない重さの綿毛。その集積であるwatageは今まで鑑賞者が知覚していなかった微かな大気の流れを見せる。儚げなwatageはいつまで揺れ続けるのか。いずれこの作品が朽ちたとき、土に植えまた芽吹く日を夢見る。電気を使わず人の動きに反応するインスタレーションを作る理由は、今までのインタラクティブアートのような人工的原動力ではなく、自然発生した原動力を使うことに意味を見出しているからだ。
審査コメント
自然の素材に作家の感性と現代の技術を用いて、再構築したインスタレーション作品。残念ながら審査の過程でインスタレーションそのものを体感する機会は設けられなかったが、自然ではない空間に於いても自然の繊細さや儚さが、寧ろ増幅されるような感覚を覚えた。審査は限られた条件下で行わざるを得ないので、このようなコンテストに於いてインスタレーション作品は元来不利な状況にある。その意味で、本作の魅力を強く訴求したプレゼンテーション映像も評価したい。表彰イベントにて本作を実際に体感できることを心から願う。(塩田)
卒制彼氏三部作(恋のABC編、マンネリ編、わたしは彼を素材以上に男として愛せていたのか編)
岡田詩歌(東京藝術大学)
卒制彼氏三部作(恋のABC編、マンネリ編、わたしは彼を素材以上に男として愛せていたのか編)
作品コメント(一部抜粋)
今まで私は、主に子供の頃に抱いていた性的なものへの「興味」や「嫌悪感」と、現在の自分の性知識との差異について、制作してきた。しかし、実のところ私には彼氏がいたことがなかったため、想像に基づいた制作しか行えていなかった…。そこで想像から現実へと発展させた作品を制作するべく、私は制作のために初めて彼氏作りをはじめ、数カ月後に見事初彼氏ゲットに至った。私はそこから交際中のやり取りで心が動いたことや、好感度などを彼氏の観察日記としてつけはじめた。そんな中、突然別れが訪れた。しかし私はおよそ3日ほどで立ち直り、それほどのショックを受けていない自分にショックを受けた。私は、結局彼を素材以上に一人の男性として愛せていなかったのだろうか? 今作品は、内容だけでなくアニメーションやBGMの曲調からも心情や作品の変化を感じさせるためにも、様々な表現方法に取り組んでいる。
審査コメント
本作は“自分”を用いた実験的な作品ともいうべきだろうか。自身の体験に基づくアニメーションや漫画等の作品はめずらしくないが、本作は“作品”とするために意図して“経験”を設定しようと試みる。「作品」とはなんだろう、「経験」とはなんだろう、と考えさせられる。作品のコンセプトにおいて、「個」に比重を置く作家もいれば、「社会」に置く作家など様々だろう。一方、本作は両極端の領域を行き来をしているようで、その大きな揺さぶりが絶えず注意を引く。アニメーションや音楽などすべて個人による制作スタイルに加え、シーンに合わせた多様な描写スタイル等からも作者のマルチな才能がうかがえる。(藤木)
エンターテインメント部門

優秀賞

Glow World
制作チーム[光の世界]
浅田健太、辻 瑞穂、迫口彰也、恩賀英彰
作品コメント
動くホタルの光をカメラのフレームに捉え続けることで、残光をうつしだし、撮影することで“光花”と呼ばれる特別な花を咲かせることができます。そして、暗く廃れた街を光り輝く街へと復活させましょう! 光花を増やすことで建物や木などのステージオブジェクトの見た目が変わったり、苔が生え緑がかった地面が綺麗な石畳になったりと、ステージ全体に様々な変化が起き、最後には先ほどまで遊んでいたステージをそのまま描画したリザルト画面があり、最終的にどんなステージに仕上がったのかを見ることができ、徐々に“自分のデザインが完成していく”ような感覚を楽しめます!
審査コメント
とても評価できる作品です。
継続して遊んでいくなかで成果が視覚的に分かりやすく、かつ華やかに進行するので「もうちょっとやってみようかな」という興味を持ち続けられる面白さを持っていました。
気づいたら審査作品の中で、一番長い時間遊んでいました!
改善すれば、より完成度を上げられそうな余地もあり可能性も感じました。(市村龍太郎)
ONCE AGAIN
高城茂彰
橋詰隆成、三好優太、五百城弘守、河口 遼、峯 滉基、坪山勢矢、陳 慧瑄
作品コメント
舞台は蒸気機械によって栄えた街。家庭用ロボットとして販売された“ゾーイ”はとある家族と共に生活していた。一家の幼い一人娘はゾーイを本当の家族のように想い、接したそうだ。そんなある日、街は戦争に巻き込まれ、住民は皆殺しにされる。家族も例外ではなかった。町に残ったのは“ゾーイ”ただ独り。自分のことを大切にしてくれた女の子にもう一度会いたくて、彼は来る日も来る日も、ガラクタを町中から拾い集めては女の子を模した人形を作る。
審査コメント
「3DCG」としてクオリティは高く制作されていると感じました。CGプロダクションで働く身としてとても嬉しく思いました。
制作工程もプロの現状に十分則していて感心します。完全にプロダクションワークですね! 各パートも各々高いレベルで作業できているのが分かりました。実際の仕事現場でも戸惑いもなく即戦力として入って行けるのではないでしょうか。ここら辺はCG専門学校のカリキュラムの強みも感じます。学校でも充実した時間を過ごせたのではないでしょうか。
自分だったらこうしたい!とか色々考えたりもして一緒に作業したくなってしまいましたね!(齋藤和丈)
リーダーオブプラネット
オデッセイ 191
袴田圭人、熊崎颯人、鈴木將斗、外山直樹、坪井精広、上川日花里、熊岡映奈、粂川真希
作品コメント
限られたパイプを使い、様々な移し方を楽しめるVRゲームです。VRならではの「空間を自由に使える利点」を生かし、ゴールまでの道をプレイヤーの創意工夫で組み立てられます。正解ルートは存在せず、無難な構成もあれば、ステージにある障害物を利用して道の一部に組み込むようなユニークなルートで移すことも可能です。HTC Viveのコントローラーにより、直感的なルート構築を楽しめるゲームとして完成しました。
審査コメント
VRを使った学生作品が去年くらいから見られるようになってきましたが、こちらの作品は特性を活かした内容になっていると思います。自分で作ったコース上を玉が転がって、ロケットに入っていく様子を見ているのが思った以上に気持ち良く、多人数でワイワイ楽しめそう。グラフィックはまだまだ詰めたい所は多くあるものの、楽しげで統一感はありますね。もしブラッシュアップが可能なら更に詰めたものが見てみたいと思います。(井口晃慶)
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