CERAMIC LIFE DESIGN AWARD 2016
応募作品数:223点
受賞作品数:13点
主催:CERAMIC LIFE DESIGN AWARD 開催委員会(一般財団法人神戸財団、愛知県立芸術大学)
グランプリ
- 作品コメント
- かつて、日本の建築には紙や漆喰のように調湿に優れた素材が使用されていました。しかし、今多くの家の壁はビニールに覆われています。ビニールの壁紙は湿気の多い日本の生活には合っていないと私は考えます。そこで私は調湿に優れた多孔質セラミックを使用したブラケットライトを提案しました。これを今ある壁の上から取り付けることで照明効果と同時に調湿効果を得ることができるでしょう。
7種類のユニットを組み合わせて今ある空間に好きな数だけ配置していくと平らな壁の上にセラミックの照明が柔らかなニットのように広がっていきます。陶磁のもつ自然な風合いとやわらかなフォルムを生かしデザインしています。
金賞
- 作品コメント
- 密集居住地域における北側の余地を、上質な暮らしを彩る「北向きの庭」にするため、光沢と耐候性を兼ね備えた「可動式の葉を制御」し、周辺環境に合わせた景色と明るさ感を採り入れる庭である。
都心部住宅地や郊外の町屋の街区では、敷地の細分化の進行により北向きの立地や隣家の隣接を余儀なくされた、快適な採光・眺望確保が困難な敷地が多くみられる。
快適な環境を求めて向きを変える植物の葉のような、周辺条件にアジャストできる「セラミックリーフ」を用いて、視線遮蔽や眺望確保の制御を行いつつ、リーフの反射を利用して室内の明るさ感確保を行う。
狭小化する住環境において、古くから良質な住環境として親しまれる「北向きの庭」をつくりだす装置である。
天候や季節による陽の光の変化と、植物の葉のように一枚毎に異なる、セラミック特有の柔らかい揺らぎを掛け合わせ、多様でやさしい表情と明るさ感をつくりだす。
銀賞
- 作品コメント
- 現代火鉢の提案。現代的な解釈と技術とともに、原始美術のようなプリミティブなエネルギーが根底に流れる、力強くも繊細なあかりを提案する。
セラミックには古代より脈々と流れる大地の記憶が潜んでいるのではないか。惑星の誕生にみた大地の光は、今も煌々と素材の奥に輝き続け、私達の生活に寄り添っている。
セラミック素材の3Dプリンティング技術の使用を念頭に置き、自然が生み出した造形美を感じさせる繊細な構造体を生み出す。セラミック製の火鉢の内側で、炭の炎は力強くも穏やかな表情とともにインテリア空間に上質な記憶を紡ぐ。都市的なシーンではLEDを使用した照明器具として、澄み切った輝きをまとう。
古代から夢見た、根源的かつ繊細な「あかり」を現代の技術によって生み出した。
MINOMO(ミノモ)
須田伸一、衣袋宏輝、樋渡常司、村山雄太
- 作品コメント
- 『美しい光景をつくるコト』
人口灯は生活をあらゆる面で豊かにしました。
現代の生活において、人口灯は効率良く、合理的に働く事を可能にするツールであると同時に、人工灯が人間を働かせているとも感じます。
情報過多、故に人口灯に照らされ続ける私たちが求める光とは?
可能であれば、目を閉じていたいとも願う、現代の生活が求める光とは?
私たちは『ろうそくの火の揺らぎ』や『みのもに映る月の影』のような、コントロールしきれない美しさや儚さを含む光だと考えました。
作品は透光性の陶磁素材をベースに「光×水×振動」の要素を用いて作りました。
目には見えない音を可視化し、水面が踊る光景を作りました。
当たり前になってしまった光の価値。改めて光を眺めるという行為をこの作品で促したいと思います。
『みのもが踊る光の波』を見て知的好奇心を呼び起こせればと願います。
- 作品コメント
- 忙しい毎日、香とあかりで照らし出される煙の揺らぎを眺め、好きな音楽でゆったりと過ごしていただける香皿です。お持ちのスマートフォンのLEDライトを点灯させ、ライトが上を向くようにスマートフォンを置きます。香皿を貫通穴からライトの光がでてくるようにスマートフォンの上に置き、お香を焚きます。
あかりに照らされた煙の揺らぎと香りが忙しい日々の暮らしを彩ってくれます。気分に合わせて、スマートフォンにあるお好きな音楽で楽しんで下さい。
入選
- 作品コメント
- セラミックの触れたくなるような質感、製品のほとんどが角のないデザインをしています。それらに着目し、硬いけど柔らかそうな素材感を、卵型という形状で表現しました。「彩る」ということは「なくてはならいものではなく今あるものに面白みや趣を付け加える」ということである。そこで、くらしに寄り添ってはいるが、なくてもよいものに焦点をあてることを、彩りを加えることとしました。強度、耐熱性、劣化しにくさなど、数多あるセラミックの特性。これら、生活の中での必然的な機能の中では、彩りは生まれないと考えました。本来セラミックに求められる能力とはまた別の能力を利用することで、セラミックの可能性を引き出せると考えました。そこで今回我々は、割れるという性質に目をつけ、デザインに取り込みます。割るという非日常的な行動を創り出すことで生まれる「彩り」が、新たな暮らしに寄り添うでしょう。
- 作品コメント
- 谷崎潤一郎が「陰影礼賛」の中で記したように、日本人は古来より、太陽の光が生み出す陰影を大切にしてきました。
INEI TILEは、そんな陰影による新しい価値を加えた、壁面タイルです。
断面形状の違いにより、朝日を浴びると凛々しく、夕日を浴びると穏やかな表情が浮かび上がります。
現代人のこころ模様とリンクするこの表情の変化は、日々のくらしの中に新しい彩りを加えてくれます。
光が作り出す陰影に着目し、朝日と夕日それぞれに違う表情を持たすという当提案は、一万年以上続くセラミックという素材に新たな価値をもたらす、発展性を秘めたデザイン提案です。
- 作品コメント
- セラミック独特の繊細さを活かし、ペンダントライトをデザインしました。
セラミックの厚さをコントロールすることにより柔らかなグラデーションの光を放ちます。
消灯時も美しいフォルムが空間のアクセントになると共に、日中も室内の明るさによって様々な表情を見せ、ダイニング・カフェ・レストランなど様々なシーンの空間を演出します。
木製の上部を開けソケットをずらすことで、電球交換などのメンテナンスも簡単に行えます。
また、不均一なセラミックの厚さを成形する新しい成形方法を提案します。
成形型の石膏の厚みを変化させ、石膏型の厚い箇所と薄い箇所の吸水率の差で着肉に差が生まれ、肉厚をコントロールすることができます。
タイトルの“tra fra”はどちらもイタリア語で「間」という意味で、セラミック、光、空間の全て「間」を大切にしたいという思いから名付けたものです。
自然と共鳴するセラミックス空間
川島祐輔、真銅恭子
- 作品コメント
- 自然界の変化を受信し、その変化の様子を表現する装置をつくれないだろうか、と考えました。原理はガリレオ・ガリレイによって考案された「ガリレオ温度計」と同じです。昼間の暖かい時間、ガラス管内のセラミックキューブ(浮沈子:ふちんし)はやや低い位置にあり、日光に照らされて、ランダムな影を地面のセラミックスタイルに投影します。時間が経過し、夜になると気温が低下して、ガラス管内のキューブが上昇を始めます。それと同時に、昼間の日光を吸収した畜光セラミックスで構成されたキューブが発光を始めます。
この場所は森に囲まれています。森は秩序と無秩序の両面を持っています(ボロノイ)。その連続性をこの空間に込めました。
今回、浮沈子(キューブ)はシンプルな正四面体ですが、あらゆるデザインを施す事が可能です。
- 作品コメント
- この作品は、指輪を外した際に特定の置き場がなかったことから紛失してしまった私の経験から生まれました。
作品名であるIze(イゼ)の由来は、【明らかにする/物を特徴付ける】という意味を持つCharacterizeからきており、Izeの部分を採用しました。
上記のコンセプトから、指輪を置いたり人が近付いた際に本体を発光させることで、指輪の置き忘れを防げないかと考えました。そして、指輪の存在を光で意識付け、付け忘れや紛失も解決したいと考えました。
素材は、指輪をよく外す場所として水周りが挙げられる事と、大切な指輪を守る為に丈夫な素材を選びたいと思い、防水性・抗菌性・耐久性のあるセラミックが最適だと考えました。
デザインは、市販されているものの多くが女性向けであり男性は手に取りづらいと考え、ユニセックスなデザインを目指しました。
また、部屋のインテリアや夜間のルームライトとしても活躍し、くらしを彩ります。
- 作品コメント
- 以前私は沖縄を訪れた時、大量のサンゴの化石を目にしました。その時、直感的にサンゴの化石を使って間接照明をつくったら、キレイなものができると感じました。しかしサンゴの化石は法律で持出禁止となっており、実際につくることはできませんでした。
今回は上記のことから、サンゴ形状の磁器を積み重ねた間接照明を提案します。(1個のサイズは長辺60mm)
自由に積み重ねられランダムに組みあがった磁器がLEDの指向性を補い、光を拡散して豊かでオリジナリティのある空間を演出します。LEDを採用する事により、磁器が高温になるのを避け、安全性が高いです。電源はスイッチなど利便性を考えてコンセント式としました。
サンゴの磁器は石膏型で成型するデザインとしましたが、手づくり品でも良いと考えています。また、素材については現段階では磁器で考えていますが、透光性陶磁器などを使用してもおもしろいと思います。
- 作品コメント
- 「くらしを彩るあかり=空間を豊かにするあかり」
優しい光を表現したいと思いました。
パッと思い浮かんだのは、アヒルの口に似た緩衝材。
光を柔らかいもので包み込むことで、柔らかでまろやかで心和らぐ優しい光にならないかなと。
まず一つ一つのピースを焼きあげます。
その後、卵型の外形に固定し、二度焼きをしてシェードの形に成形します。
焼成後の一つ一つのピース形状に関しては、ある程度、偶然性に委ねることを考えています。
100%思い通りにコントロールするのではなく、最後の部分の許容値を広げる事により偶然が生み出す、不規則な美しさを引き出すイメージです。
ピースの形が不規則で不思議な形をしている分、お互いの形が良い意味で干渉し、光を緩衝してくれます。
床に落ちる影は儚い木漏れ日のように。
空間を柔らかく優しい光で満たし、より豊かにしてくれる照明器具ができました。
- 作品コメント
- 「卓上の美術館」
私たちは日々の暮らしの中で、思いがけない美しいものに出会う時がある。
道ばたの花、河原の石、卵、りんご、桜貝、くしゃっと丸めた紙さえも人によっては美しく思い、大切にとっておきたくなることがあるだろう。
そんな日常に見つけた些細な喜びを、ゲストに紹介したいときや、居住空間に飾っておきたいとき、この照明を灯せば、卓上に展示空間としての空気が生まれる。
セラミックの二重の輪で構成されたこの照明は、外側の輪に光源が、内側の輪には二つの穴があいている。
手前を照らすスポット光から、輪の内側全体を照らす全光まで、任意の光になるまでゆっくりとずらすことでアナログなスイッチの役割を果たしている。
二つの重たい輪をそっと動かし、光をそそがせたり、包み込ませたり。
まるで小さな美術館のように、ものを美しく照らす。
くらしを彩るあかりとは、人の人生の彩りをささやかに照らす、あたたかなひかりなのではないだろうか。