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2021/02/12 10:00
第43回 公募「写真新世紀」
写真・フォトコン
応募者数:2002名
受賞作品数:7点(佳作を除く)
主催:キヤノン株式会社
グランプリ
some things do not flow in the water
樋口誠也
作品コメント(一部抜粋)
今回の映像作品は、シンガポールに滞在して制作しました。映像は二つの画面で構成され、左は私自身がシンガポール国内で撮った写真と共にシャワーを浴びる映像です。シャワーを浴びることで写真のインクが剥がれ落ちていく様子が撮影されています。右側の映像は、インクの剥がれた写真を見ながら、空白になった部分に何が写っていたのかを思い出しつつ語る映像で、これら2画面を並べて一つの作品となっています。
作品の主題は「写真と記憶の関係」にあります。さらにいうと、写真に写っているものと、記憶として覚えているもの、どちらが過去の証拠となり得るのかという問いでもあります。写真と記憶の関係から、証拠と事実の関係について考察を行ったものです。証拠がなければ事実も消えてしまうのか、うその証拠があれば事実も書き換えられてしまうのか、このことに疑問を感じていました。
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優秀賞
M
金田 剛
作品コメント(一部抜粋)
この作品は、架空の天文学者「M」の軌跡を巡り、過去の真実と天文学に思いを馳せるというものです。
私はある日、とある天文台の資料室に展示されていた1枚の古い天体写真を目にしました。写真乾板に写る星々を備え付けのルーペで見たとき、過去に天文学者が見ていた光景を、私が今、写真を通して同じように見ていることに気がつきました。それは、まるで知らない誰かの記憶を辿っているような感覚でした。この天体写真はいつ、どこで、どのような人物によって撮影されたものなのか、不透明な存在である天文学者に対して想像をかき立てられたことを起点に、私はリサーチに基づいた作品の制作に取りかかりました。
19世紀に写真術が発明されてから天文学の研究分野が飛躍的に発達したという歴史的背景があります。写真前史における一般的な天体観測方法は、望遠鏡などを用いた肉眼での観測を通してそれを手描きでスケッチするというものでした。
…
普遍的世界感
後藤理一郎
作品コメント(一部抜粋)
私は、街中で誰もが目にする普遍的な景色を撮影の対象としてきました。つまらなさと面白みの間にあるような、なぜか二度見してしまうけれど、誰かと共有してこなかった、あるいは誰とも共有できないイメージとは何なのかを自分に問い続けながら、気づけば5年間、毎日撮影を続けてきました。
私たちの心の中には、何か「面白疲れ」があるのではないかと思っています。スマホを開けば人や風景が洪水のように目に飛び込んできて、どんなに面白い何かを提供されても、もはや何が起こっても感動しなくなっているような時代の気分を感じています。たとえ海外の壮大な光景を目で見ても、画像のほうが綺麗なのではないかと思ったり、SNSで面白いといわれている人が尖った発言をしても、1時間後にはすっかり忘れていたり、決定的瞬間といわれるものを見ても、「ああ、“そういうやつ”だよね」と思ってしまったり。
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The Summer Grass, or My mother's eyes through her last 15 years
セルゲイ・バカノフ
作品コメント(一部抜粋)
このプロジェクトは、その名前が示すとおり、私の母の思い出を題材に取り上げたものです。
2018年、その数年前からアルツハイマー病に冒されていた母は、突然、この世を去りました。私が撮影してきた写真の中には、かつていろんな場所で両親を撮影した写真もあります。膨大な数の写真の中に、両親の写真も数多く混じっていたのです。
では、どのように写真を選んでいったのかをご説明しましょう。
たとえば、これらは2008年の夏に、ある村で撮影した写真です。この中から1枚を選びました。なぜこの1枚なのか。特に理由はありません。直感ですね。このように1枚1枚チェックして選ぶ作業を、撮影年ごとにすべての写真で行いました。
写真を選んでいくうちに、自分がデッドスペース(心理学でいうバイアスの盲点)にはまってしまっていることに、ふと気づきました。
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写真が写真に近づくとき
立川清志楼
作品コメント(一部抜粋)
「写真が写真に近づくとき」とは、写真と動画の違い、境界について、写真を動画にしたり、動画を写真にしながら考える作品です。4本の映像作品と、ブックを作成しました。
映像作品の一つ目は「写真の動画化」(9分)です。キューバの映像作家の「写真が2枚あれば映像ができる」という発言を聞いて、私は「写真が1枚でもできるのではないか」と考えました。この作品は縦型の写真の下3分の1をトリミングし、それをゆっくりと3分間かけて上に移動させていくというもので、この場で録った音声も加えています。これを3パターン作り、9分間の映像となっています。
二つ目も「写真の動画化」(4分)です。フレームを固定し、ピント位置を移動して4コマ連続撮影した画像に、音響を1コマごとに追加し、1コマ1/10秒、4コマを1セットとして1分間ループ再生しています。
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にちじょうとひょうげん ─ A2サイズで撮り溜めた、大阪府高槻市・寺田家の品々 ─
宮本博史
作品コメント(一部抜粋)
私は様々な人たちが今ここに存立しているということに関心があります。存立とは、存在し成り立っているという意味です。これまで身近な事柄や、誰もが生まれながらに所属するコミュニティである家族などを通して、存立に関する様々な作品を制作してきました。
今回の作品の寺田家の方々は、日常生活で生まれたものを捨てずに保管してきました。なかでも、ご家族の皆さんが作られた様々な作品がたくさんありました。また日記や手紙など暮らしの記録となるものもあり、それらを一時的にお借りして撮影しました。
父・ノリオさんは夏になると玄関先で蚊を退治するのですが、その数を日々カウントし、折れ線グラフにまとめています。メモ用紙には「正」の字がいくつも書かれ、蚊の数が正確にカウントされています。3年間で4033匹を退治したそうです。
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馬の蹄
吉村泰英
作品コメント(一部抜粋)
僕は、自分と自分の周囲にいる人たちを撮っています。後は時々身のまわりのものを撮ります。知らない人は撮りません。飛躍するほど関係のないものも撮りません。
僕は、自分がどうあるべきか、自分の周りにいる人がどんな人で、自分が見ているものは皆が見ているとおりに写っているのか気になるから写真を撮ります。
セルフポートレートを撮るとき服を脱ぐ必要があるのは、男性性を写真にちゃんと写すためであり、真正面を向いた写真を撮るのは、自分は真正面にこそアイデンティティがあると考えるからです。カメラというのはシャッターボタンを押すことでレンズの先にあるものが写ります。写すのではなく向こうからやって来るものなので、僕もカメラをセットしたらレンズの中に飛び込みます。カメラを三脚に据えて構図を作り、自動でシャッターが切れるよう設定して画面の中に飛び込むのです。
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公式ホームページ
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キヤノン
公募「写真新世紀」
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