結果発表
2018/03/26 10:00

第24回 ユニオン造形デザイン賞公募

応募作品数:120点
受賞作品数:11点
主催:公益財団法人ユニオン造形文化財団
※ここでは、上位6点をご紹介します

最優秀賞

屋台の風を吹かす街角の給水櫓
鈴木翔之亮(横浜国立大学大学院 都市イノベーション学府)
屋台の風を吹かす街角の給水櫓
作品コメント
「屋台の風が吹けば街が踊る。」新しく慣用句と共に新しい繁華街の風景を提案する。今日の近代化と共に我の生活を支えてきた繁華街が現代へと進化する過度期にいる。戦後の闇市をルーツとする池袋西口の繁華街は戦前には農村を形成していた。それは地名からも分かる様に水資源が地下に眠ることをさす。懐古的だが現代的な繁華街内を廻る屋台とそのドッグを包容する街角建築が、この地の豊かな水資源の可視化、土着的な民の居場所の形成を促す。街角に屋台の風を吹かす建築は、繁華街の中心的な広場として祭りやストリートカルチャーと結びつき、やがてこの地に住まう楽しみを与えるインフラとなる。また既存のプログラムと複合することで現代の同時性における新たな価値を創出する。屋台と祝祭の時間的、動的要素が織りなすことで唯一無二な場所となり現代の新陳代謝といえるような風景がこの先の未来へ向かって心身的に支えるよう建築となった提案である。

優秀賞

浮遊する伽藍
菅野正太郎(mi Co.)
共同制作者:園家悠司
浮遊する伽藍
作品コメント
寺は本来、寺子屋、施療、駆け込み寺といった地域の生活インフラとして存在していた。都市において閉塞感をもたらしている木密地域と寺町の境内に着目する。「生活インフラ」を都市に開き、寺町を核とした領域の再編を考える。東京の寺町は、近世・近代を通して寺本来の日常生活の受け皿としての役割が失われていった。木密と境内を使いながら、寺本来の生活の受け皿としての役割を構築する。境内の敷地に仮設建築を建てる事で、木密を建て替えることを計画する。境内の表裏が変化する中で、街区一体を大きなまとまりとしていく。新築として計画する2Fの長屋は、最小限の「生活スペース」を備えた集住。1Fは賃料を通して地域で共有可能な風呂/食堂/工房/土間などの余剰としての「生活インフラ」を設ける。長屋の大屋根は境内の空間を囲いつつ、1Fにおいて境内は開かれる。既存と境内の見え隠れする関係が一体となった複合的な伽藍が都市に広がる。
連担のすゝめ
野本壮太(京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 建築学専攻)
連担のすゝめ
作品コメント
かつての京都の町は豊かだった。道に集い、細長い敷地を住みこなし、小さい緑を寄せ集め、何よりコミュニティの一員としての自覚を持っていた。しかし現代人は個に執着し、効率を追い求めた。その結果、建築は敷地境界から距離を取って閉じ込もり、かつての普遍的で都市環境を連担する建築様式は薄れ、分断された緑がビルに挟まれ一人寂しく佇むばかりである。また、車社会の代償として、両側町のコミュニティが希薄となり、個への収束は加速するばかりである。そのような現代社会に生きる人々が少しずつ与え合うことで生まれるコミュニティの形。かつて社会に通底していた「京都」という意識を取り戻すためのインフラストラクチャー。

佳作A

主体(不)在の庭
鈴木 俊(東京理科大学 理工学研究科 建築学専攻)
共同制作者:國分元太
主体(不)在の庭
作品コメント
都市に、植物が主体性を獲得した庭をつくることができるだろうか。計画され、管理された植物たちは、環境配慮というステレオタイプへの免罪符として乱用されている。これからの都市に緑を本当に戻したいのならば、都市を野生の植物に委ねる態度が必要だ。一方、「車」のいない「駐車場」や、「住人」のいない「住宅」といったような「主体不在の場」が都市には多くある。そのような場は将来的に放棄されていくであろう。そんな、放棄されていくであろう場所が、野生の植物たちのインフラとなるように操作を加える。「住宅の屋根を剥がす」「歩道橋の片方の階段を撤去する」といったように、場の構造は残しながら機能を無効化することによって、その場所は人の手から放棄され、植物がやってくる余白が生まれる。野生の植物は人の手から逃れたところに現れ、野生の植物に溢れた場所は、人のための庭ではなく、この惑星のための庭となる。
百年復興住宅
横山大貴(日本大学大学院 理工学研究科 建築学専攻)
共同制作者:藤井将大、佐藤千香
百年復興住宅
作品コメント
熊本地震で被災した西原村古閑地区は29世帯の人々が農業を営みながら暮らしていましたが、現在多くの人々が集落から離れた仮設団地での生活を余儀なくされています。大自然の脅威を前に、生活道路の寸断による復旧作業の遅れや中止など生活インフラの脆弱性を露呈した被災地では、既存のインフラに依存しない自律的なインフラの在り方が求められているのではないでしょうか。そこで阿蘇山と俵山の麓の集落として石灰が多く含まれた地質を利用した版築構法による土着的な復興住宅群を提案します。施工段階から住民や左官職人を巻き込み、住宅群として整備された後は役目を終えた住戸から蔵や観光資源など用途変更を繰り返し、災害復興住宅の外形が残された微地形として少しずつ自然へと還っていきます。西原村のコミュニティを紡ぎながら五年、十年、百年と震災復興までの未来を見据えたライフラインとしての復興住宅を提案します。
Basement City
渡部総一郎
Basement City
作品コメント
斜面住宅地の基礎を、パブリックな動線空間としてつなぐことで、バリアフリーなひと繋がりの回廊を提案する。計画地は横浜市のある斜面住宅地。本提案では既存の空家を解体し、基礎の土を取り除き(再利用)、その跡地に緩やかなスロープと小さなエレベーターを備える住宅兼公共空間を点在させ、斜面底部と頂点を車なしで歩いてまわれる動線を通す。これまで動線としてはあまりに急勾配で狭隘な坂路地は位置エネルギーを利用したサスティナブルなコミュニティスペースとして生まれ変わる。住民の生活圏は拡張し、やがてひとつながりの基礎空間は斜面地で生きるための生活基盤となる。
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