結果発表
2015/04/14 11:15

第21回 ユニオン造形デザイン賞公募

応募作品数:113点
受賞作品数:10点
主催:公益財団法人ユニオン造形文化財団

最優秀賞

建築に植物を生けるように
林 拓真(東京理科大学大学院 理工学研究科 建築学専攻) 共同製作者:花摘知祐、村松佑樹
建築に植物を生けるように
作品コンセプト
本計画は植物を主体とした植物の為の建築を設計します。私達は「花瓶」と「花」の関係に着目しました。これらは人工物と自然物でありながら互いに一体化しています。これは花瓶が花の為に造られているからこそ一体化を保っているものと考えます。建築を植物主体で設計することで無理なく植物と建築を繋ぐことができるのではないでしょうか。そんな植物の為に出来た建築に人が住まい、緑や地面を感じながら生活します。そして植物の為の建築が人の為の建築になるように設計を行いました。

優秀賞

木の建築
田山勇輔(近畿大学 産業理工学部 建築・デザイン学科 デザイン専攻)
木の建築
作品コンセプト
木全体を見ると生命力を感じるが、部分を切り取って見ると、構造体のような、オブジェや遊具のような物にも見える。木を部分的に別け、物として捉える事で植物が建築に溶け込み、また新たな植物との出会いが生まれると考えた。木は桜、びわ、いちょう、松を4本ずつ植える。春・夏は花が咲き、実がなり、秋・冬には葉が落ち、季節により建築の表情が変わる。
屋根の根 -Roof of Roots-
堀次宏暢(福井大学 工学部 建築建設工学科 建築学専攻)
屋根の根 -Roof of Roots-
作品コンセプト
屋根はなぜ屋の“根”なのでしょうか。私はそこに建築の根元を感じました。屋根があることが建築を建築として成り立たせていて、屋根が自然に近づいていくことで自然と建築が一体化されるのではないかと考えました。木と木の間の地面を掘り、できた穴に竹の棒を架けていきます。長い年月をかけ竹の筒の中を木の根が伸びていき、根と根がからみ合い成長します。やがて根は竹の筒を破り、インド・チェラプンジの「生きた橋」のような“屋根の根”が現れ、とどまることなく成長し続け、より美しく、より強くなっていきます。建築を緑化するのではなく、建築と緑化が並行して進みます。いつの間にか人は自然に覆い被さるように土地を“根切り”し、その上に人工物をつくり上げていきました。自然に対して上から目線の建築が波にのまれ、灰を被り、土砂に押し潰されることを知った私達は、もう一度自然に謙虚に向き合った建築を目指さなければいけないと考えます。

準優秀賞

器の森 -Utsuwa no Mori-
平川慧亮(北九州市立大学 大学院 環境工学専攻)
器の森 -Utsuwa no Mori-
作品コンセプト
建築を緑化することは建築が人間だけの住処でなくなることを意味するのではないだろうか。
そこで、植物を植える事と建築を計画することを同時に考える。
器の「表」を植物の住処として計画した。
湾曲の形に植物が集まり、森のような景色が現れる。
器の「裏」は大地の間に潜り込むような人の住処をつくる。
自然だけの景色でも、建築だけの景色でもない、自然と建築の間のような景色を作り出す。
廃屋緑化
猪邉将志(藤田社寺株式会社)
廃屋緑化
作品コンセプト
一度提出を諦めた僕に一本の電話がかかってきました。家から一時間ほどの山の手前にある集落の民家です。奥様亡き後七年間放置された豪邸。一部は解体され、そこで時間がとまっていました。車をおりて階段を上る。僕の目にうつったそれは、この一か月間考え抜いたどんなものよりも緑化しているように見えました。廃屋とは何か違うし、ツリーハウスでもない。なにせ、半年前に僕が建具をほとんど解体したものだから、いろんな動物やら植物やらが入り乱れている。これが緑化なのかなんなのか、今ひとつわかりません。断面をかくと、何の変哲もない古民家でした。でも廃屋でもない、きれいなツリーハウスでもない。車でいうなら1949年製のインパラのような泥臭さの中にある美しさをうまく表現したくて、でも仕切れなくて、仕方がないから書きなぐりました。これが緑化なのかなんなのか、どう見られるのかに期待しながら提出します。ありがとうございました。
動的平衡の暮らし
額賀俊成(東京大学 大学院 工学系研究科 建築学専攻)
動的平衡の暮らし
作品コンセプト
自然が切り離され人工物で囲まれた現代都市に、植物と人間生活が相互に影響を与え合い、保たれる動的平衡のもとで、自然と人間の関係性を取り戻す豊かな建築を考える。
0、初期条件:場所ごとに異なる厚みをもった土の屋根を設える。熱容量が場所ごとに異なり、暖まりやすく冷めやすい、暖まりにくく冷めにくい、といった環境のゆらぎが生まれる。屋根に植物は育ち、屋根の下部で人間の生活が営まれる。1、人間生活のパラメータ:時間や季節によって使われる場所が変化し、それによって室の温度と上部屋根の土壌温度が変わり、植物の育成環境にゆらぎを与える。2、植物のパラメータ:時間や季節によって植物の様相が変化し、屋根に直接あたる日射量が変化する。土壌温度、下部の室温度が変わり、人間の生活環境にゆらぎを与える。初期条件のもとで、これらが絶えず相互に影響し合いながら、両者にとって良好な環境を作り出していく。

奨励賞

木と生き、死ぬ建築
小林岳史(名古屋芸術大学 デザイン学部 デザイン学科 スペースデザインコース)
木と生き、死ぬ建築
作品コンセプト
この建築は人類と自然との関係を表しています。木が枯れれば傾き住めなくなるこの建築と同じように、地球規模で考えてみても自然を枯らせば人類は生きられなくなります。人類は自然から恩恵を受け、また運命も共にしていることを考えると建築緑化においてもまずは人類と自然の関係を明確にして、それを形にする所から始める必要があると思い、木に支えられる家・人に支えられている木という形で表現しました。
大地は広がり、建築は根を張る
安田諭史(神戸大学 大学院 工学研究科 建築学専攻)
大地は広がり、建築は根を張る
作品コンセプト
植物は根を張り、土から養分を吸い上げ、朽ち果てた葉は、肥やしとなり、土に還っていく。大地は水を浄化し、養分を蓄え、生き物に生命を宿し、豊かな環境を創ってきた。しかし、私たちは建築の表面にとってつけたような緑を貼り付け、宙に持ち上げられた植物は大地から離れ、アスファルトで覆われた都市では根を張ることもできず、雨水も大地に還ることはできずにいる。植物と大地の繋がりを取り戻すことで、人と植物と大地の関係を再構築し、地球本来の多様性を許容した豊かな生活を取り戻そう。人々を取り巻く環境において、建物が建てられることは地表面が減るのではなく、そこに立ち上がる建物の表面積のすべてを地表面として捉えると緑化の方法は変わってくるのではないだろうか。新たな地表面を大地と直接つなげ、建築そのものがプランターになる。緑化と建築という一見相反するものが一体となり、自然と人工が均衡関係をつくる。
校器 プランテーション
大和田 卓(東京大学 大学院 工学系研究科 建築学専攻) 共同製作者:吉野わか子
校器 プランテーション
作品コンセプト
本案はプランターとなる木材を校木として利用した校倉つくりの住宅である。水平にのびる木材の中から植栽たちが顔を出す。木とそこに植えられた植栽とが積み重ねられ、住宅の立面を構成する。切り出され、建築の一部となった木材が、生きた植栽を迎える新たな器となる。
校倉造りは交互に積み重ねられる木材の交差部に彫り込みを加えることで、水平材としての木を使った強固な壁面を実現する。本案ではこの彫り込みの深さを小さく抑えることで、木材間に隙間をつくり、そこに植物を植える。水平に積み重なった校木プランターでは、様々な高さに植物を植えることができるが、それらは住人の手の届く範囲であり、住人は少し腰を屈めたり、手を伸ばすことで水を与えることができる。住宅の中の生活は、植物を育てる人の手によって植栽を通し建築の顔となる。建築と植栽、人の生活と植栽たちとの関係を新たにつくりあげる。
朽築 ~侵略する植物と抗う建築物~
田中和希(工学院大学 大学院 建築学専攻) 共同製作者:棚橋風太
朽築 ~侵略する植物と抗う建築物~
作品コンセプト
シメコロシイチジクという植物は、数百年かけ宿主を侵略するかのように巻きつき、絞め殺しながら成長する。たとえ宿主が朽ち果てようとも自身は自立したまま成長する。
そこで、本提案は侵略する植物と宿主(建築物)との関係に新たな建築緑化の可能性があるのではないかと考え、提案する。
建築物の構成として不変のイエガタとそれを支える人工的木材の躯体がある。数百年の時間の中で人工的木造は朽ち、構造としての役割を果たさなくなるが、シメコロシイチジクの自然的木造が代わりの構造体となり不変のイエガタを支える。その時にイエガタは建築物を建築物たらしめる役割があり、変化せずに、侵略しようとするシメコロシイチジクに対して抗っている。
侵略する植物とそれに抗う建築物、そのありさまが建築緑化のひとつの関係ではないかと考えた。つまり、建築緑化とは建築と自然が抗っているさまなのかもしれない。
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