第5回 新千歳空港国際アニメーション映画祭
応募作品数:2092点(短編:2043点/長編49点)
受賞作品数:22点
主催:新千歳空港国際アニメーション映画祭実行委員会
※ここでは、主に5点をご紹介します
短編グランプリ
- 作品コメント
- 時空間を超えて行われる、個々人と彼らの創造の旅。あらゆる行動は当の本人だけに意味を持ち、太陽系の視点から見るとなんてことのないものだ。混沌を美しく宇宙的なものとして受け入れることの憂鬱さについての作品。創造への情熱を、アニメーション技術自体のユニークで遊び心のあるテクスチャーから感じとることができる。
- 審査コメント
- おそらくこの世界は、ユニバース(単一の宇宙)というよりはマルチバース。かたち、色、音が舞う、魔法のような世界。踊り、発見し、自分自身の世界を作り上げるキャラクターたちは、この作品を作り出した作家そのものです。あらゆる出来事が、平穏さ、喜び、強烈な優しさと共に起こります。あらゆるものが、それよりも大きな何かの一部です。時間も空間も、この世界では、固有のロジックとダイナミズムを持っています。
日本グランプリ
秋 アントニオ・ヴィヴァルディ「四季」より
和田 淳
- 作品コメント
- 拝啓 ヴィヴァルディ様
まずはあなたの音楽に勝手に映像をつけてごめんなさい。そしてその映像も、こちらの勝手な解釈で、あなたの想定していないであろうカワウソなどのいろんな動物を登場させてしまっています。でも、秋を舞台に人間の営みを描いているこの曲を映像化するにあたり、私はどうしても動物を登場させたかったのです。人間も動物も、狩る者も狩られるも者も、夢も現実も、すべてひっくるめた「秋」を描きたくなったのです。どうかご理解ください。敬具
- 審査コメント
- この賞は、私たち皆が知っていて、愛してもいる彼自身のスタイルの本質に忠実でありつつ、自分自身を「再発明」することができた作家に与えられます。この作品の上映の間、驚きと喜びとで、私たちは微笑みつづけ、全会一致で、以下の結論に達しました。秋こそが、最も美しく、エキサイティングであるがゆえに、顔が思わず溶けてしまうような季節である、と。
新人賞
- 作品コメント
- ずっと一緒にいたい親友と、子供時代最後の夏休みを家の周りで過ごしている。夏が進むにつれて、彼らの体は変化し始め関係はギクシャクしたものへと傾いていく。思春期は彼らの絆を断固邪魔するかのようだ。
- 審査コメント
- 透明な素材に描かれた二人の少女の表現が、新しい可能性の開花を感じさせました。彼女らの透明な身体は、文字どおり透き通るような純粋さを表現しています。しかし同時に、その身体が触れあうとき、透明な身体の内部に隠れる、生々しい肉体のうごめきが現れてきます。そしてその肉体は思春期の彼女らを不可避的に大人へと変化させてゆき、彼女たちの関係もギクシャクしたものへ変わっていってしまいます。そのような、思春期の繊細な物語と、実験的な表現手法が分かち難く結びついた、とても力強い作品です。
長編グランプリ
This Magnificent Cake!
マーク・ジェイムス・ロエルズ、エマ・ドゥ・スワーフ
- 作品コメント
- 19世紀後半、植民地時代のアフリカを舞台にしたアンソロジー作品。5人の異なるキャラクター ─ 問題点のある王様、高級ホテルで働く中年のピグミー、遠征に失敗したビジネスマン、彷徨う荷配人、若い脱走兵たちの物語。
- 審査コメント
- 審査会議を経て、私たちは全会一致で、この作品を選びました。純粋な創造性、夢とそこからの目覚め、そして完璧なる美的成熟・達成といったものに興奮させられました。不条理映画と冷酷な風刺を興味深いかたちで組み合わせたこの作品は、西洋の歴史上最も闇深い部分を描いています。完全に咀嚼しきるためには多くの時間が必要であろう、この重要かつ挑発的な映画を作ってくれた監督たちに、感謝の念を示したく思います。
審査員の一人、冠木佐和子さんが、この作品の監督たちについて語った言葉を引用したいと思います。「こいつら、頭いいし面白い。なんでも持ってるじゃん。嫉妬する。こいつらになりたい。」
学生グランプリ
Snow White Cologne
アマンダ・エリアソン
- 作品コメント
- 私の妹が経験した麻薬中毒との闘いと克服を映像詩として描く。ここには愛と喪失、善と悪がある。私は何も裁くことなく妹の物語を伝えたかった。それゆえに、「薬物中毒」という難しい主題について、その病気の問題の事実を直接的に伝えるのではなく、詩的かつ感情的なやり方で取り上げようとした。
- 審査コメント
- 若々しい創造力に溢れたサイケデリックな映像、ダイナミックな表現力。それでいて切なくなるほどに詩的で、繊細な美しい作品。観ていて心がヒリヒリしました。