結果発表
2017/11/27 15:00

第17回 学生限定・立体アートコンペ AAC 2017《学生限定》

応募作品数:117点
受賞作品数:11点(入選を含む)
主催:株式会社アーバネットコーポレーション

【特集】若手作家の登竜門「学生限定・立体アートコンペ AAC 2017」最終審査会レポートhttps://compe.japandesign.ne.jp/special/2017/11/31923/
AAC2017 受賞作決定の裏側を徹底レポート! 今後の応募の参考になる情報も満載です。結果発表と合わせて、ぜひお読みください。

最優秀賞

Waterfall
金 俊来(京都市立芸術大学 大学院 漆工専攻)
Waterfall
受賞コメント
この度は最優秀賞をいただき、すごく嬉しかったです。
2015年から3回目というチャレンジで、学生として挑戦できる最後の機会に、良い作品について渇望したのが、良い結果に現れたと思います。
漆といえば伝統工芸のイメージがあります。今回の受賞がきっかけで漆の新たな可能性について、少し道が見えたと考えられます。
今回の経験を基に、さらに発展した姿をお見せできるように頑張っていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
審査コメント
金さんの作品は漆と螺鈿を使い、伝統的な技法の中に現代的な感覚を取り入れて、重厚感と清涼感を兼ね備えた点が高く評価されました。
黒蝶貝という海のものが都心の都会のマンションに来るということ、日本の伝統工芸である漆と螺鈿細工いう手法。Waterfall(滝)というテーマ。
「都会のマンション」というと無機質な感覚に捉われるのですが、この作品があることによって生命感や自然の光の美しさであるとか、そういう感覚が空間を支配しており、それがすごくポイントになったのかなと思います。
今回の作品の設置場所ともうまくマッチしていて、マンションエントランスを飾るのに相応しい作品ということで審査員一同一致しました。

優秀賞

Heterogen
後藤 宙(東京藝術大学 大学院 美術研究科 先端芸術表現専攻)
Heterogen
受賞コメント
今回はこのような賞をいただき、誠に光栄です。
AACに挑戦して4年目でやっと入賞者として実制作できることになり、持てる力を尽くして制作をしました。
しかし最優秀賞には手が届かず、悔しい気持ちも大きいです。
この悔しさをバネにまたいい作品を作れたらいいなと思います。
審査コメント
後藤さんの作品は鉄板をレーザーカッターで加工したものですが、分子構造とワイヤーの曲線が非常にリズミカルな感覚を生み出していて、見ていて飽きない魅力と豊かさをたたえた作品として注目されました。
抽象的でもあり、有機的でもあり、宇宙の要素や、生命体の細胞の存在まで想起でき、コンセプトと作品そのもののクオリティーに集約された、秀逸名作品でした。
Starting from white
土井彩香(東京藝術大学 大学院 美術研究科 彫刻専攻)
Starting from white
受賞コメント
自分の研究素材である石材を使い制作を行っていますが、どうしてもネガティブなことを言われることが多くこういったコンペティションにも不向きなのではと考えるようになっていましたが受賞によりまたひとつ前に踏み出すことができそうです。最優秀には届かなかったものの、とても充実した制作内容でした。
そして空間に適した作品を制作するということは改めて難しいなと思いました。
今後も様々な表現で制作を続けていきます。ありがとうございました!
審査コメント
大理石を用いた土井さんの作品は清楚で気品のある佇まいとともに、あたたかなぬくもりを感じさせる点が高く評価されました。
難しい困難な道もあったと思いますが、やっぱり土井さんの持っているやさしさとフレキシビリティが表れていて、空間を美しく演出してもらったなあと思います。
技術力とコンセプトが結実した素晴らしい作品でした。
また何かの機会に作品を見せていただきたいと思います。

入選

New flower
高 瑞雪(広島市立大学 大学院 芸術学研究科 造形芸術専攻)
New flower
審査コメント
彼女の作品は、アーティストがいう「気配を彫刻する」というようにカタチで示された限定されたものだけが魅力ではなく、その表面の素材の反射や透明感が周りを巻き込んで魅力あるものにしていこうというのが、とてもユニークです。そして、花という生活に彩りをあたえてくれるモチーフも、マンションのエントランスにふさわしく、日々の生活とつながっていくように思えます。
でも、手法的な実験ということもありますが、どこまで安定したフラジャイルではなく、かつ透明感のあるものを作れるのか、というのが疑問となるところでした。その部分をクリアして、独自の彫刻世界を作っていくことに注目したいです。(小山登美夫)
SYNC
西 毅徳(東京藝術大学 大学院 美術研究科 デザイン専攻)
SYNC
審査コメント
エントランスでの人の動きを曲線的なものとして捉え、作品の形態や光の反射をその動きと同調させるというコンセプト自体は面白いし、また、表現としての可能性を感じさせると思った。作品サイズはそのコンセプトをより有効に反映させた結果なのだろうが、アクリルという素材の特性も考え合わせると、やや過剰な感が否めなかった。コンセプトや発想には可能性を感じるので、不特定多数の人が出入りするエントランスという空間の特性、日常的なメンテナンスや耐久性なども考慮し、アクリル以外の素材を使用することも視野に入れて、表現の幅や可能性を追求してほしいと思う。(堀 元彰)
Re:Spiral
野下啓太(日本大学 大学院 理工学研究科 建築学専攻)
Re:Spiral
審査コメント
そこに暮らす人たちをエントランスで見送り、迎えるオブジェとして、気持ちを高めるように上昇するエネルギーがコンセプトになっている。設置イメージからはどこか神々しさを感じさせる一種の気品のようなものすら漂う。そうした印象はおそらく、いくぶん小ぶりにみえてしまう作品サイズと裏腹な関係といえるものだろう。見方によってはどことなく寂しく感じられるのも確かで、作品サイズにはややもの足りなさを感じた。コンセプトや素材との兼ね合いもあろうが、サイズをもうひと回り大きくするか、または、ある程度の高さの台座の上に設置する方がより効果的だったかも知れない。(堀 元彰)
Individual
小林絵里佳(東京藝術大学 大学院 美術研究科 彫刻専攻)
Individual
審査コメント
ステンレスのエルボーパイプを積み重ねることにより、反復性と集合体としての意味性をひとつのユニットとして表現している。そのパーツの内部には赤青黄色といった原色系の色彩がほどこされている。それは、マンションや集合住宅という、個々の部屋の集合体としての機能や性格と連動しているのである。
しかし、その固定化された概念が、両者にとっての課題であり、この場合は、全体とその部位の整合性のとれた関係が重要なのである。(三沢厚彦)
花好月圓
雷 康寧(東京藝術大学 大学院 美術研究科 彫刻専攻)
花好月圓
審査コメント
兎とバイオレットマグノリア、それが円環を形作る造形は、とても魅力的です。そこに月の光が降り注ぐ光景。情景としての彫刻を作り出す方法は、とても野心的であります。とても細かいディテールが重要な要素となり、そのため技法としては割と形をつくる自由度の高い磁器が選ばれました。その部分がちょっと懸念されます。
公共の場所での展示においては、そぐわない。やはり、安定感、強度というものを考えないとなと思いました。でも、この作品が何らかの機会に完成したら、ぜひ、見てみたいと思う力作になると思います。(小山登美夫)
可変立方態
小見 拓(東京藝術大学 大学院 美術研究科 彫刻専攻)
可変立方態
審査コメント
立方体の形状や展開態を基準とし、内部構造と外郭を持つ図形的モジュールとでもいえようか。この作品は可変することを想定した、複雑なメカニズムを備えている。小見にとって、科学やテクノロジーは作品化するために不可欠なものなのであろう。それは現代に生きる人々の環境であり、外郭であるともいえるのかもしれない。そうなると軸構造を持つ内部空間は何を意味するのであろうか。(三沢厚彦)
I FIORI
髙畑雅一(大阪市立大学 大学院 生活科学部研究科 居住学科)
I FIORI
審査コメント
ステンレス製の逆四角錐をベースにした造形は、花入れからの着想で、周囲や床の石材とのバランスや調和も見事で、「ロビーを華やかに演出する現代的な構成」としては申し分ない。全体的なスケール感やLEDによる光の効果も的確で美しく、洗練されたデザイン感覚にあふれている。
逆に、そのあまりに洗練され過ぎた感じが、かえって“作品”としての存在感を希薄にしてしまっているのが惜しまれる。
造形的なセンスには優れたものがあるので、そこに何かしら作者自身の強いこだわりや思い入れを感じさせる要素がうまく加味されれば、より一層すばらしい成果が期待できるだろう。(堀 元彰)
遠い部屋
野村絵梨(東京藝術大学 大学院 美術研究科 彫刻専攻)
遠い部屋
審査コメント
木彫で完成された「佇む」をみると、その不思議な空間に吸い込まれます。球体の中に空間を作り出す方法は、とてもユニークだと思います。今回のプロポーザルで疑問なのは、この部屋が、見る人にとって象徴的な空間になり得るのかということでした。そして、この球体という自分が発明した手法から離れて見ることも一つの方法ではないのか? 身体感覚と触覚、視覚を全て使って、入りこむような空間を見てみたいです。
でも、この作品が大理石でできたら、ぜひとも触ってみたいなと思います。空間に手を入れる感じ、それもまた面白いのかもしれません。(小山登美夫)
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