四国の南西部に位置し、豊かな自然と風土に恵まれた美しい宇和海に囲まれた愛媛県宇和島市。そこでは、日本有数の質と生産量を誇る宇和島真珠の養殖が行われ、養殖は宇和島市を代表する産業の一つとなっている。今回、宇和島市で行われている宇和島パールを使用したコンテスト「宇和島パールコンテスト」の入賞作品を展示する「シーラバーズ」展が西麻布のル・ベインで開催された。「シーラバーズ」とは真珠のブランド名である。
会場に入ると、2000個の宇和島パールを宇和海に見立てた作品に目を奪われた。【写真1】宇和島パールは宇和海で数年の年月をかけて大切に育てられ、私達が見ることができるパールはその中の約一割ほど、残りのパールは海に還されるという。その背景を知り改めて2000個のパールの中央に浮かび上がる一握りのパールを見ると、私たちパールの美しさに魅了されるのも納得できる。その他、会場には、宇和島パールの魅力を引き出す作品が数々展示されていた。
パールはフォーマルなスタイルに使われるジュエリーというイメージが強い。しかし、このシーラバーズ展では、日常的に親しめるアクセサリーや、生活に潤いを与えるアクセサリーなどが多く、パールの新たな可能性を示した。
「宇和島パールコンテスト」を開催したのは、宇和島地域ブランド化推進事業実行委員会。当委員会は、「宇和島パールデザインコンテスト」を開催し、作品を全国から募集し宇和島のPR、宇和島パールのブランド化をすすめた。(過去の受賞作品はこちら)
また、デザイン手法による地域活性化の講演会「うわじまデザイン塾(※1)」や、真珠ジュエリーデザイン・制作の実技研修「うわじまデザイン研究会(※2)」による人材育成事業など、多角的に宇和島地域の活性化に取り組んでいる。この取り組みには、JDN桑沢デザイン塾でも縁のある宇和島出身の薬師神親彦氏(薬師神デザイン研究所代表)が実行委員会のアドバイザーとして宇和島の活性化に寄与している。
宇和島パールの様々な取り組みを通して、市民のデザインへの意識・技術向上が深まるとともに、「宇和島パールコンテスト」は年々デザイン性の高いデザイン応募が増え、毎年4〜500点以上の応募がある。
2007年から始めたこの取り組みは、2010年度もコンテスト開催に向けて更なる活動を続ける。一方では、ジャパンブランドでデザイン性豊かな商品を送り出すため、新しい第一歩を踏み出す。自由な発想のデザインが製品として誕生し、新たな産業につながることを期待したい。
※1 うわじまデザイン塾
地域住民自らが、デザインを総合的に学習し、地域サービスの付加価値を高め、新しい産業の創出に向けた「売れるものづくり」を研究するとともに、「デザイン」の手法を取り入れた地域づくりを進めることを目的として発足。デザインの様々な分野における第一人者を講師に迎え、「地域活性化の切り札=デザイン」というテーマのもと、計10回の講演会を開催。
※2 うわじまデザイン研究会
地域資源である宇和島真珠を使ったデザイン力に富む新しい真珠のブランドづくりや新たな産業創出を目指し、専門的な技術を研究するため発足。固定メンバーによる研修を実施
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【1】展示会場風景
【2】受賞作品をパネルにしたもの
【3】展示は多くの人で賑わいました
【4】宇和島パールを宇和海に見立てた作品
【5】中央に浮かび上がるわずかなパール。実際、このわずかな数しか市場に出ることが出来ないという。
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