作品名
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『GLASS-SHIMMER-海に浮かぶ陽炎-』
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氏名
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中尾雄介・石原啓之・小澤康子(広島大学大学院)
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コメント 他 |
安芸の宮島 厳島神社 海に浮かぶ社殿 現世の竜宮城
太古の時代より宮島は人々に崇められ、推古天皇即位時(593年)に厳島神社の社殿が創建された。平清盛の時代には平家一門が社を崇拝し、時代の変遷とともに姿や規模を変えながら時の権力からの崇拝を受け比類なき建築様式と古来よりの文化を伝承し続けている。現代に残るその姿は古来からの日本の姿を思い起こさせそれは日本人のみならず、日本を訪れる人々にも深い感動をあたえ、日本の文化への道標ともなっている。満潮時には海中に沈む敷地をもつ社殿の浮き沈みを繰り返す様は誰もが心を奪われる。しかし、このような刻々と潮の干満で姿を変える安芸の宮島・厳島神社は近年さらにその姿を大きく変えつつある。
■PROBLEM
景観の破壊
《弥山--社殿?大鳥居》とつながる軸線の先の宮島口の風景は、風光明媚な宮島の景色を手中に治めようとする心無き現代人とそれを取り囲む建築によって破壊されつつある。宮島の大鳥居の朱色は、本来両軸の端の背景の自然の山々とコントラストを成し神聖な朱色としてこの景色に厳かな印象を与えてきた。宮島の対岸に林立する高層建物群はその色彩、形状においてこの景観を破壊している。
海面の上昇
厳島神社の社殿は満潮時には水に浮かんだようなその形態から、潮位の影響を大きく受ける。宮島が位置する瀬戸内海はここ数年異常潮位が続き、そのため厳島神社は水没による被害をこうむっている。その原因は複数が作用していると考えられ、ひとつには地球の温暖化現象が考えられる。温暖化現象の問題は瀬戸内海の異常潮位だけでなく、地球上のすべての海岸線で危惧されている現象でもある。その中でも厳島神社における潮位の影響の大きさは最たるものである。その厳島神社を有する周辺地域はよりこの環境問題に対して意識を高めねばならない。
■CONCEPT
ここでは、国宝等を有する宮島の「環境=景観」に主題をおき、宮島と厳島神社が抱えるこれらの問題に対してガラスの「陽炎」を提案する。
厳島神社の対岸に乱立するビルディング群のファサードを超弾性ガラスファイバーダブルスキンによって覆うことでガラスの「陽炎」をつくりだす。
テクノロジーの高度な進歩により生み出されたこのガラス質は、破壊された景観を「陽炎」のように緩やかに包み込み、ゆらゆらとその姿を変えながら新たな社殿からの風景を生み出していく。
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