【結果速報】東京ビジネスデザインアワード、2019年度の受賞が発表
東京都内の中小企業の持つ技術や素材などをテーマに、新規用途開発とビジネス全体のデザイン提案を募るコンペティション「東京ビジネスデザインアワード」。2月5日に2019年度の最終審査会(プレゼンテーション審査)が行われ、テーマ賞9件の中から最優秀賞と優秀賞が決定した。
最優秀賞に輝いたのは、プランナーの清水覚さんとデザイナー清水大輔さんによる「新規培養技術による『酒づくりイノベーション』」。優秀賞にはデザイナーの柳沢祐治さんによる「『段ボール加工技術』から生み出す明かりの防災プロダクト」、清水覚さんの「ものづくりをアップデートする新サービスの提案」がそれぞれ選出された。清水覚さんは、最優秀賞と優秀賞のダブル受賞となった。
最優秀賞のテーマを提供した株式会社セルファイバは、東京大学発のスタートアップ企業で、生きた細胞をまるで糸のように扱える「細胞ファイバ技術」を持つ。受賞提案は細胞ファイバ技術を応用して酵母を糸状のチューブに封入し、好きな飲物に入れることで手軽に酒などの発酵飲料をつくる、新しい飲料づくりビジネスの提案だ。飲料提案の受賞は今回が初となった。
提案を手がけた清水覚さんは、「細胞はその見た目から『食』とは結び付きにくいイメージがあるが、第三者へのヒアリングを綿密に行い、技術を含め一般の人々が受け入れられやすい形をデザインすることを意識した」と話す。審査員からは、革新的な技術をデザインにより人の心や生活にフィットさせ、花開かせた点が高く評価された。
優秀賞の「『段ボール加工技術』から生み出す明かりの防災プロダクト」はシェードのデザインバリエーションが豊富な組立式照明で、デザイナーの柳沢さんが自らの被災経験をふまえて提案。テーマ企業の坪川製箱所はこれまでも防災関連の商品を開発しており、企業理念にブレのない提案でもある。審査委員長の廣田尚子さんは、「『被災者の心を和らげる』というデザインならではの役目を表現した点が素晴らしいと感じた」とコメント。
同じく優秀賞の「ものづくりをアップデートする新サービスの提案」は、アーク情報システムの高いシステム開発力、サイバーセキュリティの知識を活用した提案だ。本コンペで初めて、ソフトウェア分野の提案が受賞となった。ジャンルの新鮮さや、スマホユーザーも見込める市場のポテンシャルの高さが高評価を得ている。
審査委員長の廣田さんは、2012年から続く本コンペを総括し、「2018年に経済産業省・特許庁により『デザイン経営』宣言が出されたが、東京ビジネスデザインアワードで実践してきたのは、まさにその考え方そのもの。本アワードを通じて、中小企業にもデザイン経営が入ってきており、そこでデザイナーは単なるモノのデザインに留まらず、企業活動のより根幹の部分、例えば経営や収益体制を変えるといった一段上の価値あるデザインを行っているという点を、今後も伝えていきたい」とコメントしている。
受賞3件を含めたテーマ賞の各デザイン提案は、テーマ企業とデザイナーの間で提案の事業化・製品化に向けた検討が始まっている。
公式ホームページ
https://www.tokyo-design.ne.jp/award.html
取材・文:猪瀬香織(JDN)