【結果速報】認知症がテーマの短編映画賞「第1回なかまぁるShort Film Contest」初受賞作品は?
10月7日、『第1回なかまぁるShort Film Contest』の受賞4作品が発表。都内で上映会&表彰式が行われ、映画コメンテーターのLiLiCoさん、若年性認知症当事者の丹野智文さん、女優のどんぐりさん、ミュージックビデオ監督の加藤マニさんらが登壇した。
このコンテストは朝日新聞社の認知症特化ウェブメディア『なかまぁる』と、国際短編映画祭ショートショート フィルムフェスティバル&アジアを運営する『SHORTSHORTS』のコラボによる開催。日本で初めて、認知症をテーマにした短編映画を募集した。
最優秀賞はLiLiCoも絶賛の『The Right Combination』
応募作品37点の中から最優秀賞に輝いたのは、坂部敬史監督の『The Right Combination』。アメリカを舞台に、ある家に忍び込んだ若い泥棒と、泥棒を息子だと思い込んだ認知症のおじいさんが、コミカルなやり取りを経て心を交わしていくストーリーだ。
坂部さんは制作意図を「『記憶をなくす恐怖』に興味がある一方で、自分は父に厳しく育てられたことが心に残っている。(認知症の)『過去が消えてしまう』ことと、自分のように『過去を消せない』ことの2つをかけあわせたらどうなるのかと思い脚本を作った」と語る。
毎年400本ほどの映画を見るというLiLiCoさんは「レベルの高さに驚き。実はマーティン・スコセッシが作ったのでは?」とコメントして会場の笑いを誘いつつ、「ショートフィルムは時間が短いのに、この作品には(直接登場しない)登場人物の家族の存在を感じさせたり、笑えたり、最後は泣けちゃったりという、映画に必要な要素がすべて詰まっていた」と絶賛。『なかまぁる』編集長の冨岡史穂さんは「認知症の男性が当たり前のように自立して生活している描写に注目した。認知症フレンドリーな世界で、編集部全会一致で最優秀賞に決めた」と、当事者メディア編集者ならではの視点で作品を評価した。
また、優秀賞は小野光洋監督の『英爺』が受賞。さらに、丹野智文さんからは、介護士ラップユニット『QOL』のビデオで川端真央監督の『介護しよう。MV feat.おばあちゃん』に特別賞が授与。ミュージックビデオ特別賞を、加藤マニ監督が制作した『愛のカタチ』ミュージックビデオが受賞。この作品では『カメラを止めるな!』の女優・どんぐりさんが熱演している。
認知症の当事者と一緒に映画を作ってみてほしい
上映会後に行われたトークショーでは、LiLiCoさんがショートフィルムの魅力を「たくさんの伝えたいことを削って短編にしなければならない分、観る人の心にストレートに刺さる強さがある」と紹介。
また、丹野さんは「認知症は重度の症状ばかり話題になりがちだが、必ず、できることが多い初期段階がある。一緒に何ができるかということに注目して、ぜひ当事者と一緒に映画を作ってみてほしい。認知症当事者が当事者目線で、サポートしてくれる人とともに作っても面白いんじゃないか」と熱く語り、多くの人に制作を呼びかけた。
受賞4作品とノミネート4作品は、10月中旬より『なかまぁる』で無料公開される。折しも、10月17日から20日まで『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019 秋の映画祭』も開催。この秋はショートフィルムを存分に楽しめそうだ。
認知症当事者とともにつくるウェブメディア『なかまぁる』(朝日新聞社)
https://nakamaaru.asahi.com/
SHORTSHORTS
https://www.shortshorts.org/
取材・文:猪瀬香織(JDN)
授賞式集合写真・トークショー写真・作品画像提供:SHORTSHORTS