【結果速報】東京ビジネスデザインアワード2018年度 最優秀賞は「金属そっくりに印刷する技術」を唯一無二のものにする事業提案
「『立体視・金属調印刷物』を唯一無二の素材にするための事業提案」
東京都が主催する「東京ビジネスデザインアワード」。1月31日にその最終審査会が開催され、最優秀賞と優秀賞2点が決定した。
最優秀賞に輝いたのは、デザインコンサルファームkenma inc.の今井裕平さん・林雄三さん・木村美智子さん・鈴木杏奈さんによる、株式会社技光堂(板橋区)の技術を活かす「『立体視・金属調印刷物』を唯一無二の素材にするための事業提案」。賞金100万円が授与された。
優秀賞には、中村知美さんの「灯りと香りで想いを伝えるアロマキャンドルプロダクト」、清水覚さん・山根準さん・山根芽衣さん・安次嶺彩香さんのグループによる「香りの魅力を楽しく学ぶプロダクトの提案」が選ばれた。
フラグシップモデルで本業の価値向上に 多面的なビジネスプランが受賞
同アワードは、東京都内のものづくり中小企業とデザイナーの協働による、新ビジネスの創出を目的としたデザインコンペ。企業から自社のすぐれた技術や素材をテーマとして募集し、その中から選出されたテーマに対するデザイン提案をデザイナーから募る仕組だ。
7回目となる今年は、テーマに対して全国のデザイナーからのべ126件の提案が寄せられ、8件がマッチングに成功し“テーマ賞”に選出された。そこから2ヶ月ほどで、企業と受賞デザイナーが提案をブラッシュアップさせ、最終公開審査となった。
最優秀賞となった今井さんらの提案は、新技術を使った美しい製品、にとどまらない。BtoCの看板商品を制作することで本業のBtoB事業を強化する、という多面的なビジネスプランだ。
まず技光堂が持つ、透明樹脂素材を立体的に、かつ本物の金属そっくりに見せる印刷技術を使って『透ける金属』調の商品を制作。その商品をフラグシップとして自社技術をPRすることで、同社の基軸事業であるOEM印刷事業の価値を向上させるという。
同アワードは名称に“ビジネス”とつくように、製品デザインを超えた「ビジネスモデル」としてのデザイン提案が求められる。その要求にぴったり応えた提案が、最優秀賞に輝いた。
王道のビジネス提案と、全く新たな市場を生む提案との間で審査が拮抗
今回は審査が非常に難航し、結果発表が当初の予定から30分ほど遅れた。審査委員長でプロダクトデザイナーの廣田尚子さんによると、理由の一つは、8件の提案のクオリティが過去最高だったこと。もうひとつは、最優秀賞と優秀賞のうち「香りの魅力を楽しく学ぶプロダクトの提案」が拮抗したことだと言う。
「香りの~」は、東洋工業が持つアロマブレンド技術を活用した「香る絵の具」により、色と香りを調合しながら香りのしくみを学ぶ製品提案。全く新しい市場とそれに合ったプロダクトを生み出す提案だ。
看板商品によって既存の市場での地位を向上させる王道のビジネス提案と、新たな市場を創る提案。ビジネスモデルが全く異なるふたつは甲乙つけがたく、審査員からは「最優秀賞を2つにしたい」という意見も出たほどだそうだ。
この3件を含むテーマ賞8件の各提案は、テーマ企業とデザイナーの間で提案の事業化・製品化に向けた検討が始まっている。最優秀賞、優秀賞に選ばれたテーマも、そうでないテーマも、近い将来、商品を手にできるかもしれない。
公式ホームページ
https://www.tokyo-design.ne.jp/
取材・文:猪瀬香織(JDN)