【結果速報】コクヨデザインアワード2018 グランプリは文具と目の見えない方との”境界”をこえる提案
1月18日、東京・表参道のスパイラルホールで「コクヨデザインアワード2018」の最終審査・表彰式・審査員トークショーが開催。グランプリには、”音を描く”文具を通じて新たなコミュニケーションを生む提案が選ばれた。
同アワードは文具メーカーのコクヨ株式会社が主催するプロダクトデザインの国際コンペ。使う人の視点で優れたデザインを募り、商品化を目指すものだ。16回目の今年は“BEYOND BOUNDARIES”(境界を越える)がテーマとなった。審査員は昨年に引き続き、クリエイティブユニット『KIGI』の植原亮輔さんと渡邉良重さん、クリエイティブディレクターの川村真司さん、デザイナーの佐藤オオキさん、アーティストの鈴木康広さん、コクヨ社長の黒田英邦さんが務めた。
グランプリに輝いたのは、山崎タクマさんの「音色鉛筆で描く世界」。世界46カ国から集まった1,289点(国内766点、海外523点)の応募作品のうち、一次審査を通過した10点の中から最終プレゼン審査を経て選ばれた。表彰式会場の投票で選ばれる「オーディエンス賞」とのダブル受賞となった。
「音色鉛筆で描く世界」は、紙との摩擦音を増幅する鉛筆を中心とした文具(鉛筆、鉛筆削り、定規)を通じ、新たなコミュニケーションのかたちをあらわしたプロジェクトだ。文具を「音色をえがく為のクリエイティブツール」として再定義することで、目の見えない人と見える人それぞれにとって、新鮮な創造的体験の可能性をあらわした。
トークショー冒頭で再現された最終審査プレゼンテーションの再現によると、この提案がとても丁寧なプロセスを経て作り上げられていったことがわかる。
山崎さんは目の見えない方にヒアリングを重ね、彼らにとって文具は失敗体験の多さから避ける存在であり、文具と目の見えない方の間に境界があると気づいたそうだ。そこから視覚情報を残すことを目的としない「楽器としての文具」の在り方を探求。試作品ができると全盲の方とともにワークショップを行って、提案の魅力や使い方のバリエーション、学習プログラムへ応用できる可能性を発掘していった。
審査では製品デザインの美しさや模型の完成度に加えて、この制作プロセスが高く評価された。また、審査員が実際に試用して筆記時の音を体験し、目が見えない人も見える人も、誰もが楽しめる可能性を実感してのグランプリ選出だったという。
トークショーでコクヨの黒田社長は、今後のアワードについて「もっともっと大きなデザイン運動になるまで続けていきたい。ぜひ応援してほしい」とコメントした。受賞作品はこれから商品化が検討される。
公式ホームページ
https://www.kokuyo.co.jp/award/
取材・文:猪瀬香織(JDN)