【レポート】ついに受賞作発表!シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション表彰式
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手にした表彰状は審査員・原研哉さんのデザインで、ミミつきの和紙に全審査員のオリジナル篆刻がしるされている。
10月12日、未来ものづくり振興会は、新しいプロダクトのデザインを募る「11th SHACHIHATA New Product Design Competition(シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション)」の受賞作品11点を発表。GINZA SIX内の「銀座 蔦屋書店GINZA ATRIUM(ギンザ アトリウム)」で表彰式を開催した。
このコンペは、今年が10年ぶり11回目の開催となる。テーマ『しるしの価値』に沿って、自分であることの「しるし」(アイデンティティ)を表すプロダクトもしくは仕組みを募集し、全718点の応募があった。審査員は10年前にも同役を務めた喜多俊之さん、後藤陽次郎さん、原研哉さん、深澤直人さん、今年から参加したインターフェースデザイナーの中村勇吾さん、そして特別審査員2名(舟橋正剛さん、岩渕貞哉さん)の計7名。
グランプリは「自己QR」
栄えあるグランプリは、清水邦重さんの「自己QR」。QRコードを読み取ることで自己PRができる印鑑で、自分のホームページやSNSなど好きな内容を表示できるアプリを開発し、ダウンロードして印影にスマホをかざせばその情報が見られるという仕組みだ。初対面の自己紹介にも楽しく使える新たなコミュニケーションの提案だ。
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グランプリ「自己QR」清水邦重
審査では、デジタルとアナログの見事な融合に評価が集まったとのこと。審査員の原さんは「デジタルなものと捉えがちなQRコードを、フィジカルな物体として提示した秀作。(中略)現実の中に具現化していく未来のリアリティを見事に掬い取っている」とコメントしている。受賞した清水さんは、表彰式で作品の意図を「はじめて自分のハンコを持ったとき、すごくうれしかった。その気持ちにもっと広がりをもたせ、相手に渡ったときに相手も楽しめる、そういったコミュニケーションのひとつとして使えるように考えて応募した」と語った。清水さんには賞金300万円が贈られる。
今回の受賞作を見渡すと、既存の印鑑に新たな機能やウィットに富んだ付加価値をあたえる、すぐにでも商品化できそうな提案と、360°カメラや空間認証などの新たな技術を見据えた実験的な認証提案に大別されるのが特徴だ。しるす――自己認証の方法にさらなる可能性が拡がっていると示されることとなった(全受賞作はこちら)。
また、以前の同コンペに続き10年ぶりに再応募したという受賞者が複数いたのも印象的だ。深澤賞を受賞した望月未来さんは、10年前の同コンペでも審査員賞(後藤賞)を受賞している。
望月さんは表彰式の壇上で「10年前は学生。あのときコンペ受賞に背中を押されて、今もデザインを続けられている。今回も受賞で拾い上げてもらえたことが嬉しく、明日からもデザインの仕事を頑張っていきたいと思える」とコメントしていた。
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左は、「LIP COLOR INK」で審査員特別賞(深澤賞)を受賞した望月未来さん
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全受賞者・審査員
トークショーでは第12回の開催発表も!テーマは「これからのしるし」
表彰式に続いたトークショーでは、審査員・特別審査員の7名が登壇。第12回の開催決定とテーマ「これからのしるし」も発表された。
今回はじめて審査員を務めた中村さんは、「判子という限定的なテーマのコンペがどこまで成立するんだろうと思っていたが、いざ応募作品を見ると、対象が限定されるからこそ多様な提案が集まり、現代が映し出されていると感じた。これからも息の長い賞を目指して欲しい」とし、深澤さんは「このコンペ自体も、時代に対して行為を“しるす”ということのように思う」と語った。
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トークショーの様子。深澤直人さんは次回テーマ『これからのしるし』発表を受けて「アイデアが湧いてくるけど言いません」と会場の笑いを誘った
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左から、審査員の後藤陽次郎さん、中村勇吾さん、原研哉さん
今回応募された方も、見送った方も、またすぐ次のチャンスがある。ぜひ準備を始めてはいかがだろうか。トークショーの詳細、次回の募集要項などは今後公式ホームページで発表予定。
11th SHACHIHATA New Product Design Competition 公式ホームページ
https://sndc.design/archives/11th/award/
取材・文:猪瀬香織(JDN) 写真:SNDC