【レポート】「第11回キッズデザイン賞」 社会全体で子育てを支えるデザインが受賞
9月25日(月)、六本木アカデミーヒルズ(東京都)にて「第11回キッズデザイン賞」各賞の発表と表彰式が行われた。
今年は462点の応募があり298点が受賞。この中から最優秀賞や特別賞など34点の優秀作品が発表された。
「キッズデザイン賞」は子どもの安全・安心と健やかな成長発達に役立つ優れた製品・空間・サービス・研究活動などを表彰し、広く社会へ伝えることを目的としている。「子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン」「子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン」「子どもたちを産み育てやすいデザイン」の3部門があり、子どもが使うものだけでなく大人向けのもので子どもに配慮されている製品・サービスなども幅広く表彰するのが特徴だ。受賞作品にはキッズデザインマークの使用が認められる。
最優秀賞は西武鉄道の新型通勤車両 公共交通機関での子ども連れ移動課題を解決
全部門の中から1点選ばれる最優秀賞(内閣総理大臣賞)は、西武鉄道の新型通勤車両40000系が受賞した。
この車両は「人にやさしい、みんなと共に進む電車」をコンセプトとしており、2009年にキッズデザイン賞を受賞した「スマイルトレイン」の後継機。ベビーカーを置ける空間構成や子どもが外を見やすいようにした大きな窓などの工夫が凝らされ、朝夕の通勤時間帯に運行されている。社会問題化している「公共交通機関で子どもを連れて移動すること」をデザインで解決しようと、徹底して取り組んでいる点が高く評価された。
主な受賞は以下の通り。
●最優秀賞 [内閣総理大臣賞]
西武鉄道新型通勤車両40000系(交通/西武鉄道・川崎重工業)
●優秀賞 [経済産業大臣賞]
小児科オンライン(ITツール/Kids Public)
積水ハウス分譲マンションにおける安全・安心のための取り組み(住宅事業/積水ハウス)
錯視ブロックワークショップ(教育コンテンツ/錯視ブロックワークショップグループ)
こじまこども園(保育施設/こじま福祉会こじまこども園・エムアーキ)
●優秀賞 [消費者担当大臣賞]
日本と世界の子どもたちが創発。「せかい!動物かんきょう会議」(教育事業/せかい!動物かんきょう会議プロジェクト)
●優秀賞 [少子化対策担当大臣賞]
母子健康手帳アプリ(ITツール/NPO法人ひまわりの会・NTTドコモ・博報堂DYメディアパートナーズ)
JOHNSON TOWN(街づくりモデル/磯野商会・渡辺治建築都市設計事務所)
●優秀賞 [男女参画担当大臣賞]
マミーズプロジェクト(子育て支援事業/ミサワホーム)
ほか各賞受賞作品一覧は、キッズデザイン協議会ホームページ掲載のプレスリリースより確認できる(PDF)。
子育てを支援するアプリやITサービスが多く受賞 社会で子育てに取り組もうとする世相を反映
主催のキッズデザイン協議会によると、今年度はITサービスやツールの多様化と、子ども・子育て支援新制度による施設関連の応募増加が見受けられるという。受賞作を見ても、スマホアプリやIT機器、保育施設などが多い。さまざまな手段をフル活用し、社会全体に子育て支援に取り組みはじめた世相を色濃く反映した結果となった。
また、「子どもたちを産み育てやすいデザイン」復興支援デザイン部門では、NPO法人はままつ子育てネットワークぴっぴの「災害時、心をつなげるマーク」が受賞した。
これは災害の避難所などで妊婦・乳幼児、アレルギーのある子どもがいることを伝えるマークで、熊本地震の時にはトートバックに印刷され、支援物資として熊本県益城郡嘉島町、益城町に送られた。
同法人によると、マークのデザインはNPO法人のスタッフとのこと。組織規模や制作予算などの制約に関わらず、子どもをとりまく社会の変化と課題を敏感にとらえ、解決策を提案する力が受賞につながることが伺えた。
子どもは未来そのもの 今後は世界にも目を向ける
審査委員長でデザインコンサルタントの益田文和氏は「長年にわたる審査で、子どもは未来そのものという考えに至った」とコメント。子どもの安全安心に配慮したものを選定するところから始まった同賞が、回を重ねるにつれ、子どもの生活環境全体に配慮した設計、子どもを産み育てる親や社会を支援するインフラ・サービスと、領域を広げていることを説明した。また、世界では500万人の子供が1年に亡くなっている現状を踏まえ、今後は日本の環境だけでなく世界にも目を向けたいと話した。
第11回キッズデザイン賞の全受賞作は公式ホームページに掲載され、過去の受賞作品の検索も可能。
http://www.kidsdesignaward.jp/2017/
取材・構成・文:猪瀬香織(JDN)