【レポート】ペーパーカードデザインコンペ2017審査会
七夕の7月7日、「かみの工作所」によるペーパーカードデザインコンペ2017の審査結果が発表された。グランプリは以下の通り。
グランプリ(1作品)
DOT ANIMATION CARD(内藤 繁樹)
優秀賞以下、全受賞作は下記。また、コンペ公式ホームページでは、結果発表ととも審査員や主催者のコメントが掲載されている。
https://compe.japandesign.ne.jp/result/kaminokousakujo-card-2017/
このコンペの審査会が、6月30日(金)に東京都立川市内にて行われた。「登竜門」ではこの様子を取材してきた。
ペーパーカードデザインコンペとは?
審査会レポートの前に、コンペの趣旨について少し説明しよう。本コンペ主催の「かみの工作所」は、紙の印刷加工会社・福永紙工のプロジェクト。50年以上にわたり紙の印刷加工業を行ってきた同社が、デザイナーなどとコラボして新製品の開発に取り組むもので、生み出された数々の製品はメディアで取り上げられる機会も多い。
そんな「かみの工作所」が2015年にはじめたのがこのコンペ。気持ちが伝わるメッセージカードを応募者と一緒につくり製品化をめざす。審査員10組は次の通りで、「かみの工作所」で実際に製品を開発してきたデザイナーや建築家たちだ。第一線で活躍する彼らに選ばれ、福永紙工の高い技術力で実際に製品化されるのが本コンペ最大の魅力。
【審査員(敬称略)】エマニュエル・ムホー(建築家、デザイナー)/岡崎智弘(デザイナー)/スイッチデザイン(プロダクトデザイナー)/鈴野浩一(建築家)/野老朝雄(アーティスト)/長岡勉(建築家)/原田祐馬(デザイナー)/三澤遥(デザイナー)/三星安澄(グラフィックデザイナー)/山田明良(福永紙工 代表取締役)。
さて、今年の受賞作はどのようにして選ばれたのだろうか。
一次審査はテンポよく
審査当日、会場に並んだ応募作品は357点。あまりの多さに作品を置く机が足りなくなり、急遽展示台を追加したそうだ。
今回のコンペのテーマは「おくるをつくる」。響きこそ優しいが、コミュニケーションの本質を問いかけるお題だ。集まった作品は大きさも形も様々だが、どれもこのテーマに沿って考え抜かれている。込められた想いのエネルギーで会場の温度が上がるかのような錯覚を起こす。
まず、審査員1名につき数十枚の付箋を持って会場を回り、該当する作品に付箋を貼る。おおよその一次審査だ。この段階ではアイデアやコンセプトが重視され、テンポよく付箋が貼られていった。分かりやすい美しさや、触って楽しい仕掛けのある作品に付箋が集まる傾向がうかがえた。
“製品化”を目指した議論の末に
一次審査で1票以上が集まった作品をさらに絞り込んだ後、審査員は議論しながら受賞作を決めていく。ここからは製品化を念頭に置くため、美しさや完成度の高さ、量産時の技術的課題やコストなど検討ポイントは多岐にわたり、選定は難航。特に次の点については繰り返し話し合われた。このコンペの意義に立ち返る視点だ。
- アイデアやアートではなくデザインとして、優れているか?
- 福永紙工の技術を活かして量産化できるか
- 「かみの工作所」らしい製品になりうるか
- おくる時、おくられた時、心が動くだろうか?
審査員たちは自身が「かみの工作所」で製品化に携わった経験と思いを持ち寄り、実際の製品化会議さながらに議論をすすめた。
面白いことに、一次審査で好評にも関わらず議論に上らなくなった作品も多い。また「グラフィックアートとしては完成している」「他社製品だったら素敵」という作品も選から外れていった。強い個性で審査員をくぎ付けにしたものの、量産したときに味わいを再現できないと指摘された作品もある。
受賞作が決まった時には、予定の審査時間を1時間ほど超えていた。
製品化に向けて
グランプリと優秀賞の計3点は、これから受賞者と「かみの工作所」により製品化に向けたブラッシュアップが行われる。受賞したクリエイターにとって、ここからのプロセスは貴重で刺激的な経験になるだろう。10月には製品が発表されるとのこと。今から楽しみでならない。
デザイン情報サイト「JDN」では今回のコンペ審査員インタビュー取材を行っている。併せてご覧ください。(※2017/11/22追記)
https://www.japandesign.ne.jp/report/papercard-designcompe-2017-1/
取材・構成・文 猪瀬香織(JDN)