結果発表
厳正なる審査の結果、総応募数100作品のうち、部門1は12作品、部門2は21作品が優良作品として選ばれました。
今村祐嗣(京都大学 名誉教授)
今回の用途が屋外ということで、雨水や日射に曝されること、さらに場合によっては土に接することから、特に耐久性、耐候性、性能を維持するメンテナンスの観点から見させて頂きました。応募作品についての総体的な印象は、独創的なデザイン性と信頼性の高い耐久性能の両方を満足させることの難しさと、木材の耐久化と保存処理に対する技術的な認識が十分でないものが多かったということです。その中で優良提案の対象となった作品は、いずれも長期にわたる耐久性能を担保出来ると思われるものです。今回のウッドチャレンジによって、地球環境の保全や地域の活性化にも寄与する木材の利用拡大と長期使用が一層進展することを願います。
木口 実(森林総合研究所 研究コーディネータ)
屋外で木質材料を使用する場合、性能的に最も重要なのは耐久性であると思います。そのため、今回の応募作品については耐久性(JASのK3、AQの2種以上)、耐候性(規格適合の木材保護塗料の使用等)の面から評価させて頂きました。
部門1においては、耐久性について考慮されている作品は少なかったと思いましたが、これは木材の耐久性に関する規格や情報が一般に認知されていないことが原因の一つと思われます。そのため、これら規格や情報を伝達することによって全ての入選作品が屋外でも高い耐久性を持つ仕様になったと思います。
部門2については、WPCを含む既製の製品が対象となるため、耐久性や耐候性はより重要な評価となりました。WPCについては、新しい材料であるため既存の公的規格に適合していることが重要と思います。処理と共にデザインやメンテナンス方法等による耐久性・耐候性の向上に関する提案がもっとあったらと思いました。その中で、木材表面を粗化して塗装耐候性を向上させる作品がありましたが、このような新しい試みは今後の展開が楽しみです。
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
都市部で木材を使用するには、これまで伝統的に用いられてきた手法だけでなく新しい価値観も必要である。今回の提案にように、工業製品に画一化したものではなく、自然素材の色や形状のばらつき、経年変化を楽しんだり、ベンチやテーブルもその本来の使用目的だけなく不思議さを楽しむ形状、そうした新たな都市の装置の提案がそれを実現するための技術開発につながる。今後も、ものつくりの技術開発者を刺激するデザインの提案がされ、既成概念にとらわれず、都市の中で木材に触れる機会が増えることを期待したい。
橋田規子(芝浦工業大学 教授)
今回、屋外用木製家具という名称での公募であったが、従来のベンチや椅子の形態に留まらず、止まり木のようにもたれかかるものや、仕切り形状で可変性のあるもの、横たわれるものなど、人と木の関わりを新しくしようという提案があり興味深かった。2020年オリンピックに向けて、東京の街に新鮮な風景を作るという点で、これらの家具はさらにブラッシュアップしてほしい。また、スタジアムベンチでは、様々な地域の木材を取り入れ、全体で景観を作るといった提案があり、従来の樹脂ベンチにない、木製ならではの見た目と座り心地の良さを引き出せると考えられ、楽しみである。
日比野克彦(東京藝術大学 教授)
審査の翌日、私は、チャレンジし続けている石巻工房の工場長の千葉さんと、石巻の工場で次なる夢の話をしていた。彼は「ウッドチャレンジ」のことを知っていたけど参加はしていなかった。隣町の女川では、官民一体になって津波災害跡地の海岸線に新たに木造りのプロムナードが年末のオープン目指して建造中であった。皆挑戦している。今回の応募作品も、物を作ることだけに挑戦するのではなく、今の時代にムーブメントを起こす!その道筋を木が持っている力を借りるという姿勢でチャレンジしていってほしいと思う。木には人を育てる力がある。木には人を変える力がある。木には社会を導く力がある。