飛騨デザイン憲章を読み、飛騨の家具としての姿と明確な進むべき方向性がとても素敵だと感じました。日本の技術とアイデンティティーを持った製品を世界の人々のために生み出そうとしている飛騨の方々のお手伝いができたら、私は大変幸せであります。この度は受賞させていただきありがとうございました。
このような賞をいただきましてとても光栄に存じます。今回私は「飛騨」という日本を代表する家具産地だからこそ、日本の文化を誇り、世界へと発信できるような日本の家具を生み出したいと思い「日本の机」を手掛けました。家具といえば洋家具が浮かぶ昨今において、堂々と「日本の家具」と言える家具を生み出すことは価値があることだと考えています。この想いに共感をいただきまして誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。
日本の小さな住まいならではの折りたたみ椅子のアイデアを、国産材を用いて、きめ細かな日本の木工技術で形にできることを嬉しく思います。
この椅子を通じて日本の木の文化を、世界に、そして未来に繋げていけたらなによりです。
木材の製造工程で発生する部材も最大限に活用したい、それが自然への敬意だと考えました。
どうすれば皆が木の製品を大切に使うか、どうすればそのような大きなインパクトを与えられるかを考え、木を連想させるものとして「枝(Branch)」が良いものだと思いました。木材の製造加工プロセスで発生する端材を使用したかったので、小さくて、製造が簡単なデザインにする必要がありました。
古来、「枝」は何かを吊るしたり支えたり、また、火をともして照明に使われていました。そこで、吊るすことと照明をともす機能を組み込んだデザインとしました。
「The Lilly chair」は椅子の接合技術をさらに前進させ、組み木と匠の技を具現化させたものです。
このイスの構造は、軽量合板のシートを組み合わせる、曲げ木の要素から成り立っています。視覚的なインパクトをさらに大きくするため、接合部材は色合いの異なる木材としました。「The Lilly chair」はワーキングチェアやダイニング椅子として使えるような用途が広いものです。
この度は特別賞を設けていただき誠にありがとうございました。受賞のご連絡を受けたときは何かの間違いじゃないかと思いました。飛騨の家具は、わたし個人的に強い思い入れがあり、もっと世界中で評価されるべきだと以前より考えておりました。今回応募に至ったのは、少しでも何かお力添えできればと考えたからです。こういったコンペティションを機に、良い製品が生まれ、世界中に飛騨の家具が広まることを心より願っております。
この度は、このような賞をいただき大変光栄に思います。また実験的アプローチを評価していただけたようで大変嬉しく思います。製品化にむけてはクリアしなければならない課題は山積していますが、この賞を励みに引き続き、デザイン制作活動に邁進していこうと思います。
まずは、353点という沢山のご応募に厚く御礼申し上げます。
しかも、そのほとんどが岐阜県外の皆様からの応募であり、海外からも23カ国の皆様からご応募いただきました。また、応募者の三分の二が10代、20代、30代の若い方々であり、デザイナーや学生の方がほとんどであったということも、私たちに力強い思いを与えてくれました。こうした皆様にこのコンテストを通して、必ずしも脚を運んでいただきやすい場所とは言えないこの飛騨との接点を持っていただけたことは、大変に有難いことです。このコンテストは、新たな製品開発を目指すと共に、飛騨について、飛騨の家具について、今の世代の皆さんに知っていただくことを目的として実施いたしました。その意味では、目的のある部分は達成できたのではないか、という充実感も感じます。
ただ、これはあくまでも出発点、一里塚に過ぎません。
この良い動きを点で終わらせることなく産地として紡いでいくことで、それが線になり面としての広がりを持たせることができるのだろうと思います。製品化の道のりは簡単ではありませんし時間もかかりますが、飛騨のチャレンジとして取り組んで参りますし、来年以降もこうした企画は継続させていきます。若い人たちが活躍できるような場を提供し、飛騨の技術でデザインに応え、切磋琢磨し製品を世に出していく。この一連の流れを通して産地の魅力が世界に伝わっていくならば、それは素晴らしいことだと思います。
最後になりましたが、外部アドバイザーの皆様、取材いただいた報道の皆様、関わっていただいた皆様へ御礼申し上げます。おかげさまでインバウンドで賑わう飛騨ではありますが、改めて家具産地としての飛騨にもご注目いただき、引き続きご支援賜りますようお願い申し上げます。
飛騨木工連合会
川上元美(デザイナー)
飛騨との付き合いは30年を越えます。これまで多くのメーカーと一緒にプロトタイプや製品を作って参りました。複数のプロジェクトが現在も進行中です。若い方はご存知ないかも知れませんが、飛騨木工連合会は過去には「飛騨・高山学生家具デザイン大賞」というコンテストを10回にわたって開催し、私はその審査員も務めていました。このような経緯から、改めて今の時代に開催するコンテストはどのようなものになるのだろうかと期待していました。結果、集まった作品の数、レベルともに当初の想像を上回るものでした。インターネットを中心にした告知活動によって得られた応募とのことで、これには時代の変遷を強く感じるところです。入賞作の中には技術的に難しいものもあり、製品化を検討するメーカーが果たして思い切れるのだろうか?という懸念もあったのですが、チャレンジしようという気持ちが賞の授与を後押ししたようです。試作にあたって一筋縄ではいかないであろう最優秀賞を含めて、若い方や海外の方を含むバラエティに富んだ顔ぶれが入賞として決まり、なかなか良い結果を出せたのではないかと思います。このコンテストは来年も続くことが決まっていると聞きました。次代の飛騨への刺激となり、さらには、ここから飛騨をリードしていく家具が現れることを期待しています。
林 千晶(ロフトワーク代表、飛騨の森でクマは踊る代表)
森や木を知れば知るほど、その魅力に惹かれ、周りに伝えたい気持ちになる。森に足を踏み入れるたびに、飛騨の木に人を惹きつける強さを感じている。今回飛騨の家具アワードを通じて、その強度の理由をまたひとつ知ることができた。アワードで印象的だったのが、応募者は国内外を問わず組木や曲げ木などの技術が活かされているということ。飛騨の技術がそれだけ認知され、理解されていることの表れだろう。また、木工連の方々が守りに入ることなく、より難しい方向に向かってよりチャレンジングな姿勢で挑んでいることに飛騨の匠の自負とDNAを感じ、心が動かされた。
アワードというかたちである以上、受賞する・しないの評価が必ずあるけれど、作品全体のコンテクストの深さと質の高さに驚き、最優秀賞・優秀賞が共に難易度の高いプロダクトであったことによろこびを感じている。
山崎 泰(JDN・登竜門 ブランドディレクター)
本コンテストの企画実施に関わらせていただいたご縁で、参加いたしました。審査の主体はあくまでも飛騨の各メーカーであり、外部アドバイザーとして家具デザインの専門家である川上さん、様々な先端に通じている林さんがいらっしゃいますので、私の役回りはファシリテートと情報発信の観点からの助言だろうと認識しています。これまで多数のコンテストや審査のお手伝いをしてきましたが、初回というのはやはり大変なものです。基準、拠り所を自分たちで作らなければならないからです。結果はご覧の通りです。いずれも挑戦という要素を持つデザインが選ばれています。審査会を通して、変革の意思が飛騨のリーダーたちの中にしっかりとあることを確認できました。約100年前にベンチャービジネスとして見たことさえない西洋の椅子を作ることから始まった産地です。それは当たり前の気質なのかもしれません。
飛騨のものづくり、そして他の産地やメーカーを含めた木製家具、国産家具、日本の家具。関わる皆さんにお会いするたびに、まだまだ新しさや可能性に満ちていることを強く感じています。ご縁に深く感謝すると共に、今回の動きをさらなる活力へと繋げてまいりたいと考えております。
本コンテストの審査は、飛騨木工連合会に所属する13社の代表が行った。その視点に多様性と批判性を持たせるために外部アドバイザーとして3名の有識者を招聘し、忌憚なき意見をいただいた。今回のコンテストのテーマは「木製品のデザイン」と設定した。
椅子から始まった日本唯一の家具産地として、コンテストのシンボルに椅子のイラストを用いてはいるものの、現在の飛騨には、椅子に限らない様々な家具、照明、雑貨を製造する多様なメーカーがある。その産地状況の反映であると共に、建材や寝具など新たな領域へ挑戦していきたい意思の表れである。応募作品を見渡すと、やはり椅子やスツールが最も多く137点と全体の約4割を占めた。残りはテーブル、収納、小物、照明などである。椅子をシンボルとしながら、多様性も求めたテーマ設定の反映として妥当な結果であったと感じている。審査過程は以下であった。
まず、全353作品に対して各審査員が個別に投票し、票を得た89作品を一次審査通過とした。その後、外部アドバイザーが全作品を確認し、特に一次審査通過とならなかった作品については引き上げるべきものがないか検討した。最終審査では各審査員と外部アドバイザーが一同に会し、一点一点についてその魅力を確認し討議した。審査基準は別に示す通りだが、「木材」「デザイン」「飛騨」「製品化」という四つをキーワードとしている。これらは各審査員が生業として取り組み、日頃、判断している事柄である。そうした状況において、コンテストで寄せられた外部からの提案、特に若い世代や海外からの提案は新鮮であり、その審査過程において審査員一同、大いに刺激を得ることができた。それぞれの受賞作について言及する前に、賞の追加についてお伝えしなければならない。当初の想定に加えて特別賞を追加し2点を選出した。これは、想定以上にレベルの高い提案が多く寄せられたことによるものだ。結果、7点を入賞とした。各賞の決定にあたっては、これら7点を中心に議論した。まず最優秀をどのように考えるかが論点となり、先ほどの審査基準に加えて、初回となるこのコンテストの代表として相応しい提案はどのようなものか、という観点からも検討された。
結果、最優秀として選出したのは松の葉をモチーフに曲げ加工を用いた椅子だ。技術的なハードルは高いものの、飛騨のルーツと縁起物である松の葉という日本の思想を表現するデザインを高く評価した。3本脚と4本脚の中間という印象も斬新である。優秀賞は、圧縮杉と曲木を応用したローテーブル「日本の机」、折り畳みでリバーシブルの座面を持つ椅子「Reversible Chair」、素材として不揃いな枝の曲木を使う照明「Hanging Branch Lamp」という3点。それぞれに技術的な困難があり、担当するメーカーは相当に頭を悩ませるだろう。学生と30才未満を対象とする奨励賞は、折り畳みスチール椅子の形状を思わせる細身の椅子「Lily Chair」。応募者の年齢から奨励賞ではなく特別賞を設けて表彰することとしたのが、背面に紐を使う曲木椅子「Paraboloid」とベニア板の表情が特徴的なサイドボード「Gradazione」の2点。新しい飛騨らしさへと予感を感じさせる挑戦的な7点を入賞作として発表できることを、審査員一同は誇りに思う。
飛騨木工連合会一同
飛騨木工連合会