住まいの環境デザイン・アワード 2013

募 集 終 了

  • 建築
  • 募集要項
  • 結果発表

応募は全国から256点にのぼり、前回を上回る作品点数となった。今年から、九州地方の風土に適応した住宅を選定する「九州の家賞」が新設され、応募作品の中から1作品が選ばれた。

>今年の募集要項はこちら

応募作品数:256点
入賞作品数:27点
主催:東京ガス株式会社

グランプリ

向日居
「向日居」

設計:末光弘和+末光陽子/SUEP.
施工:大藪組

コンセプト

低い背丈の棚が広がるキウイ畑に囲まれた300坪の敷地に建つ平屋住宅。この住宅の特徴は、今回、設計者が考案し、主体構造にもなっている11個の木造ユニットにある。一つひとつの木造ユニットは、幹から枝が伸びたようなL字型の断面だが、大きさやプロポーションはすべて異なる。そんな11個の木造ユニットを4+3+3+1の4つのブロックに分けて配置。半屋外の土間空間を介してつながった各ブロックの下に、木陰のような住空間が広がる。
木造ユニットは、主体構造のほか、太陽熱の集熱、その熱を床下に送るダクト、本棚といった各機能が複合されたもので、そのまま住空間に現れている。太陽熱の集熱は、柱梁のジョイント部にある、断面が三角形の空間を利用する。鋼板屋根を介して、この空間で暖められた空気は、縦ダクトを通して床下に引き込まれる。暖気は、コンクリート基礎への蓄熱や、ペリメータ部の床吹き出し空調に使われる。一方、夏季は、屋根空間に貯まる熱気をそのまま排出する。
今回、考案した木造ユニットは、厚さ25mmのスギの集成材を、303mmピッチのリブ状に並べて、面材で一体化したもの。リブ奥行きは、本棚や飾り棚になっているほか、リズミカルに連続するリブが住空間に表情を与えている。

審査講評

環境に対するスタンスに共感した。既製の設備システムに依存するのではなく、その場所で生かせる自然エネルギーは何なのかを見極め、自然体で取り組んだ姿勢は、環境デザインのあり方として非常に好ましい。今回、考案した木造ユニットが、構造体と熱環境システム、プランニングなどを一体化させ、住空間としてそのまま表現されているだけでも十分に評価に値するが、さらに材料調達や製作、施工にまで踏み込んで計画が練られている。設計の本質を追求したグランプリにふさわしい作品である。

環境デザイン最優秀賞

SHAREyaraich
「SHAREyaraich」

設計:篠原聡子+内村綾乃/空間研究所 + A studio
施工:リンクパワー

コンセプト

男女7人が暮らす3階建てのシェアハウス。居室や水回りが入る4つの箱を、すき間を開けながら緩やかに3層につなげた構成。箱同士の間を縫って続くすき間には、1階の作業場や3階の広間のような部屋があるほか、層間に開いた高さ数十センチのスペースもある。
こうしたすき間は、多様な「コモン空間」になっており、住人同士の距離を適度に取りつつも、個室から出てきたくなるような動機付けの場としても機能している。層間のすき間は、上下階の遮音機能も兼ねる。
シェアハウスが内側に閉じないように、北側正面のファサードは半透明のテント膜で覆い、内部の暮らしが街ににじみ出るようにしている。このテント膜は、吹き抜けの作業場を介して、内部の温熱環境を整える働きも持つ。 今回はエネファームを採用しているが、住人がシャワーの時間帯をずらすなど、エネルギーの消費が分散されるため、高い発電効率を見せている。

審査講評

当初からシェアハウスとして計画されたもので、空間構成や運営面などで、現実味のある新しい暮らし方が提案されている。特に、建物を貫く縦横のすき間が、住人同士の距離感という点でも、通風を促す点でもうまく機能している。エネファームの発電効率が高く、エネルギー面でもシェアして住むメリットが引き出されている。温水ラジエーターによる輻射熱の生かし方にも手本にできるものがある。

住空間デザイン最優秀賞

沼袋の集合住宅
「沼袋の集合住宅」

設計:谷尻 誠/suppose design office
施工:辰

コンセプト

幹線道路沿いの角地にある変形敷地に建てられた集合住宅。7戸の賃貸住戸のほか、最上階にオーナーの自邸が入る。
すべての住戸プランは、外側と内側の2つの空間で構成される。大きな開口部に沿った外側の空間はコンクリート打放しで、縁側や土間のようでも、バルコニーの内部化のようでもある。住まい手ごとに、あるいは季節やその時々の気分に応じて、使い方をアレンジできる空間になっている。
そこから一段上がった内側は、一転して白い壁にフローリングの仕上げで、エアコンも装備した室内空間。外部との違いを明確にしているが、ガラスの建具を閉めたときでも、外側の空間と視覚的につながり、街の景色も望める。
開口部は複層ガラスのサッシで、一部は開閉可能で通風も確保している。コンクリート打放しの外壁は、型枠にスギ板を使っており、経年変化による汚れも許容するラフな仕上げになっている。

審査講評

積層型の集合住宅では、たいした使い道のないバルコニーを再考し、土間や縁側のような機能にとらわれない空間に昇華した点は興味深い。階ごとにセットバックしていく外壁は、将来の汚れも考慮したもので、時間軸でとらえた設計がされている。賃貸とオーナー住居の併設は、とかくオーナー住居だけが立派なつくりになるが、双方を同じ空間構成とし、設計の意図を貫いている点も評価したい。

環境デザイン優秀賞

駒沢公園の家
「駒沢公園の家」

設計:今村水紀+篠原勲/miCo.
施工:伸栄

コンセプト

市街地の旗竿敷地にあった築34年の木造家屋を購入して、全面改修した建築家の自邸。計画上、1階の増築が必要だったことから、既存建物を2つに分節。そこに増築部を加え、3つの小さな家屋が並ぶ構成として全体のボリューム感を抑えた。建物内部は、真ん中にある半屋外的な室内庭と、両側にある居室とがつながった開放的な空間。既存の軸組み部材を随所で見せて、新旧の対比や改修による進化を表現している。

審査講評

ごく普通の木造住宅を、とても開放的で快適な空間へと見事に再生している。日本に多数ある住宅ストックの活用に一石を投じる提案と言える。ほかでも応用できる無理のない手法が取られており、素材や寸法に対するセンスもよい。


くらくの家 ~農・食・住を伝える暮らし~
「くらくの家 ~農・食・住を伝える暮らし~」

設計:池田浩和+小森仁+伊藤恵理+安井敦子/岡庭建設
施工:岡庭建設

コンセプト

農家の建て主と住宅会社とが協働して、農業を通じた都市の街づくりに取り組んだ事例。敷地の一部を手放して建てた5棟の分譲住宅の住人に農地の一部を開放し、農・食・住について考えてもらいながら地域コミュニティーを形成する。災害発生時に地域の拠点とすることも視野に入れている。新築したオーナー自邸も含め、すべての建物にパッシブソーラーシステムを採用するなど、環境負荷の低減を図っている。

審査講評

ミニ開発などで都市の農地が消えていくなか、農地の保全と、地域コミュニティーの形成とをつなげた今回の仕組みは、社会的な意義が大きく、高く評価したい。パッシブエネルギーを始め、住宅の環境計画も手堅い手法が取られている。

住空間デザイン優秀賞

八木の家
「八木の家」

設計:谷尻 誠/ suppose design office
施工:新興建設

コンセプト

住まいながら完成に向かうことを意図した「未完成の家」。外壁の打放しコンクリートは、すでに時間を経たような雰囲気を見せ、サッシやガラスを入れずに穴として残した開口部もある。居住部分は建物の2階のみ。1階は、地面をそのまま残したような土間空間で、開口部から風や光だけでなく、雨も入ってくる。この空間は、DIYとバイク好きの建て主が、作業を楽しんだり、家族でくつろいだりと、様々に使われている。

審査講評

未完成の家を成長させていくという考え方や、町家の土間を新しい解釈で採り入れた点など、非常に尖った、高い提案性が見られるうえ、それを見事に表現している。DIY好きな建て主とともに、この先どのようにこの家が育っていくかが楽しみである。


戸田邸
「戸田邸」

設計:岡田公彦/岡田公彦建築設計事務所
施工:アルフ

コンセプト

瀬戸内海を望むひな壇状の住宅地に建つ。隣家の頭越しに海を臨み、防犯性も確保したいという要望に対して、建物全体を地面から浮かせた。内部はスロープ状につながるワンルーム空間で、階段を使って周回できる。場所ごとに窓の位置や高さを変えて、眺望と視線を制御しつつ光や風を採り入れている。スロープの先端を伸ばせば増築も可能。地上部分は、地域の庭として開放している。

審査講評

あえて建物を持ち上げ、敷地を地域に開かれた庭としたのは潔い。地面を開放する可能性に大胆に踏み込んでいる。幅の狭い住空間は、意外に心地よく、眺望も申し分なかった。建て主と対話を重ねて、丁寧につくられた印象を受けた。

入賞

作品名 設計者
岡上の家(増築) 杉浦伝宗/アーツ&クラフツ建築研究所
緑のカーテンの家 ~FILLET~ 熊木英雄/熊木英雄建築事務所
ISANA 西久保 毅人/ニコ設計室
花内屋リノベーション 吉村 理/吉村理建築設計事務所
庭の住処 川本敦史+川本まゆみ/エムエースタイル建築計画

優秀家づくり賞

作品名 設計者
土間で暮らす合宿所の様な家 横川修一/ミライエホーム
おいしそうな家 齊藤元彦+牧島美玲/トトモニ
通り土間のあるイエ 赤土 誉/赤土建設

暮らしデザイン賞【モダンリビング賞】

作品名 設計者
house l 寳神尚史+穐吉彩加/日吉坂事務所

暮らしデザイン賞【SUMAI no SEKKEI賞】

作品名 設計者
妻沼の家 堀内 雪/スタジオCY

暮らしデザイン賞【LiVES賞】

作品名 設計者
三輪さんの家 西久保 毅人/ニコ設計室

ベターリビング ブルー&グリーン賞【新築】

作品名 設計者
桜風の家(さくらかぜの家) 二瓶 渉、山田浩幸/チーム・ローエナジーハウス・プロジェクト

ベターリビング ブルー&グリーン賞【リフォーム】

作品名 設計者
Surf SITE 佐々木善樹/佐々木善樹建築研究室

東京ガス賞

作品名 設計者
にしはらのながや 川久保智康、岡 由雨子/O.A.D.+川久保智康建築設計事務所
ろじのさき 磯村一司/ギルド・デザイン
House T 篠崎弘之/篠崎弘之建築設計事務所

大阪ガス賞

作品名 設計者
正面にある家 関谷昌人/PLANET Creations 関谷昌人建築設計アトリエ
五月丘の家 林 泰介+林 里恵/林泰介建築研究所
路地のある寺内町の家 横関正人+横関万貴子/NEO GEO

九州の家賞

作品名 設計者
杵築の家 鮎川 透/環・設計工房