結果発表
2017/04/06 10:00

第22回 学生CGコンテスト《学生限定》

受賞作品数:35点
主催:CG-ARTS(公益財団法人画像情報教育振興協会)
※ここでは、最優秀賞・優秀賞をご紹介します
アート部門

最優秀賞

あたまの中で眠る/病室からの景色
平本瑞季(東京藝術大学大学院)
あたまの中で眠る/病室からの景色
審査コメント
祖母の死を丁寧に詳細に語っていく前半。祖母の人生を幼少期から辿っていく後半。生と死という普遍的なテーマを、自分自身の経験から実直に見つめていったこの作品は、これまで当コンテストで入選してきた作者の過去作と比べても、とても力強いものになっている。祖母の人生から母が生まれ、母の人生から作者が生まれる。人生とは、自分一人のものではなく、多層的に連鎖的に他の人の人生と繋がっているのだと教えられる。(主に「あたまの中で眠る」について)(水江未来)

映像とパフォーマーによる構成は、現代のお笑い芸人がとる手法にも見受けられる。一方で、本作は、そのような構成をとりながらも、パフォーマーである作者と映像との位置関係、また、内容の時間軸的な距離間に、マンガのような行間を想起させる。その意味において、本作は新たなパフォーマンス手法を開拓しているといえるだろう。それぞれの関係性が絶妙である。(藤木 淳)

優秀賞

まゆみ
谷口ちなみ(東京藝術大学大学院)
まゆみ
審査コメント
私は、いつから自分の名前を自覚しただろうか? 物心がつく前から、両親に繰り返し呼ばれ続けることによって、名前を自分のものだと認識するようになっていったのだろう。辞書的な「固有の名称」という意味だけではなく、名前には名付けた人の想いが込められている。繰り返し呼び続けて名前を根付かせることは、呪術的であり、そういう行為によって人は自分の名前を自覚していく。そして、その想いと共に人は一生を送っていく。(水江)

以前の作品で描かれる少女たちの世界は、イラスト的な平面世界に展開され、煌めきを放っていた。しかし、アニメーションらしい奥行きを獲得した今回の作品が感じさせるのは、少女が少女の世界に棲まうことの圧倒的な閉鎖感だ。「まゆみ」という声がその空間に投入されるたび、閉じ込められたその世界で声は永続的にエコーし、反復し、さらにその閉鎖性を高めていく。この出口のなさが、まるで怪物の誕生を見るかのような恐ろしさを感じさせる。(土居伸彰)
ミヨの半生
関口和希(東京藝術大学大学院)
ミヨの半生
審査コメント
何の邪心もなくトボけているところがどうしようもなく魅力的に思える。半生を振り返るといいながらエピソードが少なすぎたり、時間がかなり飛んだり、小道具のチョイスがとても不思議だったり…しかし、そういったものが与えるゴツゴツとした引っかかりがとてもリアルさを生み出している。たぶん、人が人生を振り返るときに作り出すひとつの物語というものは、このように偏っているものなのだろう。その素直さが胸を打つ。(土居)

独特の世界観とストーリがとても面白かった。日常にあふれる感慨をしみじみと伝えてくれており、作品が持つ人への愛情が伝わてきた。
技術的な要素よりも作品性がストレートに感じられることも非常に良い。(堀口広太郎)
丈の低い木の丈は低い
小林 椋(多摩美術大学大学院)
丈の低い木の丈は低い
エンターテイメント部門

最優秀賞

FEED
岡崎恵理(多摩美術大学)
FEED
審査コメント
絵柄や動き、パッと見の設定からはCALF周辺の短編アニメーションの先行世代からの影響を強く感じさせるものの、最終的にそれが到達する感覚はヒンヤリとしていて、人間味溢れていた過去とは似ていない。その部分が新しい。ただし、作者自身がその到達点に気づいていないように思われるがゆえに、いくつかの部分では表現がおさまりの悪い場所に置かれる。(物語・設定がよくわからないのもそのせいだろう。)一方で、その野生感・ねじれの感覚が逆に強さを生み出している部分もあり、偶然の美しい結晶のような作品だ。(土居)

独特の感性で完成された絵画のような世界観が圧巻でした。温度感ある作品で質感が特徴的で作品から漂い雰囲気は怖くもありました。とても魅力ある作品だと思います。(堀口)

優秀賞

Project Stinger
大東優介、荏原 駿、山田恒輝、藤宇渉真、佐納達也、岡本天斗、池田健人
Project Stinger
審査コメント
昨今のゲームソフト開発は、アイデアだけでもシステムだけでもなく、ハードのスペックも含め、その時代の目の肥えたお客様に魅力的に感じていただける総合力を備えて初めて、ようやく“商品”であり“作品”であると認識していただけます。本作はそういう観点からも描画・演出・アクション・システム・エフェクト・UI・操作性のどれもが“商品”レベル。ここまでの総合力を身に付けたチーム一人ひとりに、執念と勝算を感じます。(松山 洋)

エフェクト、モーションなどアクションゲームとしての良い外連味があり、非常に手が込んで作られているの一目見てわかりました。ロボットアクションを作る!という情熱もひしひしと伝わってきました。ロボット作品は、画作りにおいて固くなりがちになるので、ステージを自然背景にするなど、あと一歩工夫が欲しかったですが、非常にレベルの高い作品ですので、さらに磨きをかけてほしいです。(角田亮二)
蒼い蒼穹
長岡有紀、村谷綾星、野田涼平、仲間一志、林 恵次朗、藤原琴子、中野ゆかり、大西媛子、鎌田梨華子
蒼い蒼穹
審査コメント
心にしみる音楽と、氷を使ったアニメーション。高いレベルで融合して、一つのエンターテイメントにしっかりと昇華していました。
良質な日本映画をみたような感覚になりました。(角田)
oldman youngman
加賀遼也(多摩美術大学)
oldman youngman
審査コメント
紙を使用したストップモーション作品。ストーリーの展開と描写が感動を誘い、それを支える魅力的な色彩と素材を活かした空気感、またマッチしたサウンド、すべての要素に統一感があり、それらすべてがこの作品全体の力強いメッセージを伝える下支えになっている。見終わった後も感傷に浸らせるのは作品としての完成度が非常に高く観客をしっかりと作品の世界に没入させられている証といえるだろう。(谷口充大)
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