受賞者インタビュー
2019/03/25 10:00

受賞者リアルトーク『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』の挑み方 [PR]

受賞者リアルトーク『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』の挑み方鼎談に参加した、第11回の同コンペ受賞者3名。左から青柳祥生さん、清水邦重さん、明間大樹さん。

「これからのしるし」をテーマに第12回の開催が告知されている、『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』(以下、『SNDC』)。最高賞金300万円、高名な審査員陣、商品化と、注目点の多いコンペだ。4月1日の応募受付開始を前に、参加を考えている読者も多いのでは。そこで第11回でグランプリ、準グランプリを受賞した3名にお集まりいただき、作品制作の裏側、このコンペの魅力などをとことん伺った。

グランプリを受賞した清水邦重さんは、広告を中心にWebサイトや映像、イベントブースまで幅広く制作を手がけるグラフィックデザイナー。準グランプリはこちらもグラフィックデザイナーの明間大樹さんと、プロダクトデザイナーの青柳祥生さん。図らずも、デザインを仕事にする3名の受賞となった。

クリエイターのリアルな思いが語られたトーク。ぜひ応募の参考にしていただきたい。

コンペ応募は、アイデアそのままを提案できる楽しさがある

― 皆さんデザインのお仕事をされていますが、お仕事とコンペの応募作品制作では、どんな違いがありましたか?

清水:私はグラフィックデザイナーではありますけど、昔からパッケージなど立体のデザインには興味がありましたし、趣味で木彫や陶芸もしているので、あまり違和感なく取り組めましたね。

11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションのグランプリ清水邦重さん

グランプリ:清水邦重 (しみず・くにしげ)1960年生まれ、グラフィックデザイナー

11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションのグランプリ作品

清水さんの作品「自己QR」 は、QRコードをしるせるハンコと、自分のホームページやSNSなど好きな内容を表示できる仕組みとを併せた提案

青柳:僕は仕事でも製品デザインをしてますが、コンペでは素材や可動部分、内部構造まで突き詰めなくてもよくて、アイデアそのままを提案できる楽しさがあります。仕事だと技術検証やユーザーテストなど地道な検討が不可欠なので、その面でも楽でした。

明間:確かに。僕も応募時のプレゼンテーションシートはかなり気楽に作っていた気がします。作品は個人の握った形状をオリジナル印鑑にするサービスですが、クライアントワークと違って、自分が見てかっこよくなる形状や素材を提案できたので楽しかったですね。

笑顔でインタビューに応じる11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションの準グランプリ明間大樹さん

準グランプリ:明間大樹(あけま・だいき)1974年生まれ、グラフィックデザイナー

11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションの準グランプリ作品

明間さんの作品「世界にただひとつの印鑑」。利用者の握り型を3Dスキャナでスキャンしてモデリングソフトで成形し、希望の素材でオーダーメイド印鑑を提供するサービス。一人ひとり異なる握り方に合わせた自分だけの印鑑ができる提案だ

プロダクトとその先に続くものを、どうひと続きにして魅力的に伝えるか

明間:むしろ二次審査用の模型を作るのが大変で(笑)。仕事は紙媒体中心で、平面のグラフィックデザインがメインなので、3Dプリンタや工作機、モデリングソフトなどすべて初挑戦でした。火傷したり、4時間かけて3Dプリンタで積層させた模型がグニュッっと歪んでいたり。模型が完成できるかどうかの不安が大きかったです。

青柳:3Dプリンタや切削加工機って不可解な動きをする時がありますもんね。仕事で使うのですごくわかります。

11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションの準グランプリ青柳祥生さん

準グランプリ:青柳祥生(あおやぎ・よしき)1991年生まれ、プロダクトデザイナー

11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションの準グランプリ作品

青柳さんの作品「AIR SIGN」は、文字を“空で書く”電子サインデバイス。空間上に描いたサイン軌道の座標やストロークの速度を読み取り、認証とする製品だ。偽装や模倣のリスクが減り、サイン認証の真正性を高める

清水:私は応募段階でプレゼンテーションシートも模型も作っていたのですが、二次審査ではハンコとその先に続くサービスをどうひと続きにして魅力的に伝えるか、その表現方法を考えることに力を入れましたね。私の作品はハンコとアプリでセットの提案ですが、実際にアプリを作るとサーバーなど諸々の問題が出てくるので、サービス部分はパネルにまとめました。

明間:表彰式前にハンコの模型だけ見て『押しやすさ』の提案かなと思ったのですが、後からパネルを見て印象が変わりました。作品によっては、パネルでの表現も審査で有効なんだなと思いました。

11th『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』受賞作品模型を見ながら制作を振り返る、受賞者3名。写真左から明間さん、清水さん、青柳さん。

― 形のないものを表現するのは難しいですよね。青柳さんも、空中の軌跡をつくるなど工夫されていましたし。

青柳:はい、本体と併せて置くことで、使い方がわかりやすくなるかなと。文字は軌道が最も激しそうで奥行きも感じる「あ」を選びました。文字の軌跡は3Dプリンタで制作したのですが、モデリングがすごく難しかった上に質感調整も必要で大変でした。でも、これがあることで3次元に描くというアイデアが伝わるので、作ってよかったです。

本体も、プレゼンシートに載せた3Dデータから3Dプリンティングしたのですが、握りやすさを良くするためにかなり調整しました。それでもまだ、自分や友人の握り心地しか試していないんですが。

11thシヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティションの準グランプリ青柳祥生さんが制作した模型

青柳さんが制作した模型。「あ」の軌跡イメージがあることで機能が伝わってくる。本体は鉄パイプと発泡スチロールで角度や持ち手の太さを何度もシミュレーションし、3Dプリンタでのプロトタイプを経て仕上げている

3人それぞれが感じた『SNDC』の魅力

― 『SNDC』にはどんなところに惹かれて応募されましたか?

清水:今回はちょっと動機が不純なんですけど、ズバリ賞金です(笑)。

明間:僕も賞金はモチベーションになりましたね。ただ僕、実はコンペに応募するの初めてだったんです。面倒くさがりなので。事務所の同僚が『SNDC』の情報をくれて見たんですが、審査員がそうそうたる方々ですよね。さらに11回からは中村勇吾さんが参加されると聞き、これは出してみよう!と思いました。

インタビューに応じる11th『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』準グランプリ明間さん

青柳:第一線で活躍する審査員の方々に作品を見てもらえる機会だと感じて応募しました。特に『SNDC』は、幅広いジャンルの審査員がいて面白そうだと思ったからです。

― では、審査員賞を狙ってみたり、審査傾向を加味して出品されたりはしましたか?

青柳:そこは考えず、自分のアイデアに素直に取り組みました。狙いすぎても個性が出しづらくなりますから。中村勇吾さんがいることで「ものとデジタルの関わり」に視点をおいた審査になるのかなとは思いましたが。

明間:僕も、まったく考えてなかったです。ただ、中村勇吾さんが参加するなら応募作品はアプリやデバイスが多くなるだろうという仮説は立てました。僕の作品はサービスを連携させるとはいえ、アナログのハンコなので、珍しく見えるかなと考えたり。

自分なりの取り組み方で、応募することから始まる

― お仕事でもコンペ作品の制作でも、変わらず心がけていることはありますか?

清水:自分が楽しめないといいものはできない、ということですね。クライアントワークでも、できるだけ楽しんで取り組むようにしています。

デザインに取り組む心構えを語る11th『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』グランプリ清水さん

明間:僕もどんな制作でも楽しさを見つけること。でないと、デザインワークは大変なことも多いので乗り越えられないんです。それから、なるべくオリジナルなものをつくることです。

青柳:楽しんでつくることとともに、共感を呼ぶアイデアにすることかなと思っています。独りよがりではなく、周りの人がどう使うか。そして、そのアイデアで世界が変えられるか、新たな体験を与えられるかと考えるようにしています。これらは常日頃から考えるように心がけています。

― 最後に、応募を検討されている方々へのメッセージをお願いします。第12回のテーマは「これからのしるし」です。

清水:今回も応募しようと思っているので、応募者が増えないほうがありがたいです(笑)。

青柳:第11回は700名以上の応募があったそうなので、確かにこれ以上増えると大変ですね(笑)。それはさておき、模型提出があるのは商品化が主題に置かれていることの証で、すばらしいコンペだと思います。あと、他のコンペだとプレゼン審査が必要な場合もありますが、『SNDC』は模型提出のみなので話し下手にはおすすめです。

明間:そうそう、模型制作をクリアできれば、口下手にも安心です(笑)。

作品模型を前に談笑する11th『シヤチハタ・ニュープロダクト・デザイン・コンペティション』受賞者。左から明間さん、清水さん、青柳さん。

青柳:世界で活躍されている方に自分のアイデアを判断してもらえて、方向性を確かめられる貴重な機会だと思います。また、今回は受賞者が社会人ばかりだったけど、学生さんにも受賞チャンスがあるはず。大学は設備も揃っていますし、まとまった時間も取れるので社会人より良いものが出せるかもしれません。ぜひ頑張ってほしいです。

明間:僕は今回初めてのコンペでしたが、非常に多くの発見ができました。応募すると何かある、応募しないと何も始まらないとも実感できたので、皆さんもぜひ挑戦してみてください。僕も今後はいろいろなコンペに挑戦するつもりです。

清水:コンペはクライアントからの要望に苦しむこともないので、自分なりに楽しめばいいですよ。

文:木村早苗、インタビュー撮影:玉村敬太、聞き手・編集:猪瀬香織(JDN)

12th SHACHIHATA New Product Design Competition 募集概要

●締切
2019年05月27日(月)24:00

●賞
グランプリ(1点) 賞金300万円
準グランプリ(2点) 賞金50万円
審査員賞(5点) 賞金20万円
特別審査員賞(2点) 賞金20万円

●募集内容
しるしが持つ可能性を広げるプロダクトもしくは、仕組みを募集
※複数応募可
【テーマ】
「これからのしるし」

●審査員
喜多俊之、後藤陽次郎、中村勇吾、原 研哉、深澤直人

●特別審査員
舟橋正剛、岩渕貞哉

募集要項(登竜門)
https://compe.japandesign.ne.jp/12th-shachihata-new-product/

公式ホームページ
https://sndc.design/

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