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2018/03/02 17:30

新進作家の登竜門「FACE2018 損保ジャパン日本興亜美術賞」グランプリ 仙石裕美インタビュー [PR]

画像:にこやかな仙石さん
「FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展」は、ゴッホの《ひまわり》を所蔵することで知られる東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館で開催される、公募形式の美術展。6年目を迎える。今回は970の応募の中から71作品が入選し、その作品展が3月30日まで開催中だ。

募集作品は平面であればジャンルも年齢・所属も不問。最高賞金は300万円(作品買上げ)、グランプリ・優秀賞の受賞者にはグループ展が用意されるなど、受賞作家への支援も手厚い。毎回1,000に迫る応募ががあり、新進作家の登竜門として定着しつつあることがうかがえる。

展覧会開始前夜の2月23日、表彰式に臨むグランプリ受賞者の仙石裕美さんにお話をうかがった。

オープンで多彩な作品が集まる展覧会

── まずは受賞おめでとうございます!今のお気持ちを聞かせてください。

表彰式を控え、今はとにかく緊張していますが、とても嬉しいです。これまでは油絵具をキャンバス全体に塗り込むような方法で制作していましたが、出品作はタッチを変えていくことにも挑戦しました。その作品がグランプリを受賞して、本当に光栄に思っています。

── 今回、FACEへはどのような理由で出品されたのですか?

ここ数年のFACEを見ていて素直に楽しく、好きな作品が多かったからです。他の展示会で注目した方の新しい展開が見られたり。また、受賞された方がその後、さまざまなところで意欲的な作品を発表しています。そういったことから、この展覧会に出したい! と思いました。

FACEはオープンな雰囲気で、広い社会の動きとつながった活気ある公募だという印象をもっています。

絵画の原始的な感動と変化する余地を、鑑賞者と分かち合いたい

画像:グランプリ受賞作《それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれとは異なっている》

グランプリ受賞作《それが来るたびに跳ぶ 降り立つ地面は跳ぶ前のそれとは異なっている》2017年/アクリル・油彩・キャンバス/194×162㎝

── 受賞作は、審査では縄跳びの躍動感や斬新な構図が高く評価されたそうです。どんな意図で「縄跳び」のモチーフを選ばれたのでしょうか?

「跳ぶ/飛ぶ」という動きは、私の作品の中でよく描く動作です。

ある時、制作はまるで縄跳びみたいだと思ったことがありました。「跳べた!」と思ってもまた次の縄が回ってきます。でも続けていくうちに、勇気をもって跳べば、そのうち先に進めると信じられるようになってきます。これは人生のいろいろな局面で誰しもが体験することなのではと思い、縄跳びをモチーフに選びました。色彩も前向きなエネルギーを感じさせるよう心がけました。

ある方が私の作品について「明るいエネルギーがある。それはただ無邪気な明るさではなく、意志を持って勝ち取られたものだ」と評してくださったことがあるのですが、まさに私自身が目指すものです。

跳んでいる人の顔を描いていないのは、そこに色々な心情が投影される余地、または鑑賞するたびに変化する余地を残したいと思ったからです。必死かもしれませんし、楽しくて笑っているかもしれません。

── 受賞作はこれまでと技法を変えたのですね

今作は私が制作に取り組む根本的なモチベーションである、「平面に置いた線や色面の集積が、キャンバスの上で空間や世界観をつくる瞬間の、絵画の原始的な喜び」ということに立ち返って描きました。

平面の上に置かれた顔料を見て、そこに物や空間、ひいては美学や哲学、世界観を見出し信じる。それは改めて不思議ですごいこと、イリュージョンのようだと感じます。私自身、小さい頃から絵を描くのが好きで、自分の想像で描いてみたり、家にあった画集を写してみたりしては「平らなところに物が見える!」と発見して興奮していました。

── 描くごとに生まれる感動が、仙石さんの原点なのですね

画像:インタビューに答える仙石さん

仙石裕美(せんごく ひろみ):画家。1982年生まれ。武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、2年間の大学院在学を経て渡仏し、パリ国立美術学校ポスト-ディプロム修了。帰国後はさまざまな個展やグループ展に出展し現在にいたる。おもな入選・受賞歴にホルベインスカラシップ奨学生(2004年)、シェル美術賞・本江邦夫審査員奨励賞(2014年)、上野の森美術館大賞展・賞候補(2015年)など

そうですね。実は1年半ほど前に父が急逝したのですが、その直後、油絵具が重くてうまく練ったり塗ったりできない感覚に陥ったんです。これまでは強引なくらいに絵具を従わせる感覚で描いていたので、戸惑いました。

「もう絵具に任せるしかない」という思いで描き続けると、しばらくして、だんだん絵具が像として起き上がってきて、そのたび幼いころのように感動しました。絵の力に助けられるような思いがありましたね。

私にとっての初心となるこの感動を、もっと鑑賞者と共有したいと思い、描かれたプロセスがわかるところや絵具が偶発的に動いた痕跡などを、画面の一部に意図的に残しました。

ですので絵具の物質感が図像や空間、さらにはコンセプトに見えていくという、絵画のイリュージョンが生む不思議さや喜びを味わっていただけたら嬉しいです。また、画中の人物たちにそれぞれの解釈を加え、対話しながら見ていただければと思います。

挑戦を続けることで、自分を信じる強さが生まれる

── 仙石さんの今後の展望をお聞かせください

まずは受賞者に用意されているグループ展「絵画のゆくえ」に向けた制作に集中しています。これから、制作でも発表でも、さらに新しいことを開拓していきたいと、ワクワクしています。

今回のFACEは“将来国際的にも通用する可能性を秘めた”作品が入選となっているそうですが、私自身、今後は世界のさまざまな場所で発表・展示の機会を増やしていきたいです。

また、例えば装丁などのお仕事もできるようになればと思っています。以前、書籍「いま、世界で読まれている105冊」(テン・ブックス刊)の表紙に作品を使っていただいたことがあり、一流の文筆家・編集者・デザイナーが作ったものに自分の作品が加わって、人の手に渡る体験にとても感動しました。またそのようなお仕事ができたら嬉しいですね。

── FACE2019の募集も始まっています。応募を考えている方にメッセージをお願いします!

目標を据えて挑戦することは、本当に意義があることです。

私自身、受賞や入選は大きな励みになりましたが、納得がいくまで応募を続けること自体や選外になった経験からも、得られた学びが大きかったです。

思うような結果が出なかった時はがっかりしますが、改めて自分と作品について客観的に考える機会を得ますし、自分を信じて描き続ける強さが強さが鍛えられていくと思います。

FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展

●会期
2018年2月24日(土)~3月30日(金)10:00~18:00
※入館は閉館30分前まで、月曜休館

●会場
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(東京都新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン日本興亜本社ビル42階)

●観覧料
一般 600円/大学生 400円/高校生以下 無料
※学生は学生証・生徒手帳を提示のこと
※障害者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方は無料(詳細は公式ホームページにて確認のこと)

公式ホームページ
http://www.sjnk-museum.org/program/current/5250.html

FACE2019 損保ジャパン日本興亜美術賞

●締切
2018年10月21日 (日)

●賞
グランプリ(1点) 賞金300万円
優秀賞(3点) 賞金50万円
他賞あり

●募集内容
未発表の平面作品

募集要項(登竜門)
https://compe.japandesign.ne.jp/face-sompo-japan-art-2018/

公式ホームページ
http://www.sjnk-museum.org/face

取材・編集・文:猪瀬香織(JDN) 撮影:木澤淳一郎

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