売ることまで考えるのがデザイン ー サンワカンパニー・デザインアワード主催 山根太郎1 / 2 [PR]

SANWA COMPANY DESIGN AWARD 2017 プロダクトデザインコンテスト 主催 サンワカンパニー代表取締役社長 山根太郎
洗練されたミニマルデザインの住居設備をネット通販で提供するビジネスモデルを武器に、建築業界に新たな風を吹き込んだサンワカンパニー。同社が昨年より開催しているのが「SANWACOMPANY DESIGN AWARD プロダクトデザインコンテスト」だ。

「最優秀作品は商品化する」という方針のコンテストだけに、アイデアの実現可能性も審査の重要なポイントとなる。その背景や応募者に期待すること、さらには空間デザインの展望について、サンワカンパニー代表取締役社長・山根太郎さんにお話を伺った。

日本の建築家や空間デザイナーにもっと光を当てたい

― まずは本アワードを始められた背景を教えてください

日本の建築家や空間デザイナーの中には世界的に評価される才能を持つクリエイターがたくさんいます。でも、その人たちを世に出す企業が少ないと感じていたんです。若い建築家や空間デザイナーにもっと光を当てることで日本のデザイン文化や意識、デザイナーの地位を向上させたい……そう思ったのがアワード創設の背景です。

山根 太郎(やまね・たろう)株式会社サンワカンパニー代表取締役社長

山根 太郎(やまね・たろう):1983年、兵庫県生まれ。イタリア・フィレンツェへの留学、商社での勤務や中国・上海駐在を経て、2014年に父が創業者である株式会社サンワカンパニーの代表取締役社長に就任。

― アワードを通じて、日本のデザイン文化をどのように変えたいですか?

まずはコンペに参加する若い人に「こんなチャンスをくれる会社があるんだ」と知ってもらって、その輪を広げることで建築や空間のデザインに対する関心を高めていきたいですね。いずれは日本全体で、空間づくりに興味や思いを持つ人を増やしていきたいと考えています。

空間デザインや建材に関心の高い消費者が増えれば、それらを供給する企業側も本当によい商品を適正な価格で提供する必要に迫られます。その結果、業界全体が活性化してよりよい商品が生まれやすくなり、消費者の住空間がより豊かになる。そんなサイクルを作っていきたいです。

― サンワカンパニーがアワードから得られるものは何でしょうか?

弊社や弊社の商品がどう見られているのかが、分かることです。昨年、同アワードの施工事例部門の応募作品から「うちの商品をこんな風にアレンジしているのか」という新しい発見がありました。プロダクトデザインコンテストは「サンワカンパニーに体現してほしいもの」を募っているので、クリエイターの皆さんが弊社に求めているものを知ることができます。

2016年のSANWA COMPANY DESIGN AWARD 施工事例コンテスト優秀賞。下町の住宅が

2016年のSANWA COMPANY DESIGN AWARD 施工事例コンテスト優秀賞。外部の街並みとは全く異なる世界が作り出されている

また、社内に向けてにもよい影響があります。社内だけで商品開発していると、とがったアイデアが出ても「売れなかったら誰が責任を持つんだ?」みたいな議論になって、結局は当たり障りのない商品になっていきますよね。それを防ぐためにも、外の新鮮な風を入れることは大事です。

売ることまで考えるのがデザイン

― サンワカンパニーは新しい風を積極的に取り入れる意識が強いのでしょうか?

はい。創業期から「まだ世の中にないものを提案していく」という土壌がありました。また、2000年には創業者がインターネット通販に乗り出すなど、常に新しいことに挑戦する企業風土があると思います。

― インターネット通販への参入は大きな転機だったと思います。参入して良かったことは?

なにより大きいのは、エンドユーザーの意向や評価をダイレクトに得られることです。流通網を介すると、自社の意向で販売できない上、消費者の反応が伝わってきません。インターネット通販なら、どの商品のページがどれだけ閲覧され、購買につながったか、すべてデータが取得できます。そのデータをデザイナーにも共有し、商品をより細かく検証できます。今のところ、業界でこれができるのは弊社だけです。

― 営業だけでなくデザイナーにもデータを共有するとは、驚きです!

はい。私は本来、デザイナーもマーケター感覚を持つべきだと思っています。日本ではデザインを“意匠”、つまり見た目の工夫を意味する言葉として訳していますが、これは不十分だと思うんです。たとえば中国語ではデザインを“設計”ととらえている。生産の実現性やコストパフォーマンスも考えて設計することが“デザイン”なんです。だからデザイナーには「売れる・売れない」や製造の妥当性まで含めて考えて欲しい。そう思ってデータをフィードバックしています。

山根太郎 サンワカンパニー代表取締役社長

― コンテスト応募作品を作る上でも、この点を意識する必要がありますか

その通りです。どんなに見た目や機能が優れていて、企画書がきれいにまとまっていても、一般に普及する価格帯で作って売れる見込みのない商品は賞に輝くことはありません。「プロダクトコンテスト」と名付ける以上、大量生産が可能なアイデアが賞にふさわしいと考えます。ですので、応募にあたってはCAD上の描画だけでなく、日本の製造業の現状に照らし合わせて、普及価格帯で供給できるかどうかまで考え抜いて欲しいですね。

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