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2017/09/01 17:00

誰にでもチャンスがある、断言していい ー ショートショート フィルムフェスティバル & アジア Cinematic Tokyo部門 優秀賞 番場秀一・松宏彰1 / 2 [PR]

誰にでもチャンスがある、断言していい ー ショートショートフィルムフェスティバル&アジアCinematic Tokyo部門 優秀賞 番場秀一・松宏彰
世界140以上の国と地域から集まった約9000本の短編作品から選りすぐられた、約250本の作品を上映する国際映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」。2017年度より設立された「Cinematic Tokyo」部門において優秀賞・東京都知事賞を受賞したのが『東京音℃』だ。大胆にアレンジされた「ネオ東京音頭」の楽曲に乗せ、混沌の東京とそこで暮らす4人のシンクロが表現されている。

登竜門では、この作品を制作した映像監督の番場秀一氏とクリエイティブ・ディレクターの松宏彰氏に、受賞の喜びと出品の魅力をうかがった。また、主催者からのメッセージも紹介。

自主制作が評価される喜び

― ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下、SSFF & ASIA) Cinematic Tokyo 部門に応募した経緯を教えてください

松さん(以下敬称略):
今回受賞した作品は、もともとコンペ用に作ったものではありませんでした。普段、僕はCMを主に手掛けているのですが、クライアントワークではなく自分たちの感性に頼った作品作りをしたいと思い、同じTYOグループ内の様々なクリエイターたちに声をかけてクリエイティブプロジェクト「PIECE OF TOKYO」を立ち上げていたんです。東京を題材に海外に発信できるオリジナル映像作品を制作していたところ、SSFF & ASIAが2017年から Cinematic Tokyo という部門を設立したと知り、応募しました。

クリエイティブ・ディレクター 松 宏彰(まつ ひろあき)

松 宏彰(まつ・ひろあき) クリエイティブ・ディレクター:1969年兵庫県生まれ。TYO SPARK所属。テレビCMを中心に、映像企画・演出などを手掛ける。2002年にはWEB広告「WWF I」でカンヌ国際広告祭サイバー部門金賞を受賞。

― SSFF & ASIAに対して、どんな印象をお持ちでしたか?

松:初期の頃から知ってはいましたが、正直ここまで大きな規模になるとは予想していませんでした。作り手としては、SSFF & ASIAのように作品を見てもらえる場があるのはとても嬉しいことです。純粋に自主的なクリエイティブができる機会って、日々の仕事の中では見出しにくいですから。

番場さん(以下敬称略):SSFF & ASIAでは以前、別部門で自分の監督作が賞を頂いたことがあるんです。やっぱり嬉しいですよ。僕は仕事でミュージックビデオ(以下、MV)を作っていて、もちろんその評価も嬉しいです。でも好きなように制作してそれが認められるSSFF & ASIAには、また違った喜びがあります。

映像ディレクター 番場 秀一(ばんば しゅういち)

番場 秀一(ばんば しゅういち) 映像ディレクター:1972年京都府生まれ。MAZRI所属。BUMP OF CHICKEN、椎名林檎、大森靖子、Superfly、くるり、エレファントカシマシなど有名ミュージシャンのMVやライブビデオを数多く手掛ける映像作家。

松:番場さん、飛び上がらんばかりに喜んでいましたよね。

番場:会場で受賞の発表を待っている間、自分の映像はあまり流れないし会場のカメラも別の方向に向いていたから、あぁ受賞はないなって思っていました。だから、呼ばれたときはびっくりしちゃって(笑)

松:カメラの向きなんて気にしてたんだ! でも、会場は本当に興奮しましたよ。国も業界もまったく異なるクリエイターが集まっていましたし。同じ業界の人もいましたけど、出品作品がいつものイメージとまったく違っていて「あっ、この人こんなの撮るんだ」って、とても刺激を受けました。

2017年6月11日に行われた SSFF & ASIA アワードセレモニー

2017年6月11日に行われた SSFF & ASIA 授賞式の様子。右は小池百合子東京都知事。

バラバラなようでいて、どこかでシンクロしている

― 優秀賞&都知事賞を受賞した『東京音℃』。映像のコンセプトはどのように生まれたのでしょうか

松:はじめは、とても漠然としたものでした。東京に対して、プロジェクトメンバーの誰もが抽象的なイメージしか持っていなくて。初期の会議では、メンバーそれぞれがバラバラに、好き勝手に話をしていましたね。

番場:すっごく抽象的で。ワケがわからないまま、進んでいました。

松:でもそんな中で、東京って街も人もバラバラなようでいて、どこかでシンクロしている部分があるというイメージを見出した時に、リズムや音、そして体温というコンセプトに繋がったんです。

番場:僕は結局、みんなが何を話しているのか最後までよくわからなかった(笑)

『東京音℃』の制作を振り返る、松宏彰氏と番場秀一氏

番場:撮影の段階に入っても手探りで、出演者への細かな指示も出しませんでした。感覚的に、素の姿を撮ったほうが東京らしさが出るかなって思って。

松:番場さん以外のメンバーは広告制作系だったので、自主制作でも結構ロジカルなんです。でも最終的には番場さんが感覚に落とし込んで、見事な映像にしてくれました。その両軸がおもしろかったです。

― 作品制作を通して、東京に対する印象は変わりましたか?

『東京音℃』のワンシーン。多様で不揃いな東京の姿が、1つの映像に収められている。

松:日本って、富士山・芸者・忍者っていう古いイメージと、アキバや原宿といったサブカル的なイメージがあると思うんです。東京は、それらが混在している街だと改めて思いました。相容れないものが共存している街、僕はそれをカオティックと呼んでいるんですけど、今回はその混沌と調和をうまく表現できたと思っています。

番場:ある人が言っていたんですけど、東京ってクールで無関心なイメージがある反面、愛されたいと叫んでいる情熱的な側面もあるって。それすごくいいな、そうだなって思いました。バラバラだけど、バラバラじゃない。

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