【アッシュコンセプト デザインコンペティション】審査員鼎談 -名児耶秀美、山崎泰、下川一哉3 / 3

【アッシュコンセプト デザインコンペティション】審査員鼎談 -名児耶秀美、山崎泰、下川一哉

-みなさんは今回の審査員であると同時に、デザインをこよなく愛する方々でもいらっしゃいます。日々の暮らしで大切にしているものや、こういうものがあればいいのに、といった個人的なご意見もうかがえますか。

名児耶:これまで我々アッシュコンセプトが世に送り出してきたものについて、「大好きです」というストレートな感想を聞くと、心の底から嬉しいですね。まるで恋人を褒めてもらったような誇らしい気持ちと言うか…(笑)。ほんのちょっとした発想であっても、「やられた!」と唸らされるアイデアに直面したときの高揚感は、恋の相手に出会えた感動と同じ。毎日の暮らしが小さなデザインで変わるって、些細だけれど、気持ちの支えになることじゃないですか?

下川:最近の我が家では、妻と猫と私という3つの生き物で楽しめるアイテムが人気です。たとえば、アッシュコンセプトの「カオマル」と「スモウ」。弥勒(注:下川家の飼い猫)の一番のお気に入りは「スモウ」で、くわえて飛ばして遊んでいます。それから、無印良品の「体にフィットするソファ」。余談ですが、あれは「ひとをダメにする」だけじゃなくて猫もダメにしますね(笑)。空いていると、すぐに誰かが埋もれてしまう…。「カオマル」も、実はそういう使われ方をしているのだと思いますよ。暮らしを楽しくする良いデザインは、性別や年齢を問わず、さらには生物の種別まで超えます。暮らしを掘り下げるのは、家族や人を掘り下げること。時には我が家のようにペットも含まれる暮らしのシーンを思考し、発想そのものを楽しませるデザインは、常に求められているはずです。

山崎:あったらいいな、と思うものはあります。たとえば、納豆のパッケージです。地域の決まりに従って、汚れをとってプラスチックごみとしてリサイクルに出すべきですが、時間の余裕がなく水ももったいなくて、そのまま燃やすゴミにしてしまうんです。そういう小さな罪悪感って暮らしには割とあると思うんです。焼却炉のパワーが大きいから燃やしても大丈夫とはいえリサイクルに貢献したい気持ちはある。そんなちょっとした習慣を変えてくれるものがあったら、すごくハッピーでしょうね。あまりにも日常なので、慣れてしまって気づくことを忘れているけど、実は心に刺さっている小骨って結構あるのでは。 

応募を迷っている人へのメッセージ

-最後に、これから応募しようと考えている人、あるいは、応募すべきかどうか迷っている人の背中を押すようなメッセージやアドヴァイスをいただけますか。

名児耶:突拍子もないものから考え抜かれたものまで、分けへだてなく、ご自身のアイデアに自信をもって提案してください。「こんなデザインじゃ…」などと思わないで。ちゃんと見る目のある人がいますから大丈夫。躊躇するよりも、応募することを楽しんでほしいと思っています。ただし、長い文章での表現は不要! 説明文は3行で伝わるようにまとめてくださいね。長いと読み疲れてデザインに目が行かなくなってしまうからね。

下川:デザイナーに限らず、ものづくりやまちづくりに関わるとき、発言する人としない人、表現する人としない人がいますよね。現代において、自分の考えをちっぽけだと思い込んで発言しないでいるのは、社会の損失と言って良いのではないでしょうか。採用される、されないにかかわらず、誰もが発言すべき時代に私たちは生きています。コンペの良さというのは、自分の考えをわかりやすく表現するための運動みたいなものでしょう。自分にしか出せないものを、ちっぽけかもしれないけど、尻込みしないで表現してみる。そういう挑戦する気持ちでの応募を期待しています。

山崎:テクニック的なことですが今回のフォーマットについて。A3片面の提出物にどうやってアイデアをまとめるか熟考してほしいと思います。審査員は多様な見方をして読み解こうと努力しますが、提案の魅力を端的に伝えることに注力してほしい。3秒間で何かが伝われば印象に残り、目を留めて30秒くらいの時間を獲得できれば選考に残る可能性が高まるはずです。デザイナーではない、けれどデザインが大好きな我々審査員の心に響く印象を放ってください。

名児耶:想いをぶつけるために、アイデアを整理整頓して、明確に伝えてほしいですね。でもそんなに難しく悩みすぎず、肩の力を抜いて…。未来のデザインを、アッシュコンセプトと一緒に実現しましょう。

(聞き手:高橋美礼、撮影:小林由喜伸)

■h concept DESIGN COMPETITION
モノづくりを通して世の中を元気にする会社として2002年にスタートしたアッシュコンセプトは2017年に15 周年を迎えます。初めて商品化したアニマルラバーバンドをはじめ、多くの商品で楽しさ、喜びを届けてきました。この度、15周年を記念してデザインコンペを開催します。商品化が決まると国内外の直営店 KONCENT やミュージアムショップにて販売されます。一緒に使う人を笑顔にしませんか?皆さまからのご応募を心よりお待ちしています。

作品提出・登録期間:2017年4月1日(土)~ 7月31日(月)
テーマ:暮らしを楽しくする 彩りを添えるような生活用品
参加費:1,500円(1点)

審査員:
安藤貴之(Pen 編集長)
石橋勝利(AXIS 編集長)
花澤裕二(日経デザイン 編集長)
濱口重乃(ELLE DECOR 編集長)
山崎 泰(株式会社JDN 取締役)
名児耶秀美(アッシュコンセプト 代表取締役)
審査会進行役:下川一哉(株式会社意と匠研究所 代表)

http://design-compe.jp/

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