受賞者インタビュー
2016/11/01 10:00

【CSデザイン賞受賞者インタビュー】表現に込めるのは「温かさ」と「上質感」-関本明子2 / 2 [PR]

CSデザイン賞 受賞者インタビュー

カッティングッシートの可能性を追求する「CSデザイン賞」

「CSデザイン賞」の存在は、以前から知っていました。というのも、以前審査員をされていたこともある、賞の告知の歴代のポスターも手がけられているグラフィックデザイナーの永井一正さんのビジュアルが毎回楽しくとても素敵で。ポスターやチラシ、DMなどをいつも楽しみにしていていました。そんな永井さんへの憧れもあったことと、何よりカッティングシートだけでどこまでできるか、単純に興味を惹かれてもいたので、機会があれば応募してみたいと考えていました。私がエントリーすることで、カッティングシートってこんなことができるんだ、カッティングシートって面白い!と感じてもらえたらいいなと。そういう意味で、デザイナーの表現の幅が広がることにもつながり、カッティングッシートをもっといろいろな人に知ってもらえるきっかけをつくれたら、と思ったことが応募の決め手でした。

CSデザイン賞の歴代のポスターは第5回以降、永井一正さんがデザインを手がけている。第19回(左)と第18回のポスター

CSデザイン賞の歴代のポスターは第5回以降、永井一正さんがデザインを手がけている。第19回(左)と第18回のポスター

2014年に開催された第18回の「CSデザイン賞」では、東京藝大の同級生だった色部義昭さんが「市原湖畔美術館サイン計画」でグランプリを受賞するなど、身近な人が評価されたことも良い刺激になりました。刺激をもらえる仲間が周りにたくさんいることは、仕事をする上でとても幸せなことだと感じています。

デザイナーの創作意欲をかきたてる素材

「MIDTOWN CHRISTMAS」のメインビジュアルの制作にあたり、中川ケミカルのカッティングシートを使わせていただいて感じたことは、よく考えられた色がきちんとそろえられているということです。ベースとなっているカラーシステムの中から必要な色を均等に選ぶだけではなく、そこにさらにデザイナーの感性を生かし整理されていることで、使いやすい色や必要な色がラインナップされていると思います。田中一光さんや原研哉さんが、デザイナーの目線でセレクトされているので、選ぶ側としてもやはりストレスが少なく感じました。素材系の色選びは、色幅が狭いことが多いのですが、同じ赤でもセレクトできる色の幅が的をえていて、使いたい色や組み合わせにたどり着くことができます。デザイナーとしてはとても付き合いやすい素材だと思います。

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私は中川ケミカルさんが素材の提供だけでなく施工までやられることを伺っていたので、直接「MIDTOWN CHRISTMAS」のカッティングシート制作の相談をさせていただきました。製造からカット、現場での設置、撤去までお願いすることができ、何よりも素材のことを一番分かっていらっしゃるので、設置においてなど表現の意図を汲んで、出来ることを考えてくださいました。

表現に込めるのは「温かさ」と「上質感」

「MIDTOWN CHRISTMAS」以外にも、カッティングシートを利用する場面はあります。貼って剥がせる特性があるので、催事の時に使うことが多いです。最近では、私がアートディレクターとして立ち上げから携わっている「印染杉下(しるしぞめすぎした)」という京都発の印染ブランドがあります。もともと印染(風呂敷や半纏に家紋などを染めること)を行なう工房ですが、ブランドを立ち上げたことで今年の6月に「インテリアライフスタイル」に出展しました。その時のブースのブランドサインにカッティングシートを使用しています。立ち上げたばかりのブランドなので覚えてもらうためにもブランド名をしっかり見せたいと考え、カッティングシートで制作したロゴを設置しました。

「インテリアライフスタイル」での展示風景

「インテリアライフスタイル」での展示風景

京都には風呂敷屋さんが山のようにあるので、その中で新たにブランドを立ち上げるのはチャレンジだと思います。他のブランドときちんと差別化できて、かつ選んでもらえる理由がないと埋もれてしまう。だから風呂敷自体のデザインや色使いにもこだわりました。デザインは十二支と鶴・亀という日本の縁起物だけをモチーフに展開していくことを決めました。そもそも通年で十二支すべてのモチーフのそろった風呂敷の商品が見当たらなかったのですが、誰にでも自分の干支があるので、祝いごとやイベントの時に選んでもらいやすいと思ったのがきっかけです。色もわかりやすく赤と紺のみにしぼり、まずはブランドとしての存在を覚えてもらうことを最優先に考えました。印染ブランドとして認知してもらい、質の良さやコンセプト、印染めの美しさ楽しさに共感してくれる人が増え、印染業界が盛り上がっていくことを願っています。

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「MIDTOWN CHRISTMAS」の時も同じです。「東京ミッドタウンって今年は赤いよね」と会話の中に出てこなかったとしても頭にイメージは残ります。意図したイメージを「印象に残す」ためにどうしたら良いかという組み立ては、仕事においてデザイナーの最優先課題として強く意識して考えています。

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私の手がけるデザインに共通することですが、温かみと同時に質の良さが伝わる表現を意識しています。手を使って描くことが好きなので、まずは手で描いて、それをスキャンして整えての繰り返しでデザインしていくことが多いです。グラフィカルな中にも、どこか手仕事の跡を残したい。そういった意味で「MIDTOWN CHRISTMAS」のビジュアルはほぼすべて手描きの表現をメインに扱っているので、その最たるものかもしれませんね。

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CSデザイン賞
http://www.cs-designaward.jp/index.html
株式会社ドラフト
http://draft.jp/

企画展「第19回CSデザイン賞展」
会期:2016年10月18日~2017年1月20日
会場:CSデザインセンター
http://nakagawa.co.jp/news/161012_ex_csdc.html

出典:JDN

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