結果発表
2017/04/05 10:00

第3回 CAF賞《学生限定》

受賞作品数:7点
主催:公益財団法人現代芸術振興財団

最優秀賞

Tectonics
表 良樹(東京藝術大学大学院)
Tectonics
作品コメント
タイトルの「Tectonics」とは地質学の用語で岩石圏の運動の事を意味します。測りきれない程の大きな力や、長い時間を日常の大きさに変換しようと、今作を制作しました。
審査コメント(一部抜粋)
表良樹は彫刻の概念と方法論を同時に探り出そうとしているところが面白い。ひとつひとつの表現要素は、過去の作家にもみられるような試みと似たようなものかも知れない。しかし、彼自身のやってきた創作活動のなかで直感的に導き出された結果として、この「つくる/こわす」という行為があるならば、そこにオリジナリティを見出すことができるだろう。彫刻の表皮とは、外皮だけではなく、内皮のことでもあるのだ。積層した内皮をみる(みせる)ために破壊するのかも知れないが、破壊せずに伝える手法も今後展開されることを期待する。(名和晃平)

優秀賞

GOLDEN TIME / dive / 泣く木 / コンポジション ─ おっぱい ─
大東 忍(愛知県立芸術大学)
GOLDEN TIME / dive / 泣く木 / コンポジション ─ おっぱい ─
作品コメント
手に入るものが増えた今だから感じる喜びと寂しさを、私なりに美術を通して昇華しようとしている作品です。
審査コメント
木炭で描かれた夜の闇に色が散る。道路で踊り狂う人物を、白い街灯が照らしているようだけれど、顔は見えない。ちょっとシュールな光景なのに、明らかに描き手の心の中にある暖かなものとして感じられるところが、大東の作品のまずすごいところである。また、今の時代にリアリティがあるのはこのサイズなんだろうと納得させつつ、その小ささを守るために独自の展示方法=作品形式を編み出した点も素晴らしい。これからは、時々、もっと冒険してみてください。(保坂健二朗)
stereotype
戸嶋優多(東京藝術大学大学院)
stereotype
作品コメント
3DCGを使用し3Dプリンターで出力する事により、私がクリエィティブだと思いPC上で表現したモノが、曲線的で数値的な形で出力される。オリジナルはPCのデータとして存在し、3Dプリンターによって出力された形は偶像に過ぎない。
審査コメント
3DCGで造形し動かした人体像を3Dプリンターで出力し、コマ撮りアニメーションの要領で動かした映像と、その像をコマのように並べて展示している。そのペラペラな人体像とデジタルの「労働力を酷使」した作業のギャップが、不気味な質感としてあらわれている。(岩渕貞哉)

名和晃平賞

The end of today
井田幸昌(東京藝術大学大学院)
The end of today
作品コメント
「一期一会」をテーマに今を生きる人々の肖像を描いています。この作品は、“今日”出会った人や事を、1日のうちに描ききるシリーズ作品“The end of today”の中の一枚です。
審査コメント
井田幸昌の絵画は暴力的である。絵の具の使い方、イメージの扱い方、描く際の制限時間(このルールについては、なんのためなのかよくわからなかった)など、破綻の受け入れ方がバイオレンスを感じさせる。ぐちゃりぐちゃりと撫でつけられた絵の具の塊は、匿名性の高い顔面オブジェクトとなり、もはや単なるポートレイトではなくなっている。むろん、これだけで突破していけるのかは疑問だが、小さな一点に絞って出品された、まさにその一点には絶妙なものを感じた。(名和)

保坂健二朗賞

1日の不安としての食卓もしくは見えない怖さとしての双頭の花
西村有未(京都市立芸術大学大学院)
1日の不安としての食卓もしくは見えない怖さとしての双頭の花
作品コメント
怖いこと、考えたくないこと、わからないことを「なかったこと」にしないために。絵画という緩衝材を用い、現実と想像力との関係性の結び方を想い、私なりの寓意表現という処理を行いました。
審査コメント
西村の絵には懐かしさを感じる。色のバランスのせいか、モチーフのせいか、複数のレイヤーを無理矢理つくろうなんてしない潔さのせいか。そんな懐かしさを感じる一方で、確かなパワーを感じるのも事実。これはなかなかできることではない。しかも、画面に乱舞する有象無象をまとめあげようとするパワーは、過去のアートを咀嚼しようとする貪欲さに基づいている。好きな画家のモチーフがぽろりと出てしまったりする脇の甘さも、今のところは魅力的。これから、は、ちょっと気をつけながらがんばってください。(保坂)

岩渕貞哉賞

どんぞこの庭
石原 海(東京藝術大学)
どんぞこの庭
作品コメント
映画「どんぞこの庭」を作るためのオーディション映像、テスト撮影で構成された映像と、映画の脚本を極度にドラマチックに朗読する音声が暗闇で重なりあう。スクリーンの周りに多数の植物を置き、庭・あるいは温室のような場所を構成する。庭という場所を、室内ではなく、しかし完全な外部でもない、境界線に存在する場であると設定する。鑑賞者は、庭のような環境に身を置き、「作られることのない映画」の、映像と音を体験する。
審査コメント
映画作りのためのオーディションやテスト撮影の模様で構成された映像に、人工的に自然を育む温室の中の庭という空間が重ね合わされている。完成を求めながらもたどり着くことのできない、若い感性のひりひりした痛みのような感覚が良い。(岩渕)

山口裕美賞

WeddingDollⅠ
森山亜希(東京藝術大学)
WeddingDollⅠ
作品コメント
同性婚をテーマにウェディングドールを描きました。ドールをモチーフに選んだのは自分が子供の頃、人形を使った遊びの中に抱いていた漠然とした結婚や恋愛などのイメージから来ています。
審査コメント
2人のウェディングドレスのバービー人形。可愛くて、キュートなクールジャパン的な絵画か、と思わせて、その実、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の問題をおおらかに訴えている。性的少数者は、長年、社会生活の中で、たくさんの苦しみを誰にも打ち明けられずにいた。アーティストはそれらの状況に敏感であったと思う。この作品にはもう1つ、対になるべき作品がある。会場で2作品の展示が出来ればうれしい。(山口裕美)
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