VOCA賞
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製品名 [ キンカザン1(下) キンカザン2(上) ]
作家名 小西真奈(東京都)
素材 油彩、カンヴァス
コメント 私の絵の特徴のひとつに、写真を見て描くというのがあるように思います。最近の作品はすべて自分で撮った写真を見ながら描いています。以前は他人の撮った写真や印刷物から引用することもありましたが、着地点が見えてしまってつまらないのでやめました。描きたい場所を探して登場する人物と共にそこに行き、写真を撮ります。その時点で制作が始まっているのだと思います。構図や人物のポーズや配置などはその場で決めていきます。人物にはポーズしてもらうときもあれば、ただ先を歩いていく姿やたたずむ姿を撮るときもあります。自分がモデルをするときは同行の人に撮ってもらいます。写真はあっというまにどんどん記録していくことができるのでスケッチの道具として便利に使っています。またカメラを通して記録されたイメージからは主観的で観念的な見方が気持ちよく排除されているところも好きです。こうして撮影した写真を見ながら描く絵のイメージをふくらませていきます。

絵のテーマというのをひとことであらわすのはとても難しいのですが、制作時において、どんなことにわくわくしたりしているかというと、今じぶんのいる世界から地続きでつながっている別世界が描けた時だと思います。たとえば鏡に映ったイメージに感じる違和感のような感じとか。無視していれば気が付かない感覚を絵のなかに確認できるようにしたいのです。

受賞作は、去年の夏に宮城県牡鹿半島沖にうかぶ「金華山」という島に行って撮影した写真をもとに描きました。この島についての知識は「野生の猿や鹿がいる」といったことくらいで、ほとんど何も知らずに行きました。着いてからとても神聖な霊島だという事を知りました。そのことは翌日濃い霧に包まれた山を越えて島の反対側に向かう時に実感しました。そしてたどり着いたときにはすっかり晴れて、くらくらするような岸壁と青い海が目の前にひろがっていました。自然のすばらしさ、なんて陳腐なことではなくて、まさに別世界に足を踏み入れてしまったような感じでした。「鹿とたわむれる人」の絵を描こうかと思って行った先で思いもよらない体験をすることができました。私が予測したことからどんどんずれていった先にできたのが今回の絵です。