『V & V HOUSE』 設計主旨・審査経緯
 × 

■設計主旨
敷地は4m幅の私道の行き止まりに2mだけ接する旗竿敷地だが、隣接してクライアントの両親の家があるL字型の形状である。
クライアントの要望は「風通しが良く、明るい家」、「家のどこにいても家族全員の気配を感じる家」だった。そこに「人や車を建物へどう導くか」、「室内外において両親の家とどうつながりをもたせるか」がポイントである。まず、両親の家との境界をなくし、車が通れるアプローチ空間として共通の空地を確保した。この空間は両親の家の南庭としても機能する。また、両親の家に対面する位置に玄関・階段スペースを置き、帯状の大開口を設けることによって、お互いに人の動きをつかめるようにした。つまり、相互の家は緩やかな距離を保ちつつも、気配を感じられる…という提案をした。
この建物は四角い箱からVの字のボリュームをくり抜いた構成にした。このことにより周囲を気にせずに窓を開け放し、光や風を取り込むことができる。くり抜いた部分の2階は、共通の空地に向かって広がるテラスになっているため、意識や視線はその先の両親の家に向かう。さらに、1階の各部屋は通路として使えるよう、建具を開け放した状態でも過ごせるようにしてある。このため、風通しも良く、家族全員どこにいてもお互いの気配を感じることができる。また、アプローチや階段部分と各部屋とは、フロストガラスを通して光や人の気配を取り込むことを意図した。
浴室はガラス張りにすることで、水まわりを一体化し閉鎖感を排除した。1階の床は反射効果をねらい白く塗装しているが、浴室も白いタイルを使うことによって1階が均等な光で満たされることをねらっている。

■審査経緯
一次審査会(非公開)では、早い段階から上位賞候補として注目を集めた作品であったが、中でも話題となったのは、2階のリビング床のドラマティックな1枚の写真である。審査委員からは「美しい」という声が何度も挙がったが、「仕組みはどうなっているのか」、「物が落ちてくるのでは? ガラスが入っているのか」、「ゲストが来た時にもリビングは使えるのか」と疑問も多々残った。
ニ次審査会(公開)のプレゼンテーションを受けた審議はプラン論議から始まった。「ゲストルームのあるV字部分を思いっきり両親の家方向に開いて、“V&V”がプランで感じられるようにできたのではないか。両親の家に対してあまり開いていない感じを受ける」、「ゲストルームは狭くないのか」など、やや辛口の意見が先行した。しかし、質疑応答を通して動線計画、浴室機能やゾーニング、収納の取り方などが、総合的に、しかも緻密に検討されていることがわかった。一次審査段階から評価されていた1階にプライベート、2階にパブリック、リビングという空間構成の明解さ、シンプルで美しいプランニングがより確かなものとなり、高い評価に結びついた。
また予想通り、リビングの床に注目が集まったが、プレゼンテーションによって、リビング床の縁甲板をV字ゾーンに目透かし張りとし、アクリル棒をはめ込むことによって下階の光をスリット状に導き、幻想的な効果を出していることが判明した。この仕上げは2階テラスの床にも取り入れられ、駐車スペース奥の通路にも光の透過が見られるように工夫がされていた。
審査委員の1人は「凝ったディテールだ。細部にまで神経が行渡っている」と賞賛した。一次審査段階から高く評価されていたが、設計者のプレゼンテーションによって動線計画、ディテールなどがより明確に理解でき、公開審査は良い結果をもたらしたようだ。最終投票では審査委員長と審査委員1名の推薦を獲得し、金賞に決定した。