4/17〜5/13、東京・銀座の松屋銀座7階「デザインギャラリー1953」にて、「2001年度・第69回 毎日広告デザイン賞入賞作品展」が開催されました。(取材日;4/18)
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会場の「デザインギャラリー1953」
第1部。右奥が最高賞の「新潮文庫」。
第1部 最高賞
新潮社「新潮文庫」
C=こやま淳子
AD.D=丸田昌哉
P=北井晴彦
第1部。学生賞の作品。
第2部の作品。右端が最高賞の「打てるものなら、打ってみろ。」
第2部 最高賞
元気を出そう「打てるものなら、打ってみろ。」
CD.AD.D=井貫大士
CD.C=野原均
AD.D=本田弘敏
P=平竜二
第3部 最高賞
協和発酵
CD=村田一美
AD=新ケ江友也
D=藤田伸二
C=阿部祐樹
P=岩本茂
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● 毎日広告デザイン賞 |
新聞広告は、一般の人にとっても、もっとも身近なグラフィックデザインのひとつでしょう。ハッとするようなキャッチコピーや優れたデザイン表現は、いつも我々の目を楽しませてくれます。
毎日広告デザイン賞は、戦前の1931年(昭和6年)に「商業美術振興運動」としてスタート。今回で69回目となり、朝日広告賞(昭和27年創設)、ADC賞(昭和32年)、広告電通賞(昭和23年)などの数多くの広告賞の中で、最も歴史がある広告デザインの賞です。その存在は、日本のグラフィックデザイン界において、新人の登竜門としての役割も果たしており、高い評価を得ています。
対象となる部門は3部門。協賛会社の広告主から提出された課題にもとづいて制作される「第1部:広告主課題の部」、テーマにもとづいて社会に発言・提案する広告を制作する「第2部:発言広告の部」、第1部の課題を提出したの協賛会社の広告で、過去1年間に毎日新聞紙上に掲載されたものから選ぶ「第3部:広告主参加作品の部」です。
毎年恒例となっている、東京・銀座の松屋デザインギャラリー1953での展覧会。今回も日本デザインコミッティー(*)と毎日新聞社の共催により開催されました。会期中は2回に分けられ、4/17〜29に第1部と第2部、5/1〜13に第3部の、それぞれ入賞・入選した全作品が展覧されました。
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● 第1部:広告主課題の部 |
第1部は、協賛会社から提出された課題にもとづいて、一般から広く作品を募集し、優秀な人材を発掘、その作品を表彰するものです。
「審査の最後の一時間は、どれがいちばん新しい風となれるかを見極める議論となった。議論を尽くすほどに、景色の美しさ、あるいは力強さだけではもの足りなくなっていた」(審査員のコピーライター・一倉宏氏)という議論を経て、見事最高賞に輝いた作品は、新潮社の「新潮文庫」(30段カラー)です。笑顔の口元だけが覗く、赤いワンピース姿をした、陽射しの中の若い女性。中央のコピーは「悪いことは、作家が教えてくれる」。
「すばしこく悪戯な小動物のようだった。コピーは誰の心をも撃った」(同)と評されました。優秀賞のキッコーマンやスカイラインとの差は少なく、最後まで争われました。
※第1部の審査員 (第3部も同じ)
青葉益輝(アートディレクター)、浅葉克己(アートディレクター)、一倉宏(コピーライター)、葛西薫(アートディレクター)、繰上和美(フォトグラファー)、仲條正義(グラフィックデザイナー)、仲畑貴志(コピーライター)、西村佳也(コピーライター)、原研哉(グラフィックデザイナー)、細谷巌(アートディレクター)、近藤康夫(インテリア・アーキテクト/ゲスト審査員)
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● 第2部:発言広告の部
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第2部は、テーマに沿って社会に発言する広告を一般から募るものです。最優秀作品は、協賛会社の社名広告とともに毎日新聞紙上に掲載されます。
「発言広告といえば、環境や、平和や、社会の連帯を驚かす人々のエゴの抑制を訴えるのが常道である。ところが今回、最高賞に輝いたのは、見ようによってはむしろ「エゴの突出」の呼びかけだった」(審査員の柳川時夫・毎日新聞編集局次長)と言われた最高賞は、まさに「突出した」作品です。「打てるものなら、打ってみろ。」とコピーがつけられた14段の作品は、きちんと整列した釘の中に、一つだけ出っ張った曲がりくねった釘。自立できる個人を、象徴的な写真で表現しました。
一本の点線で国会議事堂を描き、「『子供たちが憧れる人』に『政治家』が入らない国。」として政治参加を呼びかけた優秀賞の受賞作と争われましたが、「他の候補作に長文の説明的なコピーが目立った中、力強いメッセージを力強い図像で打ち出したインパクトは群を抜いていた」(同)と評されました。
※第2部の審査員
青葉益輝(アートディレクター)、一倉宏(コピーライター)、細谷巌(アートディレクター)、安藤守人、加藤雄二、迫修一、田中青史、三村泰史、森戸幸生、柳川時夫、渡部節郎(以上、毎日新聞社審査員)
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● 第3部:広告主参加作品の部 |
「第3部:広告主参加作品の部」は、過去1年間に毎日新聞紙上に掲載された協賛各社の広告の中から、優れた作品を表彰します。
日産自動車の新型スカイラインの広告を抑えて最高賞に輝いたのは、協和発酵の「花粉なんか、」です。花粉症の治療を啓蒙する広告、やや腫れぼったい目で、真っ直ぐこちらを見つめる少女の両方の鼻の穴には、ティッシュが。一目で花粉症を意識させる、強力なメッセージ広告です。花粉症とクルマ、現代を象徴するふたつの対決は、最終的には投票が行われ、協和発酵が栄冠を勝ち取りました。
「少女の写真はかなり可笑しいけど笑えない。全体を包むウエットなトーン、本文の先生と少女の会話など、細部までゆきとどいた綿密な構成が、見せて読ませる」(審査員のアートディレクター・葛西薫氏)との評価を受けました。
6月中旬からは、2002年度の毎日広告デザイン賞の募集もスタートする予定です。次回は、記念すべき第70回。どんな新しい広告表現が、我々を楽しませてくれるのでしょうか。
*日本デザインコミッティー
第10回ミラノトリエンナーレへの日本の参加要請をきっかけとし、1953年に国際デザインコミィッティーとして発足。当時、日本のデザイン界の中心で活躍していた、勝美勝、亀倉雄策、剣持勇、清家清、丹下健三、渡辺力など12名が創設に関わった。現在は松屋デパート内に拠点を置き、デザインギャラリーでの展覧会、コンペ・デザインフォーラム公募展などの主催開催など、積極的な活動を続けている。特にデザインギャラリーでの展覧回(今回の毎日広告デザイン賞展で585回目)は、デザインギャラリーとしては世界でもっとも歴史があるといわれている。
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