ジャパン・テキスタイル・コンテスト2013

募 集 終 了

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応募作品数:278点(一般の部187点、学生の部91点)
入賞作品数:47点(一般の部31点、学生の部16点)
結果発表日:2014年2月12日

グランプリ(経済産業大臣賞)

「リバーシブル モヘアミックス」
「リバーシブル モヘアミックス」

五藤貴誠(B.Tネット)

素材:W=52%、Mo=30%、N=18%

審査員選評

車 純子(審査員長)「見た目には十分なボリューム感を感じられつつ、実は大変軽量でソフトであること、一見して単純な無地ではない、ビジュアル性が高いことなど、来シーズンに注目される素材傾向を、見事にいくつも捉えています。
特にジャパンブルーとも言える美しいコバルトブルーと、黒とのカラーリングは絶妙で、表の黒糸の狭間に見え隠れする、ブルーのバランスも大変美しい素材です。ビジネスとして考えても、最も人気の高い配色が出来上がっていると思います。まさに今年ならではの、グランプリ受賞となりました。
軽さを出すためには、モヘアループの二重織を、あえてループカットしたり、裏面をシャギーで仕上げるなど、贅沢な挑戦をしています。
いろいろと試行錯誤した時間も、素敵な経験になっているかもしれません。
作者の年齢は30代半ば、今後大いに期待できることも、グランプリ受賞の背中を押しています。」

準グランプリ(中小企業庁長官賞)

「コンフォートライトドレープフラノ」
「コンフォートライトドレープフラノ」

時田久嗣(時田毛織(株))

素材:W=100%

審査員選評

萩原富雄「ウールの王道を追及した作品に仕上がったと思います。作者の意図した、気持ち良さ、着心地、軽さ、上質感、ウールらしさが表現できました。
この様な風合いに仕上げるには、原毛の吟味から紡績、製織、染色整理の各段階で細心の注意深さ、高度な技術力の裏付けが無ければならないと思います。
又、一見無地に見えながら、多色使いで色に奥行きを持たせるこだわりに、モノ作りに対する作者の真摯な姿勢を感じました。
モノ作りの衰退が言われる最近の日本ですが、産地にはまだまだ高度な技術と熱い思いが残っています。日本の製造業の復活の為、MADE IN JAPAN再生の為、今後とも頑張って頂きたいと思います。」

優秀賞

「カシミヤクラッシュ」
「カシミヤクラッシュ」

稲垣 久(渡六毛織(株))

素材:Ca=100%

審査員選評

中井迪夫「出展作品の素材名であるカシミヤクラッシュの名のとおり、高級獣毛素材という価値感にクラッシュというカジュアル要素を取り入れ、互いの相反する要素を一枚の生地に表現された新しい価値観を与える素材だと思います。
高級獣毛素材であるカシミヤ本来のデリケートな質感と光沢加工を施した素材の表面からキャッチワッシャー加工を施された素材は、今までに見たことのない新しい表情を表現した素材に仕上がっています。
その素材から感じられるのは、現代の成熟化した日本のマーケットに新しい価値観を与えるラグジュアリー感覚の素材です。今までのオーセンテックな素材だけでは満足されない新しい女性像に向けて作者の意図である『高級素材もカジュアルに着てほしい』という意味合いを感じさせる新しい提案は、今後の日本のファッションに服本来の楽しみや夢を与えてくれる素材だと思います。」


「ふくらみツイード」
「ふくらみツイード」

日置 晃((有)アック)

素材:W=95%、C=5%

審査員選評

大関 徹「見た目も、手触りも、いかにもウールそのもの。そして、ハンドメイドタッチ、バルキー、肉厚など、来秋冬季に注目されている素材トレンドをすべて取り込むという作品の企画意図が完璧に表現されています。消費者の目から見れば、使われている素材の氏素性はわからなくても、素材を触った瞬間に感じるタッチ、ぬくもり感と、その温度感にツイードのミックスカラーがよくマッチし、作者の意図と素材の上質感が直感的に理解できる作品です。企画意図を表現するための素材選択、組織使い、表現のすべてにわたり、まさに匠の仕事です。」


「Gorgeous」
「Gorgeous」

森 益一(森技術士事務所)

素材:W=75%、Ca=20%、N=5%

審査員選評

竹内忠男「カシミヤ混ウール地と言う一般的に高級生地と考えられている素材を下地に使用し、それに対して加工難易度の高い面積のある抜染技法を施し、大胆な色彩表現をしたこの作品。表面に撥水性をもつウールのためにかすれた色彩の見え方となっているところにこの作品の妙味と斬新さがあるといえます。
この『かすれ』は偶然性から惹き起こされる表現であり、その美しさと面白さを作者は十二分に今までの経験から計算に入れ、制作した意図が垣間見られる点に感動を覚えます。」

尾州賞・新人賞

「Fake Leather -mat-」
「Fake Leather -mat-」

森田惇也(ニッケ)

素材:W=100%
※新人賞:35歳未満の最も優れた作品に付加

審査員選評

小森美穂子「皮革のような硬さとしなやかさが新鮮な驚きを与える作品。トップグレーの無機的な外観とあいまって、ウールらしくない素材感が大変興味深いです。ペーパーライクともいえるハリや硬さがある一方でツヤや温かみもあり、相反する要素が共存している点が、デザイナーの創造力を刺激する素材です。立体シルエットのハリのあるアウターやカットアウトディテールがぴったりはまりそうです。樹脂を一切使わずこの風合いという事も高く評価します。」

尾州賞

「アンティークシャギー」
「アンティークシャギー」

岩田真幸(岩田健毛織(株))

素材:W=53%、Pe=15%、N=14%、Ace=9%、Md=6%、その他=3%

審査員選評

小森美穂子「ファンシーツイードに特殊シャギーを施した作品。糸の形状と色彩、毛足の長短など様々な表情感が複雑なハーモニーを奏でています。安定した人気のファンシーツイードに注目の毛足強調を取り入れることでほどよい奥行きが生まれ、好感のもてる仕上りになりました。シルバー系ラメ糸はダークな基調の色彩に軽快なアクセントとなっています。
外観のボリューム感とは裏腹に軽量な仕上がりも市場性が高いと思います。」


「TEXTILE OF CUTASEOUS SENSATION」
「TEXTILE OF CUTASEOUS SENSATION」

日置 晃((有)アック)

素材:W=100%

審査員選評

竹内忠男「しっとりと軟らかく肌にふれるその心地よい触感は作者が意図するように、羊毛100%でありながら、カシミヤを感じさせる風合いを持っています。
何気ない表情の素材でありながら、またそうであるがゆえに原材料の糸にこだわり、その特性を生かしながら、より魅力ある商品に仕上げる加工技術の高さ、確かさに、尾州産地の持つ匠の技を感じさせます。一見無表情でありながら、触るとその生地の味わいが伝わる。
おそらく衣服に仕立て上げ、着装した時によりこの生地の魅力を再認識できるのではないでしょうか。」

ウール賞

「アルパカシャギーHC」
「アルパカシャギーHC」

杉山 俊(渡六毛織(株))

素材:W=53%、Ap=47%

審査員選評

中口万寿代「最近トレンドの箔加工。プレーンな生地に箔加工をしたものは見かけますが、アルパカシャギーに箔加工を施すという大胆な発想がすばらしいです。
ベージュの基布にコパーの箔というカラーバランスも素敵です。
毛羽の上だけにのった箔と箔ののっていないところができることで光が乱反射し、なんともいえないゴージャス感を表現しています。」


「アルマーダ」
「アルマーダ」

篁 俊次(B.Tネット)

素材:W=100%

審査員選評

中口万寿代「無地ではなくガーゼ調の大胆なタータンチェックに特殊加工をすることで、プレーンなチェックが一気に表情豊かなテキスタイルに変わりました。
チェックの大きさとアニマル柄の大きさのバランスからもたらされたナチュラルな凹凸感。透け感のあるところと少し縮絨したようになった部分の対比によってもたらされる表面感。チェックとプリントの柄の組み合わせを変えていったら、どんな楽しいテキスタイルが生まれるのか、イメージがどんどん膨らむ作品です。」


「レジェンドサキソニー」
「レジェンドサキソニー」

渡辺雅康(時田毛織(株))

素材:W=100%

審査員選評

中口万寿代「糸、生機、整理、仕上げ、すべてにエイジングするという、今となっては贅沢な時間の使い方をすることによって、ウールはリラックスし、ウール本来の持つ特性を最大限に引き出しています。
ワインを熟成させるように、糸の声、生地の声を聞きながらテキスタイルを作っていく、現代ではできそうでできないことに挑戦されました。結果的にもたらされた艶と風合いは、効率を追い求めるだけが重要ではないことを教えてくれます。これからのものづくりのあり方を問う作品です。」

学生の部 スプラウト賞(愛知県知事賞)

「layered flower」
「layered flower」

佐藤 心(文化服装学院)

素材:Si、Pe、N

審査員選評

中井迪夫「作者の企画意図である『パンジー』に対する思いを強く感じる女性らしいデリケートさを表現した作品です。特に『水に浮かぶ花は喜びやはかなさ、水の影に映る花は苦悩や悲しみといった愛の二面性の表現』といった作者の心の表現方法が、不織布にデジタルプリントされた色の表現は、赤味から紫味さらに青味と微妙に変わる色合いを持たせた不織布が花の形に一枚一枚切られ、繊細に素材の風合いを壊さずにボンディングされています。その花柄のモチーフは、デリケートなシルクオーガンジーと更にプリーツ加工で折りこまれたチュールの上にも施され素材を重ね合わせることにより、素材の奥行きと繊細な水の流れを表現した素材に仕上がっています。
作者の思いが“布”というものを通じて表現されたことに感動と美を感じさせられるすばらしい作品です。」

学生の部 シーズ賞

「氷溶」
「氷溶」

何 琳(文化服装学院)

審査員選評

中井迪夫「大胆なモチーフで構成されたプリントの図案と色合いに魅せられた爽やかで軽やかな作品に仕上がっています。
その作品に対する企画意図のテーマは『地球環境』。その中でも地球温暖化をテーマにしたテキスタイルは、南極の氷が解ける表現としてのオパール加工と温暖化の赤、暑さで溶ける水を青といった思いがストレートに表現された作品です。世界的な環境問題を一つのテーマとして繋ぎ合わせた今回の作品は、ファッションを通じて新しい形でのアプローチを試みた斬新なアイディアと完成度がマッチしたすばらしい作品に仕上がっていました。
現代社会を生きる人々にメッセージとして心に残るものとして評価させていただきました。」


「ひひなあそび」
「ひひなあそび」

堺 美樹(京都市立芸術大学)

素材:W=100%

審査員選評

大関 徹「縮絨ウールの暖かく優しい手触り、穴あきの遊び心、さまざまな要素を織り込んだ凝った素材の重ねによる楽しい紅白デザインなど、無条件でハッピーになる作品です。『ひひなあそび』という、ひな祭りにちなんだテーマと企画意図が、色使い、素材作りと加工、オリジナルリボンの可愛い色合いで良く表現されています。」


「きおくの布」
「きおくの布」

服部なつの(文化服装学院)

素材:Pe=100%

審査員選評

大関 徹「たくさんの思い出が詰まっている作品です。幅広リボン状にカットしたデジタルプリント生地を平織りにし、その一コマ一コマにプリントされた『記憶』が見る人に迫り、作者の大切にしている心が印象的に表現されています。きおくの布の、その『記憶』を塗りつぶしたデザインも単調を廃し、作者のセンスが光る作品です。」


「煙霧」
「煙霧」

鑓田 彩(成安造形大学)

素材:R、塩化ビニールシート

審査員選評

萩原富雄「お疲れ様でした。先染めのレーヨン糸を経糸に5mmにカットされた塩ビのフィルムを緯糸にした作品。経に並べた糸にどの様な方法で塩ビのフィルムを打ち込んでいったのか興味があります。どの様な方法にせよ塩ビフィルムは重いので大変な労力だったと思います。少し離れた所から見ると作品名の『煙霧』が良くわかります。
タペストリーなどにしても素敵でしょう。」


「Sunrise in Somewhere」
「Sunrise in Somewhere」

李 金樺(文化ファッション大学院大学)

素材:N=100%/Pu=8%、N=92%

審査員選評

萩原富雄「私の住いからスカイツリーが見えます。冬の季節は6時半頃スカイツリーをシルエットに空を赤く染め、そして徐々にオレンジ色になりながらビルのスカイラインから太陽が昇ってきます。
フォールガーメントの基布にナイロンモノフィラメントを朝霧に見立てた作品。ボレロやTブラなど面白いアイテムが出来そうです。
これから天気の良い朝は東の空を見ながらこの作品を思い出すでしょう」

【素材凡例】

Ace=アセテート、Ag=アンゴラ、An=アクリル、Ap=アルパカ、C=コットン(綿)、Ca=カシミア、Cu=キュプラ、Li=リネン(麻)、Md=モダール、Mo=モヘア、N=ナイロン、Pe=ポリエステル、Pu=ポリウレタン、R=レーヨン、RA=ラミー、Si=シルク(絹)、W=ウール(毛)

2012年
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